第7部 第8話 星々の朝
星図都市に朝日が差し込む。
長い戦いと旅が終わり、広場には穏やかな笑い声が響いていた。
リュシアンは舵輪から手を離し、ゆっくりと深呼吸した。
(やっと……この手を休められる)
胸の奥の環が穏やかに鳴り、体の芯から温かさが広がった。
ガルドが酒瓶を掲げて笑った。
「終わったな、航路監。いや、もう“仲間”でいいか」
セリーヌが隣に腰を下ろし、静かに旋律を奏でる。
その音は、都市全体に新しい朝を告げる合図になった。
(この音を、もう恐れずに聞ける……)
リュシアンは仲間たちを順に見渡した。
イシュナは外界の子どもたちと笑い合い、エファは新しい航路図を描き始めている。
(ああ、本当に終わったんだ)
連邦議会が開かれ、新しい航路計画が告げられた。
「航路は強制ではなく、選択によって開く」
「次の探査は一年後。全世界から志願者を募る」
広場に拍手が起こり、星図がゆっくりと輝き始める。
(これからの航路は、俺一人じゃなく、みんなで選ぶ)
胸の奥の環が優しい音を響かせ、まるで祝福しているようだった。
夜、焚き火の周りで皆が食事を囲む。
セリーヌの歌、ガルドの笑い声、エファの航路解説――
そのどれもが懐かしく、愛おしい。
「これからどうするんだ?」とガルド。
「しばらくは……ただ星を見ていたいな」
仲間たちが笑い、火がぱちりと弾けた。
(旅は終わった。でも、星はまだ無数にある)
空を見上げると、新しい星がひとつ、ゆっくりと輝いた。
(いつか、あそこへも行こう。けれど今は――)
深く息を吐き、目を閉じた。
翌朝、都市の港に立ち、オルビタに手を触れる。
「次に舵を握るのは、誰だろうな」
笑いながら、舵輪に手を置き、軽く叩いた。
胸の奥の環が最後の一音を響かせる。(ありがとう)
空に航路が走り、星々がまるで拍手をするように瞬いた。
物語は静かに、しかし確かに未来へと繋がっていった。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
第1部「追放編」から始まったリュシアンの物語は、辺境での再起、王都決戦、黒幕との心理戦、星間連邦の成立、外縁存在との総力戦を経て――
ついに第7部「星々の果て編」で、航路の起源と自らの血脈にたどり着きました。
この作品は、単なるバトルや冒険ではなく、
**「恐怖と希望をどちらも抱えたまま進む勇気」**をテーマに書き続けてきました。
リュシアンが恐怖を否定せず、犠牲を無駄にせず、最後まで舵を握った物語。
そして最後には、航路を未来に託し、自分自身もその一部となる選択をしました。
戦いも悲しみもありましたが、読者の皆さまが一緒に旅をしてくれたことで、
彼は決して一人ではありませんでした。
この完結を、少しでも「星々の夜明け」を感じる瞬間として楽しんでいただけたなら幸いです。
次の作品では、また新しい航路を描きたいと思っています。
もしこの物語が心に残ったなら、ぜひ感想やレビューで旅の思い出を教えてください。
あなたの一言が、次の航路を照らす光になります。
ここまで長い物語にお付き合いくださった皆さま、本当にありがとうございました。
感想やレビューをいただけましたら、今後の励みになります。