第7部 第7話 星々の果て
オルビタが光の航路を進むと、世界が徐々に溶けるように白く変わった。
星も、音も、仲間の声も遠のき、やがて一人きりになる。
(ここが……最後の場所)
胸の奥の環がゆっくりと鳴り、深呼吸と重なった。
目の前に、一人の影が現れる。
それはかつて見た七人の門渡りたちの面影をすべて合わせたような存在。
《よく来た、継ぐ者》
声は静かで、響きが骨にまで届いた。
(怖くない……もう、恐怖じゃない)
胸の奥の環が穏やかに鳴り、体の力が抜けていく。
《お前は、航路を開いた。
その代償と恐怖を見た上で、それでも進むのか》
リュシアンは迷わず答えた。
「進む。恐怖も影も、これから生まれる犠牲も背負って」
(もう迷いはない。俺が選んだ未来だ)
舵輪を握った感触が、指に残っている。
《ならば、航路はお前と共にある》
影が光に変わり、リュシアンの胸へ吸い込まれた。
全身が温かくなり、星図全体の脈動が体の内側から聞こえてくる。
(俺は……航路そのものになったのか)
涙が自然に溢れる。(もう、誰も一人ではない)
視界の奥に、未来の星図が広がる。
まだ線の引かれていない星、これから灯る光。
《これが、お前が託す未来》
「託す……そうだな。俺だけの航路じゃない」
遠くからセリーヌの旋律が聞こえる。
ガルドの怒鳴り声、エファの呼びかけ。
「……帰るか」
微笑んで、最後の門をくぐった。
視界が戻ると、仲間たちが囲んでいた。
セリーヌが泣き笑いの顔で抱きついてくる。
「遅い! 本当に帰ってくるか不安だったんだから!」
「帰るって言ったろ」
(全部終わった……でも、旅は終わらない)
胸の奥の環が白金色に輝き、静かに鳴った。
オルビタが再び航路に乗る。
遠い空に、新しい星が瞬いていた。
「次は、あそこだな」
リュシアンは舵輪を握り、未来を見据えた。