第7部 第6話 航路の開放
七本目の柱が崩れた跡に、巨大な円環が浮かび上がった。
円環の中央には光の舵輪が現れ、宙に浮かんで回転を始める。
「これが……最終の門」エファが息を呑む。
胸の奥の環が共鳴し、鼓動と重なった。
(体が……引きずられる)
骨の奥まで響く痛み。舵輪に近づくたび、視界が白く滲む。
(でも、もう止まらない)
セリーヌが旋律を奏で、痛みを和らげる調べが響く。
ガルドが剣を構え、影の残滓からリュシアンを守る。
「行け! あとは俺たちが押さえる!」
(みんなが背中を預けてくれる……)
胸の奥の環が温かく鳴り、力が湧く。
(なら俺も、最後まで握る)
リュシアンが光の舵輪に両手をかけると、全身が光に包まれた。
航路の映像が一斉に流れ込み、星々が繋がっていく様が見える。
《すべてを開くか?》
《恐怖も、影も、未来も》
「全部だ! もう何も閉じない!」
光が強すぎて目が開けられない。
体が焼けるように熱く、意識が飛びそうになる。
(耐えろ……ここで離したら、全部が無駄になる)
遠くでセリーヌの声が響く。「歌を重ねるわ!」
イシュナが祈りを捧げ、エファが座標を固定する。
「今だ、リュシアン! 開け!」
舵輪が最大回転し、宇宙全体に光の波が走った。
航路が一斉に輝き、星々が歓喜するかのように脈打つ。
(やった……でも、体が……)
全身から力が抜け、舵輪から手が離れる。
倒れかけたリュシアンを、ガルドが支えた。
「よくやったな、航路監」
セリーヌの旋律が優しく流れ、痛みが薄れていく。
遠い空に、かつてなかった星がひとつ、淡く光った。
「……これが未来か」リュシアンが呟く。
門が完全に開き、最後の道が現れる。
「行こう、最後まで」
胸の奥の環が静かに、力強く鳴り響いた。