第7部 第5話 最後の柱
オルビタが七本目の柱に近づくと、空気が一変した。
風は止み、音は消え、時間そのものが凍ったように感じる。
「……ここが、終わりの場所」セリーヌが小さく呟いた。
胸の奥の環が、これまでで最も深い音を響かせる。(来たな)
リュシアンが手を伸ばすと、柱が白く輝き、視界が真っ白に染まった。
次に現れたのは、七人の人影――最初の門渡りたち。
《継ぐ者よ。ここが最後だ》
《お前は選べる。
航路を閉じ、星々を眠らせるか。
航路を残し、再び恐怖と犠牲を呼び込むか》
七人の影が静かに見つめている。
(閉じれば、もう誰も傷つかない。
でも、星々は二度と出会わない)
胸の奥の環が痛いほど鳴る。(何を選ぶ……俺は)
耳に、第1部で出会った辺境の民の笑い声が蘇る。
第2部で共に戦った仲間の叫び、第5部で影を抱いた瞬間の震え。
そして、外界の子どもたちの瞳。
(これまでの旅は全部、航路があったからこそだ)
「俺は……閉じない。
恐怖も犠牲も抱えたまま、航路を残す」
声が震えたが、迷いはなかった。
《そうか。ならばお前は最後の柱となれ》
七人が光となり、柱に吸い込まれていく。
柱は静かに崩れ、代わりにリュシアンの胸が光った。
(俺自身が、航路の一部になる)
涙が頬を伝う。(これでやっと、全てが繋がる)
視界が戻ると、仲間たちが待っていた。
セリーヌが震える声で問う。
「決めたのね?」
「決めた。航路は残す。……そして、俺はその一部になる」
ガルドが剣を掲げる。「なら俺は守る。お前が見届けられない未来も」
イシュナが笑った。「外界も支えるわ。絶対に」
エファが涙を拭い、「記録する。ずっと残す」
空に巨大な門が現れた。
これは帰還の門、そして未来への門。
「行こう。最後の航路を、開ききるために」
胸の奥の環が白金色に輝き、物語はクライマックスへ進んだ。