表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/133

第7部 第3話 血の誓い

 オルビタが柱の前に停泊すると、再び光が走り、世界が変わった。

 今度は広場のような場所。中心に円があり、七人の人影が立っている。


「何かを……捧げてる?」エファが呟く。


 人影のひとりが腕を切り、血を円に垂らした。

 次々と同じ動作を繰り返す。血が土を赤く染め、円が光り始める。


(これは……代償。航路は命を削って作られた)


 胸の奥の環が低く鳴り、喉の奥が熱くなる。


(ただの技術でも奇跡でもない、“犠牲”だ)


《ここからは戻れぬ。

 我らは選んだ。星々を繋ぐために、命を差し出す道を》


 光が走り、円が門に変わった。


(俺も……あの時、影に差し出した。自分の恐怖を)


 膝がわずかに震える。(でも、あの選択を後悔はしてない)


 次の柱では、別の情景が映し出された。

 門が開いた先で、誰かが倒れ、仲間が泣きながら埋葬している。


「……一人、帰れなかったのね」セリーヌが呟く。


(航路は犠牲なしでは広がらなかった)


 胸の奥の環が、痛みを含んだ音を鳴らす。


(犠牲を許せるのか? 犠牲の上に立つ未来を肯定できるのか?)


《我らは血を流し、命を落とした。

 それでも繋ぎたかった――この空を》


(繋ぎたかった……それなら、俺も)


 舵輪に力を込める。(犠牲を無駄にしないために、選ぶ)


 視界が戻り、オルビタの甲板に立つ。

 ガルドが無言で肩を叩いた。


「見たな」


「ああ。航路は血でできてた」


 イシュナが頷く。「だからこそ、簡単に閉じちゃいけない」


 遠くに四本目、五本目の柱が見えている。

 その光は少しずつ強く、そして不穏になっていく。


「……次は、もっと重いものを見せられる気がする」


 セリーヌが旋律を奏で、皆の鼓動を整えた。


「でも進むんでしょ?」


「もちろん」


 胸の奥の環が深い音を響かせ、次の柱への道を照らした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ