第6部 第18話 恐怖の核
光の航路を進むと、漆黒の宙域の中心に巨大な光球が浮かんでいた。
その中心は黒く、まるで星の心臓のように脈打っている。
「これが……影の核」エファが息を呑む。
胸の奥の環が強烈に鳴り、耳が痛くなるほどだ。
(足が震える……でも、もう逃げない)
舵輪を握る手に汗が滲む。(ここで決める)
核から黒い触手が伸び、オルビタに襲いかかる。
均衡者たちが光の壁を展開し、仲間たちが一斉に応戦する。
「ガルド、右舷! セリーヌ、旋律を維持!」
(みんなが俺を信じて戦ってる。なら――)
胸の奥の環が白金色に輝き、全身が熱くなる。
突然、核の中から声が響いた。
《また進むというのか。恐怖を抱えたまま》
「そうだ。恐怖ごと進む」
《ならば見せよう。お前が失う未来を》
仲間たちが次々と倒れ、航路が崩れていく幻影が広がった。
「やめろ……!」
(これは幻だ……でも、怖い……!)
胸の奥の環が暴れるように鳴る。
(怖いからこそ……選ぶんだ)
「失う未来も、見た未来も、全部背負う!」
剣を握り、核へ突き立てる。
剣が核を貫いた瞬間、まばゆい光が宙域全体を満たした。
影が弾け、触手が消えていく。
(終わった……いや、ここから始まる)
涙が頬を伝い、胸の奥の環が優しく鳴った。
「恐怖の核は浄化された。
これで航路は安定するだろう」
ガルドが笑いながら剣を収める。
「よくやったな、リュシアン」
セリーヌの旋律が静かに響き、エファが深く息を吐いた。
(終わったんだ……今度こそ)
胸が温かくなり、視界が涙でにじむ。
遠い空に新しい航路が輝き始める。
(これが……未来の光)
リュシアンは舵輪を握り、微笑んだ。
「帰ろう。新しい時代が待ってる」