第6部 第17話 星々の総力戦
外縁宙域の奥から、巨大な影が姿を現した。
それは星一つ分はあろうかという漆黒の球体で、周囲の光をすべて吸い込んでいく。
「……これが本体か」イシュナが呟く。
胸の奥の環が激しく鳴り、全身が粟立つ。
(あれに勝てるのか……?)
一瞬、舵輪を握る手が震える。しかし次の瞬間、ガルドが剣を抜いた。
「勝つしかねえだろ。やるぞ!」
星間連邦の艦船が一斉に光弾を放つ。
均衡者たちの結界が展開し、都市規模の防御壁が宙域全体を覆った。
「セリーヌ、旋律を!」
響いた音楽が仲間たちの動きを同期させ、攻撃が一斉に集中する。
(そうだ、これは一人の戦いじゃない)
胸の奥の環が白く輝き、鼓動が戦場のリズムと重なる。
黒い球体から無数の触手が伸び、航路を絡め取ろうとする。
「結界が持たない!」
均衡者が光の柱を立て、必死に食い止める。
ガルドが触手を切り裂き、エファが航路制御を行い続ける。
「光の流れをこちらに集中! オルビタを主砲にする!」
(これ以上持ちこたえられない……でも、ここで止まれない)
歯を食いしばり、舵輪に力を込める。
セリーヌの旋律が最高潮に達し、オルビタ全体が光を帯びる。
「リュシアン、今よ!」
(この一撃で終わらせる!)
胸の奥の環が破裂しそうなほど鳴り、視界が白く染まる。
オルビタの舵輪から放たれた光が球体を貫き、
連邦艦と均衡者の攻撃が同時に命中した。
球体が悲鳴のような音を立て、ゆっくりと崩れ落ちていく。
闇が晴れ、宙域に光が戻る。
(やった……本当に終わったのか?)
呼吸が荒く、膝から力が抜けそうになる。
「まだ終わりではない。
本体は消えたが、残滓が散っている」
イシュナが顔を引き締める。「次で決着ね」
遠方に微かに揺れる光が現れる。
それは最後の“核”の座標を示していた。
「行こう。ここで完全に終わらせる」
胸の奥の環が力強く鳴り、決戦への道を照らした。