第6部 第16話 外縁の闇
オルビタは新たな航路を抜け、漆黒の空間へと滑り込んだ。
そこは光も影も希薄で、星々の瞬きすら遠い。
「ここが……外縁宙域」エファが記録板を握りしめる。
胸の奥の環が警戒のリズムを刻み、喉が乾く。
(見たことのない静けさだ……まるで世界が息を止めている)
ガルドが剣を構え、セリーヌが旋律を低く響かせた。
突然、空間に裂け目が走り、黒い槍のようなものが飛んできた。
「回避!」
オルビタが急旋回し、槍がかすめて消える。
(敵意がある……言葉じゃなく、最初から攻撃だ)
胸の奥の環が激しく鳴り、心臓が早鐘を打つ。
闇の中から無数の影が現れた。
それは形を持たず、触れた航路を食うように消していく。
「航路が……削られてる!」エファが叫ぶ。
「ここで止める!」
ガルドが斬りかかり、均衡者たちが光の結界を張る。
セリーヌの旋律が響き、光の刃が影を裂いた。
(これが……外縁存在か。
恐怖はあるが、今度は仲間がいる)
舵輪を握る手に力を込める。
外界の戦士たちが槍を投げ、均衡者が光の矢を放つ。
影が次々と霧散し、宙域がわずかに明るくなった。
残った影が一斉に後退し、闇の奥に消えていく。
「追うか?」ガルドが問う。
「いや、まずは情報を整理する。敵を知らずに深追いはできない」
(今のはただの先触れ……本体はまだいるはずだ)
胸の奥の環が低く鳴り、次の戦いを告げる。
「外縁存在は“食らう者”。
均衡を崩し、航路を無に帰そうとする」
イシュナが顔を引き締める。「放置はできないわね」
「全員、準備を整えろ。次が本番だ」
オルビタの帆が張られ、仲間たちが武器を点検する。
(これは……全てを懸けた戦いになる)
胸の奥の環が白く輝き、戦いの鼓動を刻んだ。