第6部 第14話 未来の重み
光が一瞬で広がり、目の前に別の星図が現れた。
航路は無数に枝分かれ、絡まり、やがて炎に包まれていく。
(これが……均衡を壊した未来)
胸の奥の環が苦しく鳴り、呼吸が浅くなる。
(見たくない……でも目を逸らせない)
人々の悲鳴が響き、都市が次々と消えていく。
それは第5部で見た大破滅の記憶をさらに過酷にしたようだった。
ガルドが影のように崩れ落ち、セリーヌの旋律が途切れる。
エファが泣きながら手を伸ばすが、その姿も霧のように消えた。
「やめろ……!」
(また……全部失うのか)
足がすくみ、膝が震える。
(均衡を選べば、この未来は防げるのか……?)
「均衡を守れば、全ては静かに続く。
恐怖も、争いも、終わる」
(確かに……均衡なら安全だ。
でも、何も変わらない世界に意味はあるのか)
胸の奥の環が激しく鳴り、脳裏に浮かぶのは――
星図都市で笑っていた人々の顔、再統合を喜んだ外界の民の声。
「俺は均衡を壊す!
恐怖も影も背負って、進む未来を選ぶ!」
胸の奥の環が白金色に輝き、崩壊した未来の景色が一瞬で弾けた。
幻影が消え、均衡者たちが静かに頷く。
「選んだか。ならば均衡を調整しよう。
進む者として、お前に道を開ける」
(怖い……でも、これでいい)
汗が頬を伝い、肩から力が抜ける。
(俺たちは止まらない。もう二度と)
光が晴れ、ガルドたちの姿が戻ってきた。
「おい、どうだった?」
「均衡者たちが……道を開くって」
セリーヌが微笑む。「あなたの答えが届いたのね」
遠くに新たな航路が生まれ、ゆっくりと輝きを増していく。
「これが……未知宙域の本当の道か」
リュシアンは舵輪に手を置き、深く息を吸った。
「行こう。均衡を超えた未来へ」
胸の奥の環が力強く鳴り、物語は第6部後半の最終局面へ進んだ。