第6部 第12話 未知の宙域
オルビタが外界の門を抜け、さらに先へ進むと、
光の航路は途切れ、星々の配置が一変した。
「ここが……未知宙域」エファが息を呑む。
周囲は静寂に包まれ、星は見慣れない色で瞬いていた。
(ここから先は、誰も地図を持っていない)
胸の奥の環が高鳴り、鼓動と重なる。
(怖い……でも、知りたい)
突然、甲板上の羅針盤が狂ったように回り、
空間に幾何学模様の光が浮かび上がる。
「これは……言語信号?」イシュナが目を細める。
光の模様が形を変え、やがて一つの人影を象った。
透き通る体、幾何学的な紋様が浮かぶ異形の存在が現れる。
「ここは我らの座標。何者か」
(言葉が通じる……でも、敵意はないのか?)
剣を握りかけた手をそっと下ろす。
「我々は星間連邦の調停者、リュシアン。
敵意はない。ただ対話を求めている」
光の存在がしばらく沈黙し、次に言った。
「対話……かつて我らが試み、失敗した行為」
(失敗……? 何があったんだ)
胸の奥の環が低く鳴り、警戒を促す。
「ならば問おう。光と影、どちらを選ぶ」
リュシアンは即座に答えた。
「選ばない。両方を抱えて進む」
光の存在が一瞬静止し、やがて淡く輝いた。
「珍しい答えだ。……ならば、我らの座標へ来い」
空間に新しい光の道が開かれた。
(これが……未知文明との最初の接触)
深呼吸して舵輪に手をかける。
「進むぞ。ここからが本当の対話だ」
オルビタが光の道を進むと、
遠くに幾何学的な都市が浮かび上がった。
その光景は、これまでのどんな世界とも違っていた。
(ここで、未来が決まるかもしれない)
胸の奥の環が静かに鳴り、物語はさらに深い航路へ進んだ。