第6部 第8話 揺れる外界
試練を終えて広場に戻ると、外界の民が集まっていた。
長老たちが立ち、リュシアンを見据える。
「残余の影は消えた。
お前の言葉に耳を傾ける用意ができた」
胸の奥の環が穏やかに鳴り、心拍が落ち着く。
(ここからが本番だ……)
リュシアンは舵輪から手を離し、円卓の中央に進み出た。
「我々の航路は再び広がりつつある。
だが、強制ではなく選択で繋ぎ直した。
外界も、その一部になってほしい」
広場がざわめく。
長老の一人が杖を叩いた。
「再び航路が暴走すれば、我らは二度と生き残れぬ!」
後方からも声が上がる。
「門を閉じろ! 外の者を追い返せ!」
(まだ恐怖が強い……このままでは賛成派も押し潰される)
胸の奥の環が速く鳴り、喉が渇く。
若い外界の民が前に出る。
「だが、このままでは我らの時は止まったままだ。
彼らが見せた光を信じたい!」
会場がさらに騒然となる。
(これはもう俺だけの問題じゃない……
外界自身が答えを出さなきゃ意味がない)
視線を上げ、会場全体に声を響かせた。
「では決めよう。外界の民自身が、門を開くか閉じるか。
俺たちはその選択に従う」
長老たちが目を見開いた。
(これで拒まれれば、全てが水の泡だ)
胸の奥の環が痛いほど鳴る。
最長老が杖を鳴らした。
「三日の間に民の意思を集める。
それで開くか閉じるかを決めよう」
(時間をもらえた……でも、三日で彼らの恐怖を解けるのか?)
仲間と視線を交わし、深く息を吸った。
空に微かな光が走り、門の縁が淡く輝いた。
(次の三日間が、すべてを決める)
胸の奥の環が強く鳴り響き、決意が固まった。