第6部 第6話 外界の長老たち
オルビタが光の道を抜けると、広大な都市が現れた。
建物は透明な結晶でできており、すべてが静止しているように見えた。
「まるで時間が止まってるみたいだ……」ガルドが呟く。
胸の奥の環が低く鳴り、慎重に進めと告げる。
(ここが……航路を断った民の場所)
背筋が冷え、掌が汗ばむ。(失敗すれば、彼らは再び門を閉ざす)
都市の中央広場に、七人の長老が現れた。
彼らは同じ灰色の瞳を持ち、声は頭の中に直接響いた。
「外からの者よ、試練を越えし者よ。
何のために我らを呼び覚ました」
「航路を広げるためだ。
今度は恐怖ではなく、互いの選択で繋がりたい」
長老のひとりが眉をひそめる。
「再び我らを焼き尽くすつもりか?」
(否定したい……でも彼らの恐怖は本物だ)
胸の奥の環が苦しく鳴る。(どう言えば伝わる……?)
リュシアンは深く息を吸った。
「過去の大破滅は知っている。
でも、俺たちは同じ過ちを繰り返さない。
航路を管理し、望む者だけが繋がれる仕組みにする」
「望む者だけ……」
「選択を残す……」
広場にざわめきが走るが、最長老が杖を鳴らして黙らせる。
「言葉だけで未来は変わらぬ。証を見せよ」
(証……行動で示さなきゃ信じてもらえない)
心臓が早鐘を打つ。胸の奥の環が強く鳴り、鼓動と重なった。
「この地には、我らが封じた“残余の影”がある。
それを鎮められるなら、お前の言葉を信じよう」
「影……?」
(また影と向き合うのか……でも、今度は恐怖に飲まれない)
舵輪を握る手に力がこもる。
「分かった。やろう」
長老たちが手をかざすと、都市の外れに黒い裂け目が開いた。
「行け。そこに我らの恐怖の残滓が眠っている」
リュシアンは深く息を吸い、仲間たちに目を向けた。
「次は……全員で挑む試練だ」