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第6部 第5話 記憶の深淵

 オルビタが案内人の示した光の道を進むと、景色が揺らぎ始めた。

 仲間たちの声が遠のき、足元が溶けるように消えていく。


「リュシアン!」

 ガルドの声がかすかに響くが、次の瞬間すべてが真っ白になった。


 目を開けると、そこは見知らぬ都市だった。

 無数の航路が交差し、星々がすぐ頭上に見える。


(これは……外界の記憶?)


 胸の奥の環が速く回り、全身が震える。


(仲間の姿がない……これは俺だけに見せられている?)


 孤独感が胸に押し寄せ、息が苦しくなる。


 突然、空が裂け、巨大な渦が現れた。

 人々が逃げ惑い、悲鳴がこだまする。


「航路が暴走している! 光を切れ!」

「もう間に合わない!」


(止めなきゃ……!)


 足を踏み出そうとするが、体が動かない。

 まるで傍観者として縛られているようだった。


(これが……彼らの絶望)


 渦が都市を飲み込み、光がねじれ、街が音もなく消えていく。

 涙が勝手に流れた。


「嫌だ……こんなの、見たくない」


 胸の奥の環が狂ったように鳴り、呼吸が荒くなる。


(こんな恐怖を何度も味わったら、誰だって航路を捨てる)


 頭の中に声が響いた。


《お前も航路を閉ざしたくなったか》


「……確かに、怖い。

 もう二度とこんなものを見たくないと思った」


(でも……閉ざしたら、今の光も失う)


 心が引き裂かれるように痛む。


「怖いままでいい。

 恐怖ごと進む。それが俺たちの選んだ航路だ!」


 胸の奥の環が白金色に輝き、記憶の景色が一瞬止まる。


 光が都市全体に広がり、崩壊の渦が消えていく。

 人々の影が振り返り、静かに頷いた。


《なら進め。次は我らの未来を選べ》


 リュシアンは息を切らせて目を開けた。

 仲間たちが心配そうに覗き込んでいる。


「……終わった。試練は乗り越えた」


(まだ胸が痛い……でも、恐怖はもう敵じゃない)


 胸の奥の環が落ち着いた音を奏でる。


 案内人が頷いた。


「よくぞ選んだ。

 次は、外界の民と直接会い、未来を決める番だ」


 遠方に、外界の都市の輪郭が浮かび上がった。

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