第6部 第1話 外航路の呼び声
再統合から半年が経ち、星図都市はかつてない賑わいを見せていた。
広場には各世界の商人と旅人が集まり、交易の歌が響いている。
(こんなに穏やかな日が来るなんて……)
胸の奥の環が静かに鳴り、心地よいリズムを刻んでいた。
(第5部の戦いでやっと掴んだ平和だ。
でも、胸のどこかで……まだ何かが始まる気がしている)
リュシアンは空を見上げる。航路の光は穏やかに輝いているが、その先でかすかに揺れていた。
この日は「再統合記念祭」。
星図都市全体が灯火で飾られ、各世界の歌や踊りが披露されていた。
ガルドが酒杯を掲げる。「もう剣はいらないな!」
「いや……」リュシアンは杯を口に運びながら微笑む。
(剣はいらない……でも、舵輪はまだ離せない)
祝祭の最中、エファが駆け込んできた。
「リュシアン! 外航路から奇妙な信号が届きました!」
「外航路……?」
胸の奥の環が急に速く鳴り始めた。
(外航路……再統合後も未接続の領域があると聞いていた。
でも、そこから信号が来るなんて)
汗が背中を伝う。
エファが記録板を差し出すと、そこには奇妙なパターンの光が記録されていた。
「これは……言語? いや、座標に近い」
座標が示すのは、航路の外縁――
これまで誰も行ったことのない“航路の果て”だった。
(未知の宙域……行かずにいられるか)
胸の奥の環が高鳴り、鼓動と重なる。
「調査隊を編成する。航路の外へ出る許可を取る」
ガルドが目を丸くする。「また危険な道に行くのか?」
「危険かどうかは、行って確かめる」
セリーヌが静かに頷いた。「旋律を調律しておくわ」
エファが記録板を閉じる。「準備は三日あれば整います」
(また旅が始まる。
でも今度は、ただ守るためじゃない――未来を広げるためだ)
胸の奥の環が白く輝き、遠い空に新しい光が灯った。
オルビタの帆が張られ、航路の外へと進む準備が整う。
「行こう。星々の向こう側へ」
星図全体がかすかに脈打ち、未知の航路が彼らを呼んでいた。