第5部 第15話 光と影の調和
都市の中心、巨大な影の渦の奥に核が浮かんでいた。
リュシアンが剣を構え、胸の奥の環が高鳴る。
《まだ選べるぞ、調停者。影を滅ぼせば恐怖は消える》
「違う。恐怖は消すものじゃない。
一緒に抱えて歩くものだ!」
(怖い……でも、ここで逃げればまた同じことが繰り返される)
胸の奥の環が白金色に輝き、光が剣を包む。
「もう一度、選び直す。
光と影、どちらかを選ぶんじゃなく――両方を選ぶ!」
核が震え、影が不気味な声を上げる。
《愚か者……! お前は苦しみを抱え続けるというのか》
「そうだ。それが生きるってことだ!」
胸の奥の環が破裂しそうなほど鳴り、都市全体に音が響き渡る。
恐怖と怒りと悲しみが胸を通り抜け、涙が頬を伝った。
(これが……俺の選んだ答えだ)
リュシアンが剣を核へ突き立てると、光と影が一瞬で融合した。
都市全体が白い光に包まれ、灰色の門が静かに閉じていく。
光の航路が再び繋がり、今度は以前よりも太く、強く輝いた。
各世界の旗が同時に翻り、代表たちが歓声を上げる。
(終わった……やっと)
胸の奥の環が静かに回り、今まで聞いたことのない穏やかな音を奏でた。
「やったな!」ガルドが肩を叩く。
セリーヌの旋律が柔らかく響き、エファが涙を拭う。
「これで……本当に航路が生き返ったんですね」
砂塵世界の代表が手を差し伸べた。
「我らはもう離脱しない。
恐怖ではなく、お前の言葉を信じて繋がろう」
(やっと、ここまで来たんだ)
リュシアンは深く息を吐き、剣を収めた。
遠い空で、新しい航路がひときわ明るく輝いた。
(次は……この光をどう育てるかだ)
リュシアンは舵輪を握り、静かに言った。
「さあ、次の時代を始めよう」
星図全体が一斉に光り、未来への幕が上がった。