第5部 第13話 言葉の刃
星図都市の広場には、各世界の旗が掲げられていた。
会議堂の扉が開き、代表たちが次々と席につく。
(今日で決まる……)
胸の奥の環が深い音を鳴らし、心臓と重なる。
(怖い……でも、ここで逃げたら全部が無駄になる)
手のひらに汗がにじむ。
深呼吸して壇上に立った。
「皆、恐怖に疲れている。
光に縛られ、闇に怯え、互いを疑い続けてきた」
会場が静まり返る。
(ここまで来るのに何度も迷った。
でも今は迷いがない)
胸の奥の環が白く輝き、声が広場に響く。
「だからこそ、今日選んでほしい。
恐怖で繋がるのか、自由に選び直すのか」
円卓の光が脈動し、各世界の代表たちが息を呑む。
「航路を一度解き、三日の間だけ“自由航路”にする。
その間、誰も干渉せず、互いの意思で再び結び直す」
「三日間も混乱が続けば交易は止まるぞ!」と反対の声。
「それでも、ここで選び直さなければ、航路は腐る!」
(これで反対が過半数なら、すべてが終わる)
視界が狭まり、会場の空気が重くなる。
リアン=ヴァルドが杖を鳴らした。
「これより投票を行う。賛成は光を、反対は影を示せ」
代表たちが次々と手をかざし、光と影が交互に灯る。
(足りない……賛成があと一票……)
胸の奥の環が痛いほど鳴り、呼吸が苦しい。
砂塵世界の代表が立ち上がり、しばらく沈黙した後――
手を光の方へかざした。
「我らは……再び結ぶ道を選ぶ」
光が円卓を満たし、賛成多数が告げられる。
会場に大きなざわめきと安堵の吐息が広がった。
(……勝った。世界はまだ繋がっている)
膝から力が抜けそうになるが、笑みがこぼれた。
だがその瞬間、空に巨大な灰色の門が開いた。
「影が……最後の賭けに出た!」
広場が震え、戦いの気配が漂う。
(言葉は届いた。あとは――行動で示す番だ)