第5部 第12話 決戦の前夜
銀河会議が一時休会となり、星図都市は静かな夜を迎えた。
広場の中心に灯された光がゆらめき、空には星々が瞬いている。
(明日で決まる……再統合か、分裂か)
胸の奥の環が低く鳴り、冷たい風が頬を撫でた。
(皆の期待を背負っているはずなのに……
今は誰も隣にいないように感じる)
心臓の鼓動と環の音だけが夜に響く。
リュシアンは一人ずつ代表のもとを訪れた。
氷の長老
「恐怖はもう要らぬ。だが、我らの民が再び犠牲になるなら話は別だ」
→ リュシアンは「防衛権を各世界に残した上での再統合」を約束。
砂塵世界の代表
「中央が変わらなければ、また支配されるだけだ」
→ リュシアンは中央改革案を提示し、具体的な人事刷新の保証を与える。
潮の民の長
「我らは孤立を好むが、交易の利も捨てがたい」
→ リュシアンは航路使用料の見直しを約束。
(やっと……一歩ずつ届き始めた)
胸の奥の環がゆっくりと鳴り、心拍が落ち着いていく。
(あとは明日、皆の前で言葉を尽くすだけだ)
会議堂に戻ると、ガルドとセリーヌが待っていた。
「随分遅かったな」
「みんなと話してきた。……少しは可能性が見えたよ」
セリーヌが静かに旋律を奏で、夜気が柔らかくなる。
(そうだ、俺は一人じゃない)
胸の奥の環が、仲間たちの呼吸と重なるように鳴った。
遠い空で、灰色の裂け目が一瞬だけ光り、消えた。
(明日が最後の機会だ)
リュシアンは星図を見上げ、深く息を吸った。
(全てを懸けて、明日言葉を届ける)
夜空の星々がひときわ強く輝いた。