第5部 第10話 銀河会議、開幕
三ヶ月後、星図都市はかつてない厳戒態勢に包まれていた。
中央の高官、離脱を表明した四世界の代表、さらに中立の世界まで――
全ての航路が都市へと収束していた。
(これで……全世界が一堂に会する)
胸の奥の環が低く、重く鳴る。
それは恐怖というより、「選択の時が来た」という合図だった。
(もし今日、俺が失敗すれば星図は裂ける)
広場の階段を上がる足が重い。
仲間たちの声が遠くに聞こえるが、頭の中は静かだった。
(ここから先は、俺一人の戦いだ)
会議堂の中央に巨大な円卓が設置され、光の航路が交差している。
各世界の代表が座り、視線が一斉にリュシアンに注がれた。
「調停者リュシアン、議長席へ」
ガルドが小さく頷き、セリーヌが旋律で心拍を整える。
「これより、全世界会議を開く」
リアン=ヴァルドの声が響き、会場の光が強まった。
「議題は――統合の未来と、中央都市の責任追及」
(ここまで来た……もう後戻りはできない)
胸の奥の環が白金色に輝き、力強い拍を刻む。
長老格の高官が立ち上がった。
「我々は秩序を守るために行動した。
影を利用したのはあくまで抑止力だ」
会場がざわめき、離脱派の代表が机を叩いた。
「抑止力? 脅迫の間違いだろう!」
(空気が荒れ始めた……今、火種が広がれば会議は崩壊する)
深呼吸して口を開いた。
「中央の行動は誤りだった。
だが、我々全員もまた過ちを犯してきた。
恐怖に駆られて航路を閉ざし、互いを疑った」
会場が静まり返る。
(ひとつ間違えれば、これが火に油を注ぐ)
「だからこそ、今ここで選ぼう。
“強制の統合”か、“自発的な結びつき”か」
光の航路が一瞬明るく脈動した。
砂塵世界の代表が目を細める。
「自発的な結びつき……つまり、再び選び直せというのか」
「そうだ。航路を一度すべて解き、
互いの意思で再び繋ぎ直す」
(これで拒まれれば、すべて終わる)
胸の奥の環が痛いほど鳴る。
会場にざわめきが広がる。
「航路を解く……!?」
「危険すぎる!」
「だが、それしかないかもしれない」
議論が紛糾する中、遠い空で灰色の裂け目が広がり始めた。
(時間がない……決断はすぐに迫られる)
リュシアンは両手を円卓に置き、次の言葉を準備した。