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2015年9月27日午後8時21分世田谷区
体が燃えている。痛い。
なぜ自分たちがこんな目に遭うのだろう。
自分たちが昨日まで住んでいた家は、炎に包まれ揺らめいている。柱が崩れ、屋根は燃え、原型を留めていないほどにあられも無い姿になっていた。
視界の端では妹が泣いている。彼女もまた全身に火傷を負っていた。
妹の周りには見知らぬ男たち。その足元には父親と母親の死体がある。
その死体は押し潰されたような不自然な様子をしていた。おそらくあの男たちがこの惨状を起こしたのだろう。
体が動かない。指の一本ですら微動だにしない。まるで金縛りにかかってるかのように思えた。
俺には焼けてただれた皮膚を触りながらこの光景を見ていることしか出来なかった。
自分の無力さを悔やんだ。
泣き声、叫び声、炎が弾ける音、家が崩れる音、様々な音が混ざり合って、汚く濁っていく。
俺の耳を不快にさせる。
俺は今どんな顔をしているのだろうか。
絶望で汚れた顔か、
それとも怒りで満ちた顔か。
その答えを知ったとき、俺の心は自分自身への憎しみで満ち溢れた。