クリスマスの奇跡
「おねえちゃん!」
弟の翔が手を振っている。
「あのねあのね!ひろくんがね!クリスマスプレゼントにね!ロボットのラジコンかってもらうんだって!ぼくもほしい!」
駆け寄ってきた翔は、キラキラと目を輝かせて言った。
「ロボットのラジコン?どんなの?」
きっと、ラジコンだし高いんだろうな…。
「んとね!あかくてかっこいいやつ!」
んー…最近人気の〇〇戦隊とかのやつだろうか…。
「〇〇戦隊のやつ?」
ブンブンと首を縦に振って、翔は欲しい欲しい!と言った。
「そっかー…サンタさんにもらえるといいね。いい子にしてないとね〜」
なでなでと頭を撫でる。
「ぼくがんばっていいこにする!」
楽しそうにスキップしながら、翔は私に笑いかけた。
笑い返しながら思う。
どこで…働こうかな…。
1番高い給料のとこで働きたいなぁ…。
クリスマスまであと10日。
日払いの仕事を探したほうが良さそう…。
▽▽▽
ぼくはふあんだった。
おねえちゃんがさいきんつかれたようなかおをしているから。
「おねえちゃん…?だいじょうぶ?」
きいても、おねえちゃんはにこっとわらって「だいじょうぶだよ」というだけ。
きっと、ぼくのせいだ。
ぼくがひろくんのいってたおもちゃをほしいっていったから。
「おねえちゃん、ぼくおもちゃいらない」
おねえちゃんはおりょうりしていたてをとめて、おどろいたようなかおでこっちをみた。
「な…なんで?」
だって…「おねえちゃん、ぼくのせいでつかれたかおしてるんでしょ…?ぼくがほしいっていったから…ぼくがおもちゃほしいっていったから、おねえちゃんがんばりすぎてつかれてるんでしょ…?」
ポロポロとなみだがあふれた。
「ごめん…ね…」
おねえちゃんもかなしいかおをしていた。
「かってあげれなくて…ごめん…」
ぼくはなみだをふいてにこっとわらった。
「だいじょうぶだよ!」
▽▽▽
クリスマスの朝。
わたしは悲しみに沈みながら、飾りの少ないツリーの下を見た。
「……!?」
言葉にならない驚きを胸に、翔を起こす。
「翔!翔!ツ、ツリーの下見て!」
そこには、翔が欲しがっていたロボットのおもちゃがあった。
リボンまで巻かれて。
「お、お姉ちゃんが買ったの?」
慌てた様子で翔は言った。
「ううん、買ってない。」
涙目になりながら喜ぶ翔を見て、私は嬉しくなった。
「サンタさんかもね…」
私は心の底からそう思って言った。
翔は遊ぶのに夢中で、私の声には気づかなかった。
小さな声で、サンタさんにお礼を言った。
「ありがとう…」