一体どこに向かうのか
晩御飯用にシチューを作った事もあって、今日はバゲットを買って来てるんだけどさ。
まぁ、お昼にも食べるよねって。
スライスし、トースターで焼きまして。
冷やし固めたパテを添え、カップスープでコーンポタージュを作ったら完成!
簡易お昼ご飯になりますと。
今作ってるバハムート肉入りビーフシチューに比べたら十分に簡易だよ?
いいね?
「流石に食事中は火を止めるか」
近くにいるとはいえ、火にかけた物から目を離すのは大変危険である。
良い子も悪い子も絶対に離れる時は火を止めるんだぞ!
トイレとかでもだぞ! ほんの数秒目を離した間に火事に発展した会社の先輩に言われたんだからな!!
「うし。いただきます」
と言う訳で火が消えたことを指差し呼称。
消火、ヨシ。
焼き上がったバゲットにパテを塗り、ザクリという音を立ててまずは一口。
――んめー!!
バハムート肉の旨味がこれでもかってくらい感じられるのに、生クリームやバターのおかげで口当たりはトロリとクリーミー。
味の濃さも丁度良くて、こりゃあ食事が進みますわ。
……サワークリームが残ってたよな。使い切っちゃお。
パテのレシピ見るとサワークリームを使う奴もあったりで絶対に合うし、そもそもバゲットにサワークリームが合うからね。
パテを塗ったバゲットとサワークリームを塗ったバゲットを交互に食べれば自然に頬が緩むってもんよ。
そして飲み込んだ後にコックリと味わうコーンスープが美味い。
サラダでも作ればよかった……。
ご機嫌な昼飯になっただろうに……。
「とはいえ十分満足出来るお昼ご飯だったんだよな……」
完食。
ご馳走さまでした。
パテ、中々作る事無いけど、このバハムート肉のパテは常に欲しいな。
こう、ちょっとサボりたい時とかに、これとトーストとカップスープだけで満足度が高いご飯になるし。
さて、腹を満たしたらビーフシチューを煮詰める続きを――する前に。
ゴー君にご飯をあげに行きましょう。
さっき解呪に使った清酒の染み込んだキッチンペーパーもあげてみよう。
食べる? 飲む? かは知らんけど。
「作ったのがあの四人だし、下戸って事はないだろ」
いつも通りの腐葉土と抗菌土のブレンド、希釈した液体肥料と共に、バットに乗せたままのキッチンペーパー。
解呪に使い全体的に紫色に染まっているとはいえ、昇ってくる香りはお酒のソレで。
そもそもゴーレムが酒に酔うのかとか、キッチンペーパーごと消化するのかだとか細かい疑問は尽きないものの、物は試しの精神でゴー君の中へとお供えする。
「ンゴッ!?」
「そうそう。今日は初めてやる解呪の方法を使ってさ。それで出たのも一緒に入れたよ」
「ンゴンゴ」
「気に入ったみたいだね?」
「ン~ゴ!」
「え? ごめん、それで終わりだけど……」
「ンゴ~」
「まぁ、これからも定期的に持って来るから」
「ンゴ!!」
「うん、約束ね」
……酒豪なのかよ。
しかも良質な酒だとか言ってたし。
絶対この部分はガブロ成分多めだな。
その内紅茶とか飲み始めたりして。
「……特殊な肥料とかねだり始めたらどうしようか……」
堆肥……はまだギリどうにか出来るとして。
米ぬか……もまぁ用意は出来るな。
魚かす……はちょっと難しいだろうし。
まぁ、からすみとか言い出さないなら大丈夫だろ。
そもそもこっちから与えなきゃ知らない知識だろうしね。
「まだ宝石欲しがる方が用意しやすいってのもおかしな話だよな……」
尻尾と眉、これらの後に宝石をねだってくる事は今のところない。
もうこれ以上宝石を摂取して進化しないのか、そもそも進化の条件を満たしていないか。
異世界のゴーレムの生態とか知らないけど、経験値とか言う概念はあるんだろうか?
もちろん、あの四人にも。
「漫画とかだと経験値だのレベルアップだの頻出するけど、そう言った話を四人から聞かないしなぁ」
仮にそれらの概念があったとして、それなら今まででそう言った話題が振られてないとおかしいはず。
決して短くない期間の間、晩御飯だけとは言え囲んでいるわけだし。
……翻訳魔法さんの偏った知識的に、この世界でもそれらの概念が理解されるってのは分かってそうだし。
異世界、行く気はないけど興味は尽きないんだよな。
いっその事、異世界の事を面白おかしく書いた本とかをラベンドラさん辺りが書いてくれないものか。
いい暇つぶしになるだろうし、楽しいと思うんだよね。
「うし、じゃあ続きをするか」
コーヒーを淹れ、ブレイクタイムを楽しみつつ。
コンロに火をつけ、煮込みを再開。
……ちょっとだけ味見してみるか。
ペロッとな。
「……おー? あ、美味い美味い」
味見で最初に感じたのはコクだね。
その後にワイン由来の酸味。
そして濃厚なバハムート出汁の旨味。
思ってたビーフシチューとは違う味わいだけど、美味い。
あと、絶対に酒に合う。主にワイン。
まぁ、材料的に八割ワインだから当然なんだけども。
「じゃあ、半分になるくらいまで煮詰めたら終わりにするか」
味的には恐らくほぼ完成に近い。
これ以上に詰め過ぎても味が濃くなるだけだろうし。
と判断し、煮詰め作業を終えて『夢幻泡影』を待つことに。
べ、別に煮込むのに飽きたわけじゃないぞ!?