火急>大至急>至急>早急
問題なくエビを全部揚げ終わり。
まずは一人に二枚ずつエビフライを皿に乗せて提供。
皿には千切りキャベツも当然盛ってますわよと。
残ったエビフライは大皿に山盛りして、食べたい人は食べたい分だけ自由にお取りください状態。
んで、ご飯とインスタント味噌汁。後は四種類のタルタルソースのボールをドン!!
タルタルソースは自分で好きなだけスプーンで掬って盛り付けてください方式。
「カケル、このソースは?」
「卵とマヨネーズとハーブとかを混ぜたやつです。四つとも味が違うんで、最初は全部を少しずつ試してみて、その後気に入ったのをどっさり行っちゃってください」
「翔ー、姉ちゃんに説明!」
「なんの?」
「タルタルの!!」
なんて姉貴から言われるが、食えば分かるだろうに。
……あー、そういや梅干しが苦手だったんだっけ? 紅しょうがのタルタルをワンチャン梅干し入りと勘違いしてるとか?
全く。いつまでもおこちゃまなんだから……。
「ノーマル、紅ショウガ、大葉らっきょう、たくあんチーズの四種類だよ」
「ほーん? 梅干し無いならいいや。……にしても大葉らっきょうか、滅茶苦茶和風だけど合うの?」
「食えば分かる」
姉貴の言葉は雑に流し、いざ実食!
……と言っても姉貴の取った大葉らっきょうのタルタルは俺は昼に食ったんだけどね。
大葉の香りがマヨの奥から香ってきて、ちょい荒めに刻んだらっきょうの食感と味がじんわりと効くんですわ。
もう本当にそのまま和風タルタル。これがご飯に合わないはずないでしょって感じだった。
「いただきます」
ちゃんと手を合わせてそう言ったラベンドラさんが一番乗り。
ザクッ! といういい音を響かせて、紅しょうがタルタルをたっぷり乗せて大きな一口。
そのまま一噛み、二噛み。咀嚼を皆に見守られながら、ゆっくりと嚥下して。
「……美味いな。最初に食べさせてもらったカツのようだが、僅かに違う気がする」
そう言ってもう一口。
「うむ、美味い。このタルタルソースとやらが最高だ。ソース自体が濃厚でコクのある味なのに、後からさわやかな香りが口の中に広がる。舌先を僅かに痺れさせる刺激と相まって、まるで口の中が洗われるようだ」
以上、ラベンドラさんによる紅しょうがタルタルの食レポでした。
続いてリリウムさん、どうですか?
「あっ……。凄く美味しいですわ」
リリウムさんは……たくあんチーズタルタルか。
たくあんのカリコリという音が口から響いてますね。
「ソースの美味しさもさることながら、調理法がやはり素晴らしいですわ。『――』の身を一番美味しく食す調理法なのではないでしょうか」
リリウムさん的にはこのエビフライって調理法がお気に召したようだ。
俺的には茹でても焼いても炒めても美味しかったけどな。エビダトオモワレルモノ。
「これも美味いのぅ!! ビールとやらが飲みたくなるわい!!」
ガブロさんは大葉らっきょうタルタルでご満悦。
全部ソースを試したみたいだけど、それに行きついたらしい。
お皿にこんもりとソースを盛っちゃってるよ。
「これもまた再現を急いでもらいたいソースだな。これがあるだけで食事がガラリと変わるぞ」
ノーマルなタルタルでエビフライを食べてるマジャリスさんからはそんな感想。
……というかマジャリスさん、あれもこれも再現しろって言ってません?
見境なくなってるような気が……。
「悪いがマジャリス。お前が気に入ったソースにはふんだんにブラックペッパーが使われている。ソースの再現をと言うが、そのまま再現すればソースだけでとんでもない金額になるぞ?」
「うっ……。しかしだな、このソースは本当に美味いのだから――」
「さらに言わせて貰えば、現在俺は大至急再現しろと言われた『ドリア』の作業中だ。その後には至急のスイートチリソース。その後に早急の角煮と続く。このソースの再現をどこにねじ込むつもりだ?」
「それは……」
エルフ二人が言い合ってるけど大丈夫?
エビフライのおかわりはあるから手を止めてるとリリウムさんやガブロさんに食べられちゃうよ?
「やっぱりエビフリャーはタルタルに限る」
あと黙々と食ってる俺の姉貴にも。
てか姉貴、もう米とみそ汁は完食してるし。
エビフライにタルタル乗っけて、もっしゃもっしゃと食うだけBOTになっちゃってるや。
「この赤いソースの方は酸味がまろやかですわね」
「同じ緑でも香りが違うな!」
リリウムさんと、我に返ったマジャリスさんがソースを色々食べ比べて楽しんでいる中。
「カケル、このソースに使っているハーブなのだが……」
大葉の事について質問してくるラベンドラさん。
和風○○って付くもの大体に使われているイメージがある大葉。
これに関する説明は簡単だ。
「この国で合法的に使用できるハーブの中で、特に香りが優れているものですね」
うん。噓は言ってない。
間違ってもない。いいね?
「やはり……。極上品なのだな……」
俺の説明を真に受けて驚愕してるラベンドラさん。
えっと……ごめんなさい。その大葉、スーパーで束で100円もしない奴です。
そんな驚かれると思ってなくて……。
「しかし美味過ぎていくらでも入るのう!!」
あ、ガブロさん、ごめんなさい。
それ残った分がお持ち帰り用になるやつなんです。
なんで出来れば残しといてもらっていいですか?
……あの、残して――。
お願い! 残してください!!




