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最強中華

 なんかもう色々と視線と圧が凄いのでちゃっちゃと作っちゃうことに。

 ……あ、エビチリに入れるネギ忘れてたわ。


「ちょっと切り忘れた材料あるんで待ってもらっていいです?」


 とラベンドラさんに伝え、ネギを取り出して。

 五人分だしたっぷり使うか、と、白い部分全部を使う事に。

 蛇腹切りでみじん切りにしていきまして~。


「ほう。そうやって切るのか」

「? ええ。出来るだけ細かく切りたいんで、こういうやり方で」

「なるほどなるほど」


 なんかラベンドラさんからめっちゃ手元見られるんだけど……。

 そんなみじん切りが珍しいのか?


「にしても良く切れる包丁だな」

「結構いいもの使ってるんですよ」


 どうやら見てたのは包丁らしい。

 何を隠そうこの包丁、その筋では有名な職人さんが作ってくれたものだったりする。

 ……ばあちゃんのコネは最強也。


「じゃあ、みじん切りが終わったんで作っていきますね」


 なんて言ったけど、特にもう面倒な工程はない。

 エビとネギをぶち込み、作り方通りにエビチリのもとを入れていくだけ。

 というわけで出来上がったものがこちらです。


「味見は……」


 どうです? なんて聞く前に三人からの視線で射殺されたよ。

 食べるなら全員同時じゃないと気が済まないらしい。

 はいはい、分かりましたよ。


「つ、次はエビマヨを作っていきますね」


 三人の鋭い視線を背中に受けながらお次はエビマヨ。

 こっちはもうフライパンすら使わない。

 ボウルにマヨネーズ、卵黄、生クリーム、少々のケチャップ、練乳を入れて隠し味にレモン汁。

 これらをよーく混ぜ合わせ。

 ちょっと味見……。

 もうちょい塩が欲しい。というわけで塩追加。

 ソースだけなら味見も許されるだろ。

 ラベンドラさん、不思議そうに見てるし。


「ソースだけ味見どうぞ」


 とボウルを目の前に持っていくと、


「すまない」


 そう言ってソースを薬指で掬ってペロリ。

 ……背中に感じる威圧感が強くなった――気がする。


「濃厚なコク。そして奥から酸味と、その酸味を中和するような甘みが広がるな。……いやはや、美味い」


 なんて感想を貰ったので、エビマヨも確実に受け入れられるだろう。

 じゃあ後は、このソースをエビに絡めていくだけですわぞ~。


「にしてもアレだ。どのソースも一辺倒な味をしていないな」


 ボウルにエビを入れて混ぜ合わせていると、ラベンドラさんがそんな事を言いだして。


「分かりますわ。ここでいただく料理のどれもが深い味わいなんですの」

「塩辛いだけのソースや酸っぱいだけのソースなら元の世界にもあるんだがな。後は、スパイスのみが効いたソースなんかも」

「どれも雲泥の差じゃ。……いや、比べる事すらおこがましいわい」

「正直、皆さんから貰った食材って、変に味付けしなくても美味しいですからね」


 皆の同調に、少しだけフォローを混ぜておく。

 実際、このエビダトオモワレルモノは塩茹でだけで美味しいし。

 

「じゃから素材の味を生かす……ちゅーと聞こえはいいが、素材の味に頼り切りな料理ばかりが出来るんじゃわい」

「俺が料理人をしていた時に頭を悩ませていたものだな。どんなソースを付け合わせても、素材の味を楽しむ貴族が居たものだ」

「貴族相手に料理人をしてたんですか!?」


 ラベンドラさん、実はとんでもない料理人なんじゃあ……?

 こんな一人暮らしゆえに自炊スキルだけが伸びた料理が趣味の俺が講釈垂れ流していい相手じゃなかったりする?


「過去の話だ」


 なんてラベンドラさんは言うけど、……待て? エルフの言う過去ってどれくらいだ?

 エルフって長命ですよね? そのエルフの言う過去いず何年前?

 ひょっとして二世紀前とかの話してる?


「それより、もう匂いが良すぎてたまらないんだが、まだ出来ないのか?」

「あ、ごめんなさい。盛り付けて完成です」


 というわけでサニーレタスを敷いた皿にエビチリとエビマヨを山盛り盛りつけまして。

 皆の前に皿を置き。


「今日は米じゃなくパンなんです」


 と、スーパーで買って来た揚げパンを提供。

 エビチリする時はばあちゃんが決まって揚げパンを出してたんだよね。

 だから、俺も自然とエビチリには揚げパンってのが定着しちゃった。

 揚げパンの甘さとエビチリの味が絶妙にマッチしちゃうのよねこれが。


「また珍しいパンじゃな。上にかかっとるのは?」

「砂糖です。と言ってもそんなガッツリ甘いものじゃないんで」


 と説明。


「砂糖……」


 なんかラベンドラさん絶句してるけど、無視。

 手を合わせてください、合わせました。

 全ての食材に感謝を込めて、いただきます。

 まずはこの、大ぶりに切ったプリップリのエビチリから。

 はぐっ。モッシャモッシャモッシャ、ゴクン。

 ……は? クッソ美味いんだが?

 一匹で口の中の面積を独占するようなエビを噛めば、ジュワッと肉汁。

 そもそも身の触感が素揚げしてるおかげで非常によく、歯を心地良く受け止めるクッション性が出てきてる。

 んで、ちょっとでも歯で押し潰すと肉汁がジュワ~。

 そこにチリソースのうま味と酸味、遅れてピリリとした刺激がやって来て。

 口の中が幸せで満たされ、大満足。

 んで、そのエビのうま味とチリソースのうま味が残った口に揚げパンをガブリ。

 口の中のうま味をパンに吸わせ、それを咀嚼して味わうマッチポンプ。

 ありがてぇ……っ!! 涙が出る……っ!! 美味過ぎる……!! 犯罪的だっ!!


「ふー、うっま」


 揚げパンを飲み込み、一息ついて。

 コップのお茶を飲み干し辺りを見渡すと。


「って、はや!?」


 もう、四人の皿の上のエビチリとエビマヨが、全員半分以上なくなっていた。


「これ、モグモグ。ダメですわ! もぐもぐ、手が……もぐもぐ。止まりませんわ!」


 手どころか口も止まってないですよリリウムさん。


「ラベンドラ、マジでこの料理は再現してくれ。どれだけでも協力するから」

「この命に代えて、必ず。俺だってここだけでしか食えないのは納得出来ないんだ。何としても再現させるさ」


 男エルフ二人は大まじめにそんな会話しながらエビを消化していってますね。

 口周りがソースでべたべたなのも気にしてないみたいだ。


「美味い!! 美味過ぎる!! これに酒でもあれば最高なんじゃがなぁ!!」


 なんてガブロさんが言って思い出した。

 あったよ! 酒が!!


「ありますよ、お酒」

「何じゃと!? の、飲ませてくれんか?」

「いいですよ。持ってきますね」

「ひゃっほう!! 今夜は宴じゃあ!!」


 なんて騒がしくなったガブロさんを静かにするために。

 俺は、冷蔵庫にあるビールをガブロさんに提供するのだった。

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[気になる点] こんなに、料理ができるのになんで料理人じゃないの?
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