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帰りののぞみ 〜流しそうめん呪いの地にまつわる怪奇な話〜  作者: ゆずさくら


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帰り道


「お客さん、お客さん!」

 僕は、足を突かれていた。

「お客さん、起きて」

 新幹線の車内だ。

 生き、てる。

 車内が、明るい。単純な照明の明るさじゃない。

 僕は立ち上がる。

 窓の外に人が歩いていたり、待合の椅子に座っているのが見える。

 ここは…… 駅のホームだ。

「やった! 戻れた」

 僕は窓に近づいて頭を低くする。

「東京だ、ついたんだ」

「お客さん、あの、いま清掃をしてて」

 清掃の人が、指をさす。

「こっちの扉を開けるからこっちから出て」

「あ、そうですよね」

 僕は慌てて荷物をまとめ、車外にでた。

 何時間ぶりだろう、新幹線の外に出られた。

 僕は早々に立ち去ろうと思い、階段を探して降りようとしていた。

「唐松さん。待ってください」

 スーツの男性が、僕の腕に触れる。

 振り返ると、警察手帳を見せてきた。

「少しお話を聞かせてください」

「えっ?」

 あっという間に、僕は屈強な男たちに囲まれていた。




 僕は丸の内警察署で、話の概要を聞いてしまった。

 どうやら、新幹線の一編成そのものが消え去った、と言うのが通常の世界から見た事実のようだった。

 列車は消え去ったが、博多で乗車した殆どの客は定刻通り、降りるべき駅についていた。

 電車に乗っていた記憶はないそうだ。気がつくと、目的の駅にいたらしい。

 鉄道会社としては、ATCやCTC、PTCといった列車管理の全てが騙されていた。

 運転手は、突然、その車両を降りていた。

 東京には折り返す列車として、何ものかが仕掛けた代替の一編成の車両が入線していた。

 しかしながら、到着した車両を清掃する会社が、その代替一編成に清掃作業が発生しなかったことに気づいた。

 清掃会社からの連絡で、ようやく一編成がすっぽりどこかに消え去っていることを認識した鉄道会社は、警察に『車両の盗難事件』として報告した。

 警察は、消えた車両に博多から乗った乗客の個人情報を入手し、確認を取ると、一部の車両の乗客と連絡が取れないことがわかった。

 その後、列車は丸一日遅れて、東京駅に現れた。

 すると同時に、小倉、広島、岡山、新神戸、新大阪、京都、名古屋、新横浜、品川の各駅で、一体ずつ死体が現れたのだった。

「君は、半ば諦めていた頃、最後にあの車両から発見された」

「……」

 僕は、僕が経験したことを全て話していった。

 暗いトンネルをずっと走行している中で、次々に人が殺されていく。

 絶望的な無力感の中で『デバッガーズ』と言うゲームがヒントになっていたこと。

 最後に見つけた犯人二人。

「品川で発見された死体が柏、新横浜は小宮山、名古屋が沖田、京都が三島、新大阪が、東出だな?」

 名前を知らない死体について、余計な情報を言うべきじゃない、僕はそう思っていた。

 だから、それ以前に死んだ人のことは言わなかった。

 覚えている限りの身体的特徴だけを言った。

「列車にあったはずの死体が消えていきました。だから、死んだ順に駅に置いて行ったとすれば、そうなるはずです」

 警察官はこちらに見せないリストと見比べているように思えた。

「説明がつかないことばかりだが、君の言っていることと現実が、何らかリンクしているように思えるな」

 僕は突っ込んだ。

「ごめんさい。西条と美木は、ここで同じようにここで取り調べられているんですか? 会わせてください。同じことを言っているはずです」

「残念だが、その点は何も喋ることはできないし、会わせる事もできない」

 つまり、僕は容疑者なのだろうか?

「じゃ、西浜と池内と言う女は見つかりませんでしたか? そいつらが犯人なんです」

「あまり捜査上の秘密を言いたくはないが、その二人は座席の位置や、鉄道会社からきた情報に照合しても、存在しない人物と思われる」

「……」

 僕は容疑を掛けられたまま、警察署でいくつもの夜を過ごした。

 しかしながら、新幹線で過ごした時間よりも、現実的であり、ずっと幸せだと思った。

 実質的に僕が列車を一晩どこかに消し去ったり、死体を各駅に送り届けるなど、犯行を行うことができないことが認められた。

 夜、僕は東京駅から街の灯りを眺めた。

 オフィスビルの窓の灯り、あそこには何人もの人が生きているはずだ。

 そうだ。僕もその世界の中で生きている。

 そして、二度と『流しそうめんを食べよう』とは思うまい。

 僕は入線してきた中央線の列車に座ると、本当の『帰り道』につく事ができたのだった。





 おしまい




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