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CEOに会おうー3

「しーいーおぉ……って」

 クサナギの言葉にリュウセイは唱和する。

 困惑した表情になってアオイを見るとアオイもこちらを見て困惑していた。

「そうここの最高責任者に勇者くんをお迎えしたいのさ」

 やわらかい笑顔をリュウセイに向ける。

「なぁにいきなりこの椅子に座ってくれというわけじゃないさ」

 二人の顔を見ずに、四方の角でおさまる部屋に置かれた長方形の整頓された机を横通りし、立派な革張りの椅子の背もたれに手を置く。

「私がプレジデントとなり補佐をして行くともさ」

 まるで舞台の上で台詞に感情を乗せて立ち回っているようであった。

「リュウセイくんに今そのようなことを言ってもわかってもらえませんよ」

 アオイは言う。

 片や翡翠のように輝く瞳で片や輝きが薄れても存在を見せる青い瞳しかし、同じ金色に近い髪色をした親子が言い争っている。

「クサナギさん」

 間にリュウセイが口をはさむ。

「ありがとうございます」

 三角の耳を直立に張ってマズルの口をほころばせる。

「俺のことを考えてくれてもらっていて」

「なに、問題は一つもないさリュウセイ君。勇者である君の為さ」

「だけど俺、することがあるんです」

「することって」

 アオイの言葉にリュウセイは頷く。

「友達を探すこと」

 くすみのない瞳にアオイはもちろん、クサナギもこれにはポーカ―フェイスを崩さなくてはならなかった。

「リュウセイくん何かあったの」

「君は何か、記憶が、思い出せたのか」

 目を震わすクサナギと驚いているアオイにリュウセイは首を振る。

 柔らかそうな白い毛が溢れる胸にリュウセイは手を置く。

「うまく言葉にするが難しいのですが、思い出したというよりやらなくてはならないこと、なのでしょうか。しなくちゃいけないって気持ちがあってでも、友達がここにいない確信がなぜかあるのです」

「友達を探すために……」

 アオイがつぶやく。

「今まで会った人の中に俺の探している友達はいませんでした。だから、クサナギさんのやさしさに答えられないです」

 ごめんなさい、と耳を伏せる。

 ふむ、とクサナギは考えるように顎髭をさすり、革張りの椅子に座る。

 リュウセイに顔を向ける表情は元の自信に満ち満ちたものへ戻っていた。

「リュウセイ君、君のことが少しだけかもだが理解できて有意義な時間だったよ。そしてすまない。君がそのような大切なことを抱えているのにかかわらず私欲ばかり伝えてしまって」

 クサナギが謝罪言うと、リュウセイは謝罪をやめるように手をかざし首を振る。

「そんなクサナギさんが謝るようなことではないですから」

「勇者から慈悲を頂けるとはこのレイ=ラス・クサナギ感極まるものであります」

 椅子からすっと立ち上がったクサナギは胸に手を当てて礼をする。

「またそうやって大げさなことを」

 父親の表現の大袈裟に呆れを一分も隠さずに表に出していた。

 うって変わってリュウセイには不服の顔は一つもなく、

「でも、リュウセイくんがしたいことがあるってわかったから、手伝えそうなことがあるなら言ってね」

「ありがとうアオイさん」

 仲良く笑った。



「さあて」

 二人の帰りをバイクの後ろ姿を見送り社長室へ戻ったレイ=ラスは革張りの椅子に深く座り、天井を見上げる。

 探し人がいる。

 あのリュウセイ青年の言葉をくりかえし思い出す。

 でも、会った人の中にはいなかった。

 ならどこへ行くのだろうか。

 外へ行くということだろうか。

「困ったね」

 自傷気味に笑う。

 このシティの外へ行かせるのが正解なのかそれともどうにか留めさせるべきなのか。

「外へ行かせようともな」

 外へ行かせるそれがここにどういう変化をもたらしてしまうのか、考えれば考えるほどに最悪と最善が思考をドツボへ引き込む。

 小さな機械音がする。

 薄めにそれをレイ=ラスは見つめ、机をタップする。

 映像のモニターが素早く現れると、メールを呼び出す。

 レイ=ラスは目を丸くした。



「アオイさん」

 ビルが離れて小さくなっていく。

 舗装された道にバイクを走らせながらリュウセイは後ろに座るアオイに声をかける。

 普段より声を大きく。

「なあに」

 運転手の腰に腕を回し普段より大き目な声でアオイも声を返す。

「ありがとうございます」

「え、どうしたのさ」

「いや、変なことを言ったはずなのに手伝ってくれるって」

「だってリュウセイくんがそのために色々していたってことだから応援したいなって」

「……ありがとう」

 メットの中で笑った。

 店の前にゆるりとバイクを止めエンジンを止める。

「ん、あれ」

 メットを外しながら店に目線を送って首をかしげる。

「どうした」

 とメットを脱ぎながらアオイが言う。

「え、あ、なにか。なにかあるなって」

 言葉が浮かべられず口から出る表現は曖昧のまま、店のドアを開けて中へ入る。アオイの顔を見ずに速足だ。

「待って」

 メットを置いて店の中へ追って行く。

 入ろうとした矢先に背中と尻尾があった。リュウセイのだ。

 どうして止まっているのだろう、と屈んで端麗な顔だけを覗かせて奥を見る。

 翡翠のように輝く瞳を宿した目は、目の前の現実を驚きで受け止めるが、口は叫ばないよう両手で覆った。

 ゆっくりとわななく体をリュウセイから出した。

 大木。毛で覆われた茶色の大木。服がよく持ちこたえているほどにはちきれそうな体つきに見合う二本の太く強靭な足で立ち、太く堅固な二本の腕が心強さを思い出の中のままだ。

 こちらに気づいた黒い瞳の彼はオルグのディアザー。熊であり、

「勇者様」

 アオイが声を漏らす。

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