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勇者のいるお店

「あら、こんにちは」

「こんにちは、おでかけかしら」

「ええ、子供がお昼はどうしても勇者様のお店で食べたいと言うものでして」

「ふふ、内の人も同じよ。お昼は勇者様のお店でしようって連絡があって今から行くところなのよ」

「おかーさんはやくはやく」

「こら、一人で行かないの」

「じゃあ急いで行かないとね行列ができちゃうわ」



 町の中心から離れた小高い丘の上に家が一軒あった。

 周りに家もなく丘から眺めれば、噴水が見えて植林された林が見下ろせた。

 わざわざここへ向かってくるようなものはないのだが、交通の便も気にせずに人はやってくる。

「いらっしゃいせ。ただいま混んでいましてお二方同士で相席になってしまいますがよろしいでしょうか」

 外は灰色内は白色の毛でおおわれた姿で屈託のない笑顔をマズルに作り、白いシャツと紺のズボンそして頭にバンダナ腰にエプロンを着けたオルグの狼の顔をした青年は、そう言って順番待ちをしていた四人の客を案内する。

 二〇人は入るだろうか。店内の席は一つも開いてはおらず、外に列もできている。

 忙しいと傍目で見てもわかるがバタバタと走らず、笑顔を持って食事を提供していった。

 フロアを一人で切り盛りしているわけではない、女性が一人いる。

「ミートボールスパゲッティお待たせいたしました」

 明るいブロンドの長髪を括りおだんごにして狼の青年と同じ服装でエプロンをつけている。

 はっと目を引くほどに澄ましていると上品であるが、微笑んで声をかける度に心を豊かにする。

 フロアに二人、厨房に一人、レジはセルフでカード支払いの音が鳴る。

 材料がなくなりラストオーダーの声かけを店の外へ狼の青年は外の列で並んでいるお客になるはずだった人たちへ詫びを入れる。

 店は閉店の看板を出して、お昼の間だけの戦争は落ち着きを取り戻す。

 最後の一人を見送って大柄な男が厨房から出てくると、カウンターテーブルの椅子に腰かけているスタッフ二人へ労いのレモンスカッシュを手渡した。

「ヴァズロフさんありがとう。でも、忙しくなりすぎじゃない」

 不満を吐きながらストローをさしたレモンスカッシュを飲み始める。

「思い付きだったんだが、思っていた以上に盛況になってな。アオイに来てもらっていて助かってるよ」

 太い両腕を組んで、はにかんで言う。

「おだてても嬉しくないよ」

「や、アオイさんが手伝ってくれて助かってるのは本当だよ」

 同じようにレモンスカッシュを飲んでいたリュウセイが話しかける。

「ふーん。まあ褒められるのは悪くないけどさ」

 やりとりにヴァズロフは肩をすくませる。

「それしても勇者様ってどんな人なんだろうね。俺の顔を見て勇者様って言われるからよく似ているのかな会ってみたいな」

 リュウセイは何気なく言った。

 二人の表情に陰りが宿る。

「どうしたの」

「いや」

 と、ヴァズロフ。

「そうだなその内会いに行ってやるのもいいな」

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