光を掴む
丘から落とされ林の木々を目にしたアキラツは突入した刹那、一本の枝を手でつかまる。
すぐに折れてしまうが、流れるままに枝を足で折り、次へ次へと枝を渡り勢いを殺していく。
視界の端が黒く塗りつぶされ狭まる。目が霞む。
不意な以上に眉間に皺を寄せる。
軽快に渡っていた枝を掴みそこない、両の足が地面に吸い込まれる。。
足の痺れに体の痛み、火花が視界を飛んだようだった。
「…まずいか」
白に金糸の衣装は枝に引っかかっていたのか破れ血がにじんでいた。
頭を振りふらつきながら立ち上がる。
空から枝を砕きながらヴァズヴァロフが降ってきた。
地面が揺れ土が吹き上がった。
どうする。
「どうすればいい」
誰に問うかと言えば自分へだろうか。
ヴァズヴァロフからヴァズロフをどう引きはがせばいいのか。
そもそもヴァズヴァロフを止めるのを体がもってくれるだろうか。
考えが出るまでもなくヴァズヴァロフは動く。
大きくなった体を近づけながら太くなった左の腕や拳それを肘を曲げて側面から打ってくる。
腕を構えてアキラツはそれを受け止める。
大きな音が弾け衝撃が獣毛や服を波打たせ、木々の枝を擦り合わせ騒ぎ立たせる。
アキラツの太い脚が土を掘るがそこに変わらず立ち止まった。
止まらずに右腕もまた側面から打ってくる。
それもやすやすと受け止める。
目に光る物が見えた。
ヴァズヴァロフの膝から伸びるツルギ。
一か八かと目を見開き、受け止めていた相手の両の拳を弾ける様に押し返し、地面を強く蹴りヴァズヴァロフの頭上を華麗に宙を舞う。
手刀がツルギを折る。
音を立てて折ったツルギを握り、血を毛に吸わせながら切りつける。
当たった。
当たったが切れずそれどころか音がない。力を籠めるが動かない。アキラツの目は見ていた甲冑から無数の手がツルギを受け止めているのを。
動きが止まってしまったアキラツの頭をヴァズヴァロフが掴み円をかいて振り回し投げる。
林から抜け地面に強く当たり、噴水のある水の中へ落ちた。
せき込み顔を上げる。
今見たのは。
考えを巡らせ立とうとしたが、膝から崩れ水の中へ両手をついた。
「ま、だだ」
目に火を灯したまま視線だけをヴァズヴァロフへ向ける。
林から抜け出しアキツラを見つけるとヴァズヴァロフが駆けだしてきた。
黒い弾丸を前に全身を奮い立たせて立ち上がる。巨体とは思えない弱弱しい動きに先ほどまでの切れもなくとても勇者と言われていた者の姿に見えない。
エンジンの音が耳に届く。
あとわずかで届く時、一瞬だった。
見覚えのあるバイクが後輪で立ち回る前輪をヴァズヴァロフの体に勢いのままぶつかり吹き飛ばした。
倒れたバイクがエンジンが動いたまま円をかいて敷き詰められたタイルの上を火花を散らして滑っていく。
空から人が落ちてきた。
両足で着地して人を抱えている。
ふさりとした長い尻尾が見える。
「リュウウセイくん無茶するね。でもすごい」
アオイの声がする。
「いや~、ヴァズロフさんに謝らないと」
抱えていたアオイを下ろしてリュウセイが言う。
「アキラツさん」
リュウセイが駆け寄る前にアオイがアキラツの側にいた。
水に濡れることを気にせず膝をついていた。
「立てますか」
「立てると言いたいが、だめだな」
乾いた笑いを出ていた。
リュウセイが姿を変えた。あの時見た輝く装甲に身を包んだ姿。
バックルが開き光をリュウセイが包む。
輝く装甲が解けるようになくなりリュウセイの姿は戻っていた。
リュウセイも水の中へ膝をつく。
「回り道してごめんなさいアキラツさん。もう俺は一人でも歩けるようになりましたから」
光をアキラツへ向ける。
「お兄さんにお返しします」
光を見るアキラツは一度顔を背けたが、リュウセイの顔を見て頷くと光を掴んだ。




