短くても思い出のために
店はいつものように繁盛している。
リュウセイが居なく客足が遠のくと思われていたが、アキラツがいる。
アキラツを目的に店にやってくる人が後を絶たない。
特別なことはしていない。する必要がない。やはりこの世界にとって勇者であるアキラツは彼は特別なのだろう。
挨拶をするだけに来る者もいる。
彼がいるだけで笑顔があった。
「いや~盛況盛況」
店を閉めて片づけをし、肩や首を動かしながら声に疲れが見えるヴァズロフが椅子に腰掛ける。
「体壊さないでねヴァズロフさん」
だんごに結っていた髪をほどいたアオイが炭酸が沸く飲み物をコップに入れて手渡した。
「ていきゅうびだったかそれはないのか」
アキラツが腕を組んで提案する。
手を仰ぐように振り、一口飲んだ。
「仕入れているからなしばらくは来るんだよ食材が、腐らすわけにはいかないからなしばらく休みはないな」
言って乾いた笑いを漏らす。
「本業じゃないのにどうしてそんなになっても頑張るの」
アオイが飲み物が入ったコップをアキラツに手渡し、自分の分を口に運ぶ。
「そうだな…楽しそうだろみんな」
飲み干したコップをテーブルに置く。
「リュウセイが来てからまた店を始めたんだよ……や、違うか元々はリュウセイの訓練か。まあそんなんで始めたわけだが、これがななんと来るんだわ人が、せっまい隣近所だからな広まってんだよ勇者がいるって勇者じゃないのにな」
ヴァズロフは笑う。
「もちろん勇者じゃないのはわかっているんだけどな。懐かしんだんだろうかねこの世界にオルグがいるもんだから愛称で勇者って呼ぶんだよ。リュウセイには悪いんだけどさみんな、なんていうか本当の笑顔になった…じゃないな気持ちの乗った笑顔になっていてな。なんだかんだ寂しかったんだろうなって、それでここに来れば勇者に会えるってなわけでやめるにもやめれない、だな。とくに」
ヴァズロフがアキラツを見る。
「本物の勇者様が起きたら騒ぎになるわけだよ」
「それは、まあすまん」
ヴァズロフの視線にアキラツは目が泳ぐ。
「アキラツさまが悪いわけではないのですが熱狂がすごいですから」
アキラツの働く姿を取る客が多く食事中に写真を取るなと札が出るのに時間はかからなかった。
なので、食事の後に写真を取る仕事が増えていた。
「…アオイなにか甘い物でも買ってきてくれ」
おもむろにヴァズロフが立ち上がりレジから金を取り出す。
「アキラツも一緒に行ってこい」
アオイとアキラツは顔を見合わせて頷く。
「アオイは晩飯どうするこっちで食うのか」
「こっちでいただききます。父も来るそうです」
「わかった」
カオルも来るかと思いながら出かける二人の背を見送った。
「あとどれくらいなんだろうな」
言ってから両手で自分の頬を叩く。
背伸びして厨房へ向かった。




