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夢の中のやさしさに包まれて

 夢を見ていた。

 夢を見ているとわかるほどはっきりしていた。

 懐かしくて知らない夢。

 夢の中の知っている人。

 夢の中の知らない事。


 人気のない薄暗い部屋。

 部屋の中に柱が立てられている。

 数十ある柱から仄かな明かりがついている。

 その一つの前に黄色を輝かせる金属に覆われた人型がいた。

 両手の五つある指先を動かし柱にあるパネルを操作する。

 柱にある発行している一つの機械がせり出した。

 人一人入りそうな楕円の金属の箱に近づき人型が触れる。

 中は宇宙の様に暗く輝いている。

 人型とほぼ同じ大きさのそれは接続されているケーブルが外れていく。

 黄色の全身鎧が軽々とマシーンの脱出ポットを肩で担ぐ。

 部屋全体が赤く照らされる。

 サイレンが同時に鳴り、黄色の全身鎧は出入り口にレンズのような輝く二つの目を光らせて、跳び地面に足のブースターのバーニヤを吹かして柔軟に着地する。

 そのまま脱出ポットを担いで走る。

 フルフェイスの兜。その耳に当たる部分から音声が届く。

 質問と説得の二つが入り混じった声に、すまないと男の声は一言で切り捨てるように通話を終わらした。

 赤い光に照らされた廊下を進み、エレベータの扉を見つけた。

 スイッチを押すが反応はない。

 仕方なくと悩んで腰部のバインダーにあるアンカーを扉に向けた時、扉が開いた。

 罠か。

 たじろぐが、進んだ。

 エレベータは乗ったらすぐに扉が閉まり下へ動き出した。

 いつでも抵抗できるように武器が取り出せるように空いた手を後ろ腰の銃に伸ばす。

 マップを立体視してエレベータの動きを追う。

 黄色の全身鎧が向かおうとしていた地下へ向かっている。

 ゆったりと重力がかかりエレベータは静止する。

 扉が開き警戒する。

 腰の銃を引き抜き先に扉をくぐらせる。

 ゆっくりと進み何も起こらないのを確認すると六角形の通路を走る。

 まっすぐ走り終点の扉が見える。

 閉まった扉のパネルを操作しようとした矢先、目が霞み始めた。

 今まで感じなかった重みを感じてふらつくが、抱えた脱出ポッドは落とす様子はない。

 ここまで来て。

 そう黄色の全身鎧がつぶやいた。

 それでも指を動かしパネルを操作するがエラーを吐き出し受け付けなかった。

 扉がまた勝手に開く。

 機敏さがなくなって警戒する心について来ない。

 扉が完全に開き中から人が見えたあたりで視界がぼやけてしまっていた。

「お待ちしていました」

 声が聞こえる。

 男とも女ともとれる中性な声。

「こちらへ」

 中へ誘う言葉をかけられるが、黄色の全身鎧は動こうとしなかった。

「君は俺を捉えないのか」

「…たしかに始めに指示されました。しかし、上位者命令がありましたので上書きされました」

「上位者…あの人かまったく、何を見られているのかわからないな」

 ゆっくりと重くなった体を動かして歩きはじめる。

「すまないが手を取ってくれるか見えにくくなっていてね」

 銃を腰に仕舞い手を差し出す。

 何も言わず優しく相手は包む。

「こちらへ案内します」

 先導する彼彼女の後ろをついていく。

「勝手に指揮系統に横やり入れてくるとは、あいつ今頃胃を痛めていないといいが」

 想像するだけでダメそうだと、黄色の全身鎧は乾いた笑いをするのだった。

「準備をするのでこちらでお待ちください」

 手を離され待たされる。

 ぼやけた視界に円形状の閉じられた扉が静かにそこにあるがわかる。

「…一方通行、なのですが行くのですか」

 機械を動かす手を止めずに訪ねてくる。

 珍しい、なと思う。

「…友達を探しに行きたといこの子は願い事を聞いたんだ。けど、一人で行くことができないからさ」

 仮面のままだが話す相手を見て微笑んでいた。

「力を貸したくなるじゃないか。今からすることが正解かはわからない」

 大きな扉を見て言う。

「この子の友達が別の世界に連れさられたか落ちていったかはわからないが、少しでも早く行動を起こせば形跡を追えるし出会える…のはこの子の運しだいだが」

「あなたがリスクを負う程の事でしょうか」

「そうだね、そうかも、だけどね。俺はもうすぐ動けなくなる。隊長の手を煩わせるのは申し訳ないんだ。だからこれは今思うと逃げる口実なのかもしれない」

 電子音だけが響いている中、静かだった扉は真ん中で二つに分けられて開いていく。

 ぼやけた視界にもわかるほど明るくなったのがわかる。

「隊長は怒るだろうし悔しがるだろうと思っていたい。それでも、この子は一人で行くことができないから俺は手伝いたいとここにいる」

「座標の準備はできました…」

 少し悲しみのある声を含ませて言う。

 また珍しいのを聞いたと黄色の全身鎧は思う。

「何もかもありがとう助かった」

「行かれるのですね」

「行ってくる。見送る人がいるとは思わなかったから居てくれてありがとう」

 はい、と小さく聞こえて、仮面をかぶった顔は笑っていた。

「きっと帰って来れるそんな気がしているから、その時はまた出迎えてくれるとうれしい、かな」

 手を振る。けれど振り返らずに光の中へ包まれた。

 熱い痛い怖い。

 光の中を飛んでいるようで滑っているようで、咆哮がわからないままに進む。

 軋んで唸る装甲。

 熱で溶けるように形を変えていく。

 鎧を着ていなければこのエーテルの中などすぐにでも蒸発していただろう。

 共に感謝するとともに、脱出ポッドの中の子を心配しなければならい。

 耐えられるだろうか。

 痛くはないだろうか。

 怖くないだろうか。

 変形してヒビの入る脱出ポッドを抱きかかえてヒビを抑える。

 守らなければ。

 熱い痛い怖いと感じていても、後悔はない。

 最後に尊敬する隊長に礼を言い、黄色の全身鎧は人の形を残さずに変え脱出ポッドを包む。

 流星の様に空を駆けた。

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