白い舞台の上でー2
光が溢れた。
視界が明るくなる。
驚いてリュウセイは両腕を動かして確認する。そして、自分の体を見渡した。
何が起こっているのかわからない。
だが。
何かが沸いてくるのがわかる。
一字の溝の目を持った細身の黒いミイラは走り殴りかかる。
目を見開いて体を大きく避けさせた。
勇者やヴァズロフと違い明らかな敵対心を見せる。
光は腰へ集まりベルトに変わる。
バックルが割れて金のリングが見えた。リングの輪の中で光が照らす。
バックルから黒が勢いよく溢れてリュウセイを飲み込む。光が弾ける。
弾けた光にミイラは吹き飛ばされる。
リュウセイの全身を黒で染められる。
黒が体を締め付け光が黄色味のある装甲となって体を包む。
マズルを拘束するように黒が包み黄色の装甲が顎と共に挟みこむ。
眉筋に一本の角が後ろへ伸びる。
「あれは」
ヴァズロフが一人ごちる。
あの夜見たリュウセイの姿。
あれ以来何をしてもあの姿にならなかった。
どうして今と思う。未確認の物体と未知の能力。相手にするなら制限を無理やり解除するしかないと思考した。
リュウセイは自分の顔を触り全身を見て両腕を目に当たる白いマスクまで掲げる。
変わった姿を確認するように。
「ヴァ、ヴァズロフさん」
珍しく情けなさのある聞き覚えのある声。
目に当たる白いマスクがコミカルに動いている。
「どうしようっ」
倒れた状態から身軽にミイラは立ち上がり、走ってくる。
「戦えッ」
「…えッ、は、はいッ」
手に持ったツルギを構え走るミイラヘ向ける。
身軽にミイラはリュウセイの攻撃を避けて見せた。
攻撃が来る。
目はしっかりと相手の動きを捉えるが、体がついて来ないでいた。
腕で防げば見た目に反して力強い重さが伝わってくる。
落ち着け。
力づくにツルギを払って見せるが当たることなく空を切る。
落ち着け。
目のない穴から視線がないはずなのに殺気じみたものを感じた。
落ち着け。
しかし、それらを感じていてはずだのに、払いのけるほどに意識が冴えていた。
落ち着けっ。
構えて手に持っていたツルギが姿を変えて、片刃のツルギの姿を変えた。
素早く鋭い黒いミイラの拳を先ほどまで大きく動かして避けていたのに、寸分わずかに体を動かして避ける。
避けるのと同時に片刃のツルギを持っていない手で殴りつける。
直撃した。
今まで当たらなかった拳とは違った。ミイラの様にそれ以上に素早く鋭く動いた。
「…すっぅごい」
思ってもいなかった力強さに驚嘆した感情がリュウセイに流れる。
手を握りしめ頷いた。
視線を敵に戻し、反撃を受けるが当たる様子がない。
返すように袈裟ぎる片刃のツルギも当てる。布の様に体が千切れたが血が出ることな閉じていく。
何をしても驚かされ続ける状況だが、隙を見せず力強く足蹴りをする。
白い床を這うように黒いミイラは地面を滑る。
リュウセイはツルギを地面に突き刺す。
額の角かもう一本の角が分かれて出てくる。
リュウセイが構えをとる。
足の装甲が開き赤い結晶の装甲が向き出さられる。
二本の角が発光するのと同じく赤い結晶も発光し始めた。
一つ息を吐き、突き立てたツルギの頭を踏み台に飛び上がる。
黒いミイラが足を下げて後退する。リュウセイに対して攻撃的だった動きの中で初めての動き。
後ろへ下がりつつ逃げる動きをしたとき、
「逃げれると」
「思うなよ」
熊の勇者と黒い魔人が息の合った動きで手に持った剣とツルギが黒いミイラを切りつける。
切られずに再生する。だがそれは、相手を押さえつけることに変わった。
赤い流星が落ちてくる。
結晶の光はリュウセイの右足を赤く覆いミイラに叩きこまれる。
赤い衝撃が広がったと思えば、黒いミイラの体が炎より鮮やかな赤に変わり一の時の仮面事崩れた。
白い舞台に赤い粒子が積もる。
空中でリュウセイは綺麗に宙返りし着地する。
身を包んでいた物はテクスチャが剥がれるように解けていく。ベルトもバックルも初めからなかったように消えた。
「リュウセイくん」
アオイが駆けつける。
「ごめんなさい見ていることしかできなくて」
「や、普通は見てることでもすごいよ」
はにかむリュウセイ。普段と変わらない様子にアオイもつられてはにかむ。
「体は大丈夫か」
とヴァズロフが近づく。
リュウセイは背伸びして見せる。
「今のところは痛みもない、かな」
何かに気づき手を見て周りを見る。
「ヴァズロフさんごめんなさい。借りていたツルギがなくなってて」
「ああ…変身、と言ったらいいか。まあ、それが解けたのと同じように消えていたからな身体検査ついでに確認するさ」
「…ホウジョウさんのところに」
「この後連れていく」
ですよね。と三角の耳も大きなふさりとした尻尾も垂れ下げる。
ふと見えた熊の勇者にリュウセイが近づく。
「勇者さん体は」
「俺もホウジョウに見せに行く…しかし、すまない。俺は君を助けられなかった」
肩を落としている大きな熊。
グローブのような手をリュウセイは握る。
「一人でいたら怖くて何もできなかったです。勇者さんもヴァズロフさんもアオイさんも居てくれたから俺は戦えましたありがとうございます」
照れるようにリュウセイは言う。
勇者のくすんだ瞳に光が差し込む。
「あ、と」
リュウセイが言いよどむ。
「名前」
「…名前」
熊の勇者が首をかしげる。
「決めてほしいって言われていたの一つだけ。一つだけ思いついたのがあるのですが聞いてくれますか」
熊の勇者は驚きはしたがすぐにも笑みを出して短いかわいらしい尻尾を振って頷いた。
リュウセイははにかんで口を開いた。




