確かめるために
「…と、長々と話してみたが」
熊の勇者はその大柄な体を揺らしてリュウセイに近づいていく。
「アオイやヴァルガスは君と縁ができているからこそ俺が問おう。君は何者だ」
熊の勇者がリュウセイを見下ろして言う。
「俺が誰かって言われても」
リュウセイは三角の耳を伏せて眉をひそめた。
「勇者様リュウセイくんはまだ記憶がおぼろげで最近ようやく自分の目指したいこと言えるようになったばかりなんです」
とドレス姿で足を急がせて近づくアオイ。
「そうか……だが」
勇者のグローブのような手がリュウセイの肩を掴む。
力強くはないが重みがしっかりとリュウセイに伝わる。
「俺を見た時、何を感じた」
強い眼差しがしっかりとリュウセイを捕らえる。
「俺は君に夢の中の俺を感じた」
「夢の中の勇者、さんに」
店に戻ってきたときに何かを感じて足が急いだ。
熊の勇者を目にして感じたものが確かにあった。
それが何だったのか、文字すれば懐かしさ。
しかし、懐かしさとは何を指さしたものだったものだったのか。
返答しようにも言葉が詰まる。
「そこまでだ。勇者が困らすもんじゃないぞ」
はっとした顔つきになり、すまないと言い肩に乗った厚い手が離れる。
「急ぎすぎたようだ」
手が置かれた肩をリュウセイは触り首を振る。
「ヒートアップするにはまだ早いぞ。さて改めてだ。これから決闘を行う」
先ほど仲裁に入ってきた声にリュウセイは顔を向ける。
黒い姿。光る赤い目。頭四肢へ伸びる黄色味ある白の発光する線。
隆起する突起を肩に乗せ、尖る指先、尖る膝脚。両肘から地面へ伸びるツルギ。
甲冑とは思わせるその姿は、空想の中の理想する敵。
誰からも見て悪く見せつけるような出で立ち。
勇者と変わらない背と四肢の大きさを持っている。
勇者の白と鎧の黒は対峙しているように見える。
しかし、
「もしかして……ヴァズロフさん」
と、尻尾を振るリュウセイ。
「おう…そう、だな」
黒い甲冑はたどたどしく返事をする。
「リュウセイくんわかっていてもこういう時は黙っていたほうがいいのよ」
とアオイは人差し指を立てて口に当てる。
「こういった司会はレイ=ラスの奴が得意だろうになんで傍観してるんだよ」
手のひらを天に見せ首を振るうヴァズロフ。
「まあいいとにかく、だ。決闘はシンプルに負けを認めたほうが負けだ。それでいいな勇者」
「ああ、彼と打ち合いたいからな」
「それと、外部に中継はされていないが、ホウジョウへは映像を繋げてあるハプニングがないとは言い切れないからな……レイ=ラスの野郎も見ているんだろうなそこで」
「ヴァズロフさんまあまあ」
アオイが眉を下げなだめる。
ヴァズロフが咳払いする。
「すまん。愚痴が出ちまった。リュウセイもいいな」
「え、ああ、う、うん」
「ま、わかってないよな。僕との稽古をしたように打ち合えばいいんだ」
鎧の肘から地面へ伸びるツルギが接続されたアームが伸び、音を立て外れる。
外れたツルギの握りを掴みリュウセイへ向かって歩き、握った手をリュウセイへ向ける。
「今更だが、やめれるぞ」
リュウセイは首を振り手渡されるツルギを受け取った。
わかっていたとヴァズロフは肩をすくませる。
「しないといけない気がするから」
「そうかならその感を信じよう。危なくなったらさっき言ったように僕がどうにかする」
「お願いします」
笑うリュウセイにアオイは心配げに見つめる。
「無茶はダメだからね」
「うん。でも大丈夫。やれる気がする」
アオイから勇者へ目線を上げ耳を伸ばした。
「よろしくお願いします」
熊の勇者は頷いた。




