昔の語り
昔戦争があった。
誰がどうして始めたのかはわからない。
わかっていることは俺はマシーンに乗って戦っていたこと。
戦うために作られたと聞かされている、誰とも知らない人達と戦う為に。
だがその時の俺は何も知らない。わからない。思い出すこともできない。
感情というものがその時まだ出来上がていなかったのだから。
いや、あったかもしれない覚えてないだけで。
そう誰かを殺めていたとしても覚えてはいないのだ。
記憶することが必要ではなかったから。
そして、マシーンが動かなくなった。
戦争というものが認識していなかった終わったということもわからず、動かなくなったマシーンの中で眠っていた。
いや、死んでいたともいえるかもしれない。
俺が俺として気づき認識したのはこの体になってから少し時間が経ってからだ。
ヴァズロフ、レイ=ラス、ホウジョウ、アオイ。
俺が何なのか、どういう戦争があったのか教えてくれた。
優しさが伝わって来るのを覚えている。
同時になぜ俺なのか、俺がここにいるのか考えるようになった。
俺はここにいる。
意味や理由など考えても俺の今を捨てるほど強くはない。
求められたのならするだけだと、ここにいる俺を俺は作った。
俺が俺であるために。
感謝を込めて。
当時シティはまだ人が寄り添う集落と言って過言ではなかった。
元々ここは街ではなくサーカスであり舞台であり演技を見せる場。
大きな道楽宇宙施設。そこに避難してきた人たちを受け入れてきたそうだ。
戦争から逃げて恐怖と疲労で、戦争が終わったと思えないと心配と無気力で明日を信じることができない人ばかりだった。
だから、俺は勇者として勇気づけるためにいた。
人助けをする。小さなことも大きなことも。
戦うこともあった。
戦争が終わって何と、と思うだろう。
作った人型無人機。リモコン操作の。
そう勇気づけるための演技。心の支えになるための勇者。
この白い舞台は人に見せる戦いの場。劇場型全天候舞台。
元々は軍人が訓練に使うために使用していたのを、昔レイ=ラスが劇用に買い取ったそうだ。
何度も何度も見せてきた。勇者と姫と魔王の話。
いつしかシティの人たちが笑い合えるようになった頃だっただろうか。
俺は倒れることが多くなった。
元々マシーンに繋がれた命だ。自立できたとしても時間は短かったのだろう。
それでも、改善する方法を見つけるために今度は皆が助けてくると言い。
俺は待つことにした。
眠るように待っていた。いつ起きるかわからない。
その間夢を見ていた。
俺は知らないのに知っている顔。
一人ではなく複数。ヴァズロフ、レイ=ラス、ホウジョウ、アオイもちろんシティの人たちでもない。
知らないはずの知っている人たち。
夢の中で俺は仲間と戦って人を救っていた。
何とも不思議だがそれが実際に俺がしていたと錯覚しているようだった。
夢に幸せを実感していた。
しかし、その俺もまた倒れた。
悔しさが伝わってきた。俺もそれがすごくわかった。
何か彼が決意した時、つながりが切れたのがわかった。
そして、君がこの世界に来たと何か引っ張られるように俺は目を覚まして外に出て空を、久方ぶりの空気を感じていたんだ。




