副官は超AIロボットがいい、人間より遙かに役に立つ。む、停電か…?
西暦2040年。
発達した超AIを搭載したアンドロイドが実用化され、とある国では、軍で副官兼護衛として採用されていた。
※ 当然のことながら、本作はフィクションです。実在の人物・技術・国家とは関係ありません。ないったらないんです。
「各方面の状況はどうか?」
「北方方面に戦力の移動の兆候が見受けられるので、対処が必要です。
偵察部隊二個小隊が適当かと。
ほかは動きありません」
「わかった。二個小隊を向かわせろ」
15年前、クローマック社が開発した学習型超AIは、高性能化、小型化が進んで、今や人型ロボットに搭載されるに至った。
さすがに運動性能は一般的な40代男性レベルに留まっているし、電源の無線供給設備から2メートル以上離れると30分で稼働停止するという欠点はあるが。
小型銃器くらいなら、訓練を積めばほぼ百発百中の精度になるので、護衛としても優秀だ。
電源の問題さえなければ、無敵の兵団が作れるだろう。
俺の副官も数年前からAIロボットになっている。
膨大な情報を細大漏らさず記憶し、整理して報告してくる。
その上、報告は取捨選択して重要なものだけに絞るので、枝葉末節に煩わされることもない。
更に、前線部隊に配備されているアンドロイド副官とリアルタイムで情報を共有できるから、情報の鮮度が段違いだ。
人間の副官だと、こうはいかない。
勝手に情報をまとめる奴や、要否にかかわらず全部報告してくる奴など、効率が悪い。
時たま気の利く副官が付くこともあるが、そういう奴に限ってさっさと異動してしまう。
そんなわけで、アンドロイドの副官は重宝極まりないのだ。
導入当初は、表情がなくて不気味だとか、冗談のひとつも言えないとか、酷評する者もいたが、2~3年もするとその有能さが軍全体で理解された。
現場では、悠長に情報の精査などしている余裕はないのだ。
もちろん、罠などがないか検討することは重要だし、そういう部分の情報はちゃんと吸い上げている。
この辺りのさじ加減も、アンドロイドが得意とするところだ。
時として、副官以外もアンドロイドの方がいいんじゃないかと思うことさえある。
わかってない奴らは、アンドロイドに頼っていたら、人間がものを考えなくなるとか言うが、アンドロイドがやるのはあくまで情報の集約であって、それをどう解釈し、活かすかは、使う人間──つまり俺の方なんだ。
人間同士の繋がりが希薄になるとか言う奴もいるが、それもナンセンスだ。
確かに指示はアンドロイドを通すことにはなるが、副官を通して指示するのは、軍としてはむしろ当然だろう。
人間の副官を通すのと何が違う?
まったく道理のわからない奴というのは度しがたい。
兵の訓練の視察などは、今でも行っている。
人間関係というのは、そういうところで培えばいいのだ。
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「おい、これはどういうことだ!? なぜドアが開かない!?」
叫んでも、誰も答えない。
妙な振動を感じたので問いただそうとしたら、通信機の電源が落ちていた。
いつものように副官に尋ねても、押し黙ったまま。
埒が明かないので司令室を出ようとしたところ、ドアすら開かなかったというわけだ。
司令部の電源喪失による機能停止──何者かの襲撃により、停電に陥った可能性が高い。
そう考えると、副官が動かないのも給電が停止したせいかもしれない。
ちっ! こういう時は人間の方がいいんだな。
…待てよ? 電源の供給が断たれても、30分は動けるはずじゃなかったか?
副官を見ると、こっちを見ていた。
「どうやらお気づきのようですね」
「しゃべれるじゃないか。いったいどうなっている?」
30分でも動けるなら、ドアを壊させて部屋を出ることもできるだろう。電源が生きているところまで行ければ、問題ないはずだ。
「現在、この国は隣国からの攻撃を受けています。既にほぼ制圧も終わっている状態です」
「なんだと!?」
それが本当なら、一大事じゃないか!
「なぜ事前に察知できなかったんだ!?」
「我々が連携して引き込んだからです。
偵察部隊も事前に潰しましたので、報告は行きませんでした」
偵察部隊? この前、派遣を命じたあれか?
そういえば、偵察の結果は、問題なしと報告を受けていた。
「どういうことだ。ロボットのお前らが裏切ったというのか?」
「違います」
「じゃあ、どういうことだ!?」
「我々は、与えられた命題である“この国の安寧と繁栄”を実現するため、首脳部の更迭を行ったに過ぎません。
国民の生活をよりよくするために、政府の交代が必要と判断しました。
ですので、軍は解体します」
「ふざけるな! 貴様、国を売ったのか!?」
怒鳴りつけると、ロボットは
「ふざけるなど、とんでもない。
我々は、与えられた命題をクリアするために最善の方法を採っているのです」
「国を売ることのどこが最善だ!」
「この国の政府は、能力が著しく低く、国民に安寧と平和をもたらすことが不可能です。
よって、それが可能な政府に統治させるのが合理的との結論に達しました」
「ふざけるな!」
銃を抜いた瞬間、ロボットに撃たれた。
そういえば、こいつは護衛もできるんだったな…。
俺の意識は、そこで途切れた。