第1話(8)静かな宣戦布告の理由
「なんでなんだよ!魔王って、勇者は悔しくないのかよ!!なんで助けないんだ!!」
今の一部始終を見てたのかなって思う程の剣幕で、竜也と同じ歳の自警団に所属してるカイトが竜也に殴ってきた。
竜也は、身体を半身ずらしたり次々に攻撃を軽々避けながら答えた。
「カイト。今のやつの話を聞いてたろ。攻撃したり、助けたらこの村は、地球連合に反逆した事になる可能性があった。」
「勇者でも、どうにもならないのかよ!!。」
「今、勇者を騙り地球連合騎士団を指揮してる人物に対する情報が少なすぎる。好戦的なのか、残酷で残忍なのか。勇者と騙る者がどれ程影響力があり、どれだけの組織を動かせるのか。少なくとも、勇者を騙り人々を連れ去りを命ず思考の持ち主だ。
背後関係は分からないが、自己中心的な思考なのは間違いない。
都合のいい様に解釈し、反逆だと判断する可能性も高かった」
「意味分かんねぇよ!!」
「助けたいなら、一点で考えるな!必死に多方面から思考しろ!!少なくとも、反抗の意思は伝えた!!」
竜也はそういうと、顔面に向けて放たれたカイトの右ストレートを右手で掴んだ。
力強い打撃音が静寂の中に響き渡った。
「どういう事だ?」
「彼は俺に勇者竜也かと聞いてきた。」
「確かに、そうだな。」
「少なくとも、今の勇者が本物では無い可能性があると気付いた、あるいは考えてる。その上で、勇者の命により動いてると言ってきた。それは、俺に今の勇者は偽物で、そいつが命じていると伝えてきたって事。ここで、俺が本物の勇者だと騒げば、俺はとられられ、俺を匿ったとして村が狙われる。だから、勇者の敵だと、暗に宣戦布告する為に魔王と名乗った。」
「良く、分かって無かった。ごめん。」
カイトは、意気消沈し拳を弱々しく下げた。