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私がオバさんであっても 序章  作者: 五味
序章 始まりの君へ
12/21

第10話「おてんば天然娘 さくら!!」

やっと10話まできました!

 チュンチュンという雀のさえずりが聞こえてくる早朝。

 某神社の境内に位置する荘厳な一軒家の玄関前に、腰まである長く艶のある黒髪を後ろで軽くまとめ、渡良瀬学園高校の制服を着た1人の美少女が立っていた。


「ふぁ~あ」


 彼女はあくびと共に大きく、けのびをする。

 そして一息つくと「さくら、行ってきま~す!」と、元気よく家を飛び出ていく。

 彼女の名前は天童(てんどう) さくら。

 うら若き乙女~な絶賛発育中の高校1年生、16歳だ。

 彼女は渡良瀬学園高校の生徒であり、今日も今日とて学校へ登校しなければならないのであるが、そ・の・ま・え・にぃ~、いつもの日課を行う場所へとやって来る。そこは通学路にある十字路だ。


「さ~て、今日もはりきって当たるわよ~」


 さくらは、十字路の角に隠れ、コソッと辺りを見渡しながら気合いを入れている。さて彼女が何をしようとしているのかというと


「そ・れ・は・ね、ここを通るイケメンな男子高校生や早朝ランニング中のイケメン男性に故意にぶつかるの、そしてぇ……❤️」


 ポワワワワ~ンと辺りはピンク色に染まり、そのままさくらは、妄想の世界に入っていく。



「きゃっ!」


 道路を歩く長身のイケメン学生めがけてボカンッとぶつかりに行くさくら。


「あぁ! す、すみません、ボクの不注意で前を見ていなくて……」


「い、いえ……、アタシの方こそぉ、ちゃんと前を確認していなかったものでぇ……」


「大丈夫ですか。お詫びと言っては何ですが、今からカフェにでもご一緒にどうでしょうか」


「えぇ~❤️ じゃ、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら~❤️」


「あぁ、それにしてもお美しい……。今度はちゃんと前だけでなく、キミも見ていたいな」


 さくらに顎クイをして迫り、キリッ✨ と白い歯を見せるイケメン。


「あはぁ❤️ そんなこと言われちゃうと……、うふふふ、ぐへへへへ❤️」



 ……妄想終了。



「ウフフフ……❤️ 故意(こい)から始まる(こい)、なぁ~んてねぇ❤️」


 ゆるんだ口元からヨダレを垂らし、目をハートにしてさくらは、当たり魔的妄想の余韻に浸っていると、そこへ何者かに後ろからバンッ! と現実世界でぶつかられる。

 その急な出来事にさくらは、思わず「きゃっ!」と声をあげ、矢継ぎ早に「いったぁ~い! 誰!? アタシにぶつかってどうすんのよ! アタシにぶつかって!」と追及する。


「あ、あら、ごめんなさい。通勤で急いでたもんで。不注意で見えてなかったわ」


 そんなぶつかってきた相手を見てみると、そこには1人の黒スーツを着た30代くらいの女性が。さくらは相手を睨む。


「ちょっと~、アタシの邪魔をしないでよ、オバさん!」


「オ、オバ、オバさんですってぇ! なぁ~にょ~、この小生意気な娘! ぶち殺すわよ……ったく、あぁいけない、こんな娘にキレてるヒマじゃないんだわ。そういえば、ねぇアナタ、この辺にタクシー乗り場ないかしら」


 さくらの言葉に一瞬怒髪天を衝いた女性であったが、我に返ったようで尋ね出す。


「えぇ!? タクシー乗り場ならあっちの方だけど」と、右の道をまっすぐ指差す。


「あら、そう。ありがと、まぁさっきの暴言は、今のお礼に見逃しておいてあげるわ、これからは私のような人を見たらお姉様とお呼び!」


 そうさくらに言い残し、その女性は走って去っていく。


「まったく、誰なのよ、あの年増オバさん! べーっだ!」


 そんな彼女の後ろ姿に向かってさくらは、あっかんべーっとする。とそこへ再びドカンッ! と、ぶつかられ「ぐへぇ!」と声を出し、顔面からコンクリートの道路へ倒れる。

 一方ぶつかってきた方もドタリと倒れ込む。


「痛っててぇ~、ご、ごめん。急いでたもんで」


「ちょ、ちょっと~、みんな、アタシの計画をどれだけ邪魔すれば気が済むのよ~!」


 さくらがそう言って腰をさすりながら相手の方を見るとそこにいたのは白シャツに黒ズボンの制服を着たゆうまであった。


「って、あぁ! お前は同じクラスメートの天童 さくら!」


 まさかの顔見知りにゆうまは、思わず声をあげる。


「あれ! な、なんだ、誰かと思ったらゆうまじゃないの!」


 さくらも意外とばかりに声をあげる。2人は渡良瀬学園高校の同クラスの生徒であり、顔見知りであったのだ。


「一体こんなところで何をしていたんだよ、さくら」


 彼女の目的を知らないゆうまは、疑問に思ったようで尋ねる。


「え? そりゃあ、もちろん男漁り……じゃなくて、通学路の見回りに決まってるじゃないの!」


 口を滑らせそうになりつつも、たははと笑って誤魔化すさくら。

 そんな彼女にゆうまは苦笑いしつつ、「は、はぁ……、だけどな、さくら、もう時間が……」と言おうとした所で、キーンコーンカーンコーンという学校の予鈴の音が遠くから聞こえてくる。


「あ、いけない! 学校に早く行かないと遅刻しちゃう!」


「だからもう時間がないんだってば。急ごう!」


 2人はドビューーンと、急いで学校へと走り去っていく。



第10話「おてんば天然娘 さくら!!」



「皆さん、おはようございます。えー、今日は愛野 ゆうまくんと天童 さくらさんが遅刻ですね。まったく、特にさくらさんは、3日連続の遅刻……、ホントにもーっ、何度言ったら……」


 朝の点呼を終え、担任が呆れたようにそう言いかけた所でガラガラッ!


「「おはよーございまーす!」」と、ゆうまとさくらはピューーっと勢いよく入って来る。

 が、さくらは、そのまま止まれなくなり、キュキュキュキュー、バンッ! と掃除用具置き場へ盛大にぶつかり、用具もろとも、どんがらがっしゃんと崩してしまう。

 またそのせいでホコリが辺り一面、教室中に視界が見えなくなる程に舞ってしまう。それらダストにケホケホケホと咳き込むクラスメート達。

 と、ホコリによって発生した煙の中からさくらが現れる。


「いやー、なんとか間に合ったぁ! アハハ」


「廊下に立っとれ」



           *          *



「しくしくしく……、何で俺まで廊下に立たされなきゃならないんだが」


 さくらと、先程の騒動に巻き込まれたゆうまは、バケツを両手に持たされ、廊下に立たされていた。


「しょうがないじゃない。ゆうまも遅刻したことに変わりはないんだしさ、諦めて立っときましょ」


 そんなこんなで2人が立っていると「ハハ、さくらの奴、また廊下に立たされてやがるぜ」

「ほぉ~んと、さくらは、勿体ないよなぁ。顔は良いのに頭がちょっとおバカさんだからな~」と、隣の教室から廊下の様子を見ていた他クラスの男子生徒2人がさくらについて話している。

 しかしそれを口に出したことが間違いであった。その刹那、ヒュ~ドロドロドロと、いつの間にか彼らの背後にさくらが。


「なぁ~にを言ってるのかなぁ、えぇ? お2人さん」


 その姿は殺気を放っている。


「う、うわぁ! い、いつの間に後ろに!」


「折檻よ!」


 ポカポカと2人を殴るさくら。

 そんな彼女のお仕置きに男子2人は「うわーん」と泣いてしまう。


「まったく、近頃の男ってば」


 そう言ってさくらが、パンパンと手を払っていると「2人とも大丈夫ー?」と、どうやら朝礼が終わったらしく教室から出てきた保奈美(ほなみ)が声をかけてくる。


「あ! 保奈っちゃん! おはよー、アタシなら全然平気よ」


 涙を流してしゅんとしているゆうまと対照的に先程の騒動を犯しながらもケロッとしているさくら。


「た、確かに平気そうね……。それはそうとしてゆうまも立たされるなんて珍しいこともあるもんねー」


「俺は巻き込まれただけだよ、まったく」


 3人でそのような他愛もない会話をしていると突然、さくらの制服のポケットから御札が飛び出す。それはハラハラとゆうまの方へと落ちてくる。


「あれ? 一体これは何なんだい、さくら」


 その御札に気付き、拾い上げたゆうまは、普段は見かけることがなく、所持することもないその御札に疑問を持ったようで、思わず尋ねる。


「え? あぁ落ちちゃったのね。それは、お祓い用の御札よ。ほらアタシ、神社の宮司の直系の娘だから巫女をやってるでしょ。お兄ちゃんは、宮司の修行や手伝いで忙しいから代わりにアタシが裏の副業でそういう心霊現象のある家なんかからお祓いの依頼や相談を受ける仕事をやってて、それに使う道具よ」と説明する。


 そう、実をいうとさくらは、由緒正しく、地元で知らない人はいないと言われるほどの全国的にも有名な某神社の宮司の直系の家系であり、その出自もあってか並外れた霊力の持ち主でもあるのであった。

 そしてその巫女の力を活かし、彼女は、心霊現象や怪現象に悩む人々、家のお祓いなどをスキマ産業、裏事業として極秘でおこなっており、依頼があれば精力的に出向いているのであった。


「へぇー、初めて知ったよ。さくらってそんなに凄かったんだ……、それにそんなことをしてるなんて! 何だか気になるなー」


 ゆうまは、この手のオカルト話に興味津々である、


「なんならゆうまと保奈っちゃんも来る? 実は今日も依頼が入ってて放課後、その家に行くんだけど。ついてくるなら来てもいいよ」


「え? ホントに! いいの!?」


 ゆうまは食いつく。しかし、一方で保奈美はあまり乗り気ではないらしく「わ、私は遠慮しとこうかなぁ……」と断る。


「よし! じゃあ放課後一緒に行こっ、ゆうま」


「あ、うん、分かった。じゃあ放課後ね」


 ということでゆうまは、さくらの誘いにより、心霊現象を解決するためのお祓い仕事に同行することに。

 しかし、この時のゆうまは、まだ知る由もなかった。後に己が恐怖のどん底へと突き落とされることになろうとは……。



後半へつづく

11月は隔週投稿となります。

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