いつか見た、茜色に。
あの夕映えに傾けて 少しの間
ポケットに突っ込んだ掌を 丸くして
やんわりと 見渡し 空気を吸う―――
手作りのマスク越しに 鮮烈な日射しはなくて
花粉症でもない
ただ 雑踏にまみれた 一人っきりの夕げ
街灯はまだ 告げない その時を
花弁が乏しく まだ咲き誇るを得ない 蕾の頃
ピープーと鳴る 芳ばしい旋律に
手短に 数えたコイン
鳴り響く 昭和の手練れ 色褪せた鉢巻き
「らっしゃい!! どれぐらいッスか?」
「じゃあ……ふたつでおいくら?」
おもむろにはかぶりつけない 焼き芋の唄
春先の Jポップ