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あるりたっ!  作者: 雨宮ムラサキ
番外・3
33/35

いねむりじちょう。

 俺とフィン、どちらが有能かなんて、わざわざ言及するまでも無い。

 フィンだ。

 俺が1時間かけて作るテンプレートを奴は3分で作る。カップラーメンか。

 しかし、そんな彼にも弱点はあった。

 ……勿論、食周り抜きで。

「フィーンーさーん」

「うー?」

 うーじゃ有りませんよ貴方。

 一応俺は理事庶務ということで、1ヶ月に1度の職員会議に出席することになっている。

 何となく守秘義務という言葉を冒涜した行動だと思いはしつつ、それを口にはしていない。

 だって色々政治的な背景とかスパイに万歳な話も出たりするし。

 で、何故上記のうーか。

「起きろよ、終ったんだから」

「……うー……?」

「……まだ寝てやがる」

 職員会議の発言・議事内容なんて始まる前から把握している、という言葉通り、彼は出席しているのに出席していない。

 ネズミを被ったまま居眠りなど不可能だと思われるだろうが、可能だった。

 だってネズミなんだから意見を求められる事も無いし。

「……にじかん……か……なかなかねばったな、れーてるふぉん」

「感心するのは完全に起きてからにしろ」

「あー……よく眠った……」

「貴方まさか、職員会議で睡眠時間取ってるんじゃないだろうな」

「それはない。ちゃんと毎日寝てる」

「フィンの体内時間の、毎日な」

 仕事が溜まると1日が50時間を越える1日だけどな。

 因みにレーテルフォン先生は数学の教師だが、話が長い、また話を長引かせる名人である。

 一番最初に彼を上げる辺り流石はフィンの洞察力、というべきか。

 が、しかし。

「今回はレーテルフォン先生じゃないぞ」

「……違うのか?」

 誰も居なくなった会議室の片づけをしながら、俺は意外そうなフィンに答えた。

「セテアルイズ先生だ」

「珍しい。ということは今回はクラブ活動に関する問題提起が主だったか」

「です」

 先生名を言ったら会議の内容まで判る。

 ちょっと怖いな、その頭どうなってるんだ。

「でも、何で寝るんだよ。ちゃんと起きてればいいだろ」

「この時間帯は眠くなるだろ」

「……学生みたいな事言うなよ」

「仕事はこなしているし、理事長発言が必要な時には起きてるんだからいいんだ」

「……本当、毎回どうやってるのか気になるぞ、それ」

「経験あるだろう? 定期的に問題当てられるからその時になると目が覚めるとか」

「無い」

 俺はいっちゃ悪いが真面目さんだ。

 そんな不良っぽいことしてません―――意外にフィンて不良だったのかもしれない。

 この美麗にして華麗と呼びたくなる美形が不良……

「何を考えてるか知らんが、俺は学生時代は真面目だったぞ」

「うぉっ、読心術!?」

「……そんな訳あるか。お前がわかり易いんだ」

「そんな事、姉さん以外に言われた事無いなぁ」

「基準は姉か! シスコンめ」

「はーい自他共に認めるシスコンですよーっと」

 軽口を叩きながら、会議室の後始末を終える。

 何の指示も受けずにしているこの後片付けは、主に書類の始末や茶器類の片付けである。

 月一の俺が出る時は俺がしてるけどそれ以外は? って聞いたら俺がしてると答えられてしまった。

 最高権力者なのに下働きしすぎ。

「……そうだ、理事室に新しい設備を一つ入れていいってさ」

「そんな予算、あったのか?」

「それこそ、レーテルフォン先生が負けて予算枠が余ったから中立のフィンに回ったんじゃないか」

「それはレーテルフォンに感謝しないとな」

 む、と少し考え込む風情。

 俺が入れさせるとしたらベッドだ。

 理事室にベッドを備え付けさせてしまえば、寝るために移動する必要がなくなるから、もしかしたらフィンも睡眠位はまともに取るようになるかもしれない。

 何しろ、会議中を睡眠時間に充てるような睡眠不足の癖に、三大欲求の中では睡眠欲が一番強い。

 寝ろ。仕事の能率最優先で生理的欲求を完無視するな。

 しかしやはり、彼からすれば最新型のパソコンか何かが欲しいかもしれないし、黙って彼の決定を待つ。

「理事室のシンク周りを一式ラクレシアに変更するか」

「え、調理器具も全部!?」

 思わず目を輝かせて身を乗り出した。

 皇国での俺用キッチンは全てラクレシアにしたのだが、流石に学園の不備にまで文句は付けられないと諦めていたのだ。

 第一、一式ラクレシアにするなんて、とんでもない費用がかかる。

「その位の予算はあるだろう。それに、それが通らないと思うか?」

「……通るな。確実に」

 理事長の不摂生は有名だ。

 ラクレシアの使い勝手のよさを知っている俺は今から歌い出しでもしそうな勢いである。







「……ったく、台所用品で喜ぶなんて、どんな男だ」



「煩いっ!!」







 人の趣味には口出し無用なのだ。

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