逃げる
階段の下にはただただ広いだけの部屋が広がっていた。
「学校の下にこんな部屋が…」
「おい…」
「どうし…た…?ああ、聞こえるな…」
「悲しい声だ」
白弥は広い部屋の奥にある扉を見つけ、「声」も聴いた。その声は悲しい、つらい、そんな思いが込められているような声だった。
扉の向こうへ二人は歩み始めた。
「行くぞ!」
扉が開く。
「だれ……?」
そこには小柄な少女がいた。足元は透けていて死んでいることは明白だった。
「俺は黒桐」
「白弥だ」
少女は座り込んで話始めた。
「私はねこの学校でいじめにあっていたの。両親も、友達も、だれも私を助けてくれなった。ひどいよね、私は何も悪いことなんてしてない。それなのにみんな目の敵にして私が苦しんでいるところを見て楽しんでいるかのよう。いじめにあって辛かった…助けなんてないそう思って、思い切って死んだの。でも、なぜか、意識もあって痛みも感じて死んだはずなのに死にきれなかったのかな」
少女はこの表面上評判の良い学校でいじめを受けていたのだ。それを聞いた白弥は顔を顰めた。
「つらかった?」
「うん、」
「助けは来なかったか?本当に来なかったか?」
「うん、」
「そうか、なんで死んだんだ?」
「つらかったから」
「そうか…」
「埒が明かないな、バカバカしい」
「おい!そんな言い方ないだろ!?」
「あのな?イジメを受けたんだろ?辛かったんだろ?なんで逃げなかった」
「そんなことできるわけなじゃない!」
「なんでだ?耐えれば終わるとでも思ってたのか?」
「それは…」
「いいか?辛いことってのはな死んで逃げれるほど甘くないんだ。乗り越えなくてはいけない。でも、どうしても乗り越えられない壁ってのは絶対にある。イジメなんてのは乗り越えなくていい壁だ。イジメられる側に非はないんだよ。する側がすべて悪い。お前が何もしてないならな。綺麗ごとは嫌いだが死んで後悔してるか?」
「今は、してない。あの日々が続くなら生きている必要なんてない」
「ふーん、本当にそのつらい日々が続くと思うか?確かに人は変われない、でもな環境ってのは常に変わるんだよ。自分にとって最適な場所、居場所を探すことで逃げられたんじゃないのか?」
「…!」
「やっと気が付いたか?辛いことから目を背けるな・現実を見ろそんなことは信じなくていい。つらいなら逃げろ。そしてまた戻って来い。今辛いことは時がたてばなんてことなくなるんだ。大体は…」
「ありがとう」
「え?」
「そうだよね、耐えるなんてしなくていいんだ!ありがとう」
そういうと少女は消えた。
「お前が綺麗ごと言うなんてな」
「まぁ、イジメは嫌いなんだ。助けられなかったからな…」
「ん?何かいったか?
「いいや、なにも」