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神騎士ドラゴウル  作者: 皇 緋尚
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第六話   風と共に来る

 突然、穴が空いた。空間にぽっかりと開いた穴は丸く黒い。向こう側を覗き込むことはできなかった。そんな穴からにゅっと白い物体が出現する。

 それは小さく、短い足であった。人間の足ではない。ふさふさの白い毛に覆われており、足の裏には肉球が存在している。何かしらの動物の足だと思われる。

 足に続いて体、手?、頭の順で現れたそれは、見た目だけならば真っ白な犬であった。さらに犬種を付け加えるのであれば、ポメラニアンであった。

(わがはい)、大地に立つ!」

 二本足でしっかりと大地を踏みしめ、両手?を天に向かって突き上げつつ、どやぁと言わんばかりの顔で日本語を喋る。おおよそ犬とは思えない挙動をしたポメラニアンのような生物である。

 その背中には唐草模様の風呂敷を背負っており、中には何かが入っているようだ。

「さて、と。本体曰く、ここを通りがかった人間が適格者らしいけど・・・」

 人気のない公園の真ん中にぽつんと立った不思議生物はきょろきょろとあたりを見回す。が、誰もいなかった。

「見当たらないのだ・・うな?」

 人間の姿は見当たらなかったが、いくつもの声が耳に届く。ただし、それは人間の声ではなく、いくつもの動物の鳴き声だった。次第にそれが近づいてきて、ほどなくその一団が見えてきた。

 この世界については事前に把握済みの不思議生物は、自分に向かってくる動物の一団に目を向けた。何種類かの犬と猫の群れ。それに烏がたくさん。そして、狼。

「お、狼!一般住宅が立ち並ぶこんな街中に狼なんているのだ?」

 驚きに目を見開く不思議生物に動物達が群がる。

「こら、やめるのだ、お前達。吾の歓迎にしては手荒すぎない?いたっ!痛いのだ!つつくな!齧るな!爪を立てるな!なのだ!」

 どこからどうみても動物の一団に襲われているようにしか見えない不思議生物は、必死に逃れようと試みる。

「あ!それはダメのだ!ひっぱっちゃだめ~!うなっ!」

 風呂敷包みが引っ張られ中身がぶちまけられた。風呂敷に包まれていたのは八つの球。それぞれ色の異なるテニスボールほどの大きさの球だった。それを動物達は我先にと奪い合う。

「こらっ!それに触っちゃ・・くっ!これは、これだけは死守するのだ!」

 手近にあった球を掴んだ不思議生物は自分の身体で覆い被せることで、動物達から必死にガードした。その甲斐あってか、やがて動物たちはどこかへと立ち去ってしまった。

「な、なんとかこれだけは守れたけど・・・ひっく、ひっく」

 手元に残った球は全部で四つ。それらを泣きながら風呂敷に包み、不思議生物は再び背負うと呟く。

「よいしょっと、これからどうすればいいのだ。色々とまずいことになりそうな予感しかしないのだ・・・あ」

 ふと視線を感じた。故にそちらを見る。不思議生物は一人の少年と目が合った。

「あ」

 驚きのあまり呟く少年の行動がしばし止まる。不思議生物はそれを期待の眼差しで見守った。

「見なかったことにしよう」

「いやいや、待って。待つのだ。そこはスルーしてはいけないところなのだ」

 その場を速やかに立ち去る少年を、不思議生物はものすごいスピードで追いかけるのであった。




 第六話   風と共に来る




「はい、回想終了なのだ」

 6月24日、早朝のことである。まだ日が昇る前のこの時間に頑張って起きた尚冴(しょうご)はマサムネから話をちょうど聞き終えたところであった。

「いくつか聞きたいことができたんだけど?」

「なんでも訊くといいのだ」

 むふ~とマサムネは偉そうに胸を張る。こ、こいつは・・・と文句の一つも言いたげな尚冴はそれを飲み込んで、視線にこめた。

「まずは昨日の犬の件についてだ。結局、あれは龍魂(どらたま)のせいだったのか?」

「大変遺憾ながらその通りなのだ。白龍魂(しろどらたま)の『力』が徐々に暴走していって、最初は雪を降らす程度だったのが、最終的にはあの犬の巨大凶暴化となったわけなのだ」

 マサムネは肩をすくめて首を左右に振った。

「なんで暴走したんだ?俺が持ってても大丈夫なんだろうな」

「尚冴は問題ないのだ、吾が選んだ神騎士なんだから。それ以外の人物、とういうか生物・・無機物もか、それらが所持しているとやがて暴走するのだ」

「無機物って、お前・・つまりは龍魂が地面に転がっているのを放置していたら」

「龍魂にもよるけど土とか石とか岩などが暴走して擬似ドラゴン的なものになって暴れるのだ」

「お前、この世界を滅ぼしに来たのか?」

「失敬な!救いに来たのだ!」

「災いの種、振りまいてるだろ」

「龍魂を奪っていった動物達のせいなのだ・・・」

 そう言ってマサムネはあさってのほうを向く。

「それで?行方不明の龍魂は何個あるんだ?」

「残りは三つなのだ。持ってきた龍魂は全部で八つ。手元に残っていたのが龍魂、赤龍魂(あかどらたま)青龍魂(あおどらたま)黄龍魂(きどらたま)の四つで、昨日取り戻したのが五つ目で白龍魂」

 マサムネは順番に龍魂を取り出して置いていく。

「残り三つか。そんなに多くはなかったか」

 少しだけ安堵の表情を見せる尚冴。しかし、すぐに厳しい顔つきなるとマサムネに言った。

「残りの龍魂の行方については調べてるんだろうな?」

「もちろん、調べているのだ。昨日の件を鑑みて、可及的速やかに見つけ出さないとマズい気がしてきたのだ。というわけで、これから捜索に行ってくるのだ!」

 マサムネはお~!といった感じで右手を元気に突き上げる。

「がんばれよ、マサムネ」

 さらりとした口調で応援する尚冴の顔をまじまじと見詰めるマサムネ。

「え、尚冴は?」

「学校とかあるし、暇なお前が探すのは当然だろう」

「ゲームで忙しいの間違いじゃないのか?」

「そうとも言うな」

 悪びれもなく、尚冴はこくりと頷いた。

「隠そうともしないとはいっそ清清しいのだ!わかったのだ、探しておくのだ」

 ぷんすかと怒りをあらわにしつつ、マサムネは尚冴の部屋の窓から外へと飛び出していった。

 その姿を見送りつつ、尚冴は呟いた。

「さて学校はサボることにして、今日発売のゲームでも買いにいってプレイするとしよう」

 制服ではなく私服に着替えてでかけるのであった。




 朝の6時から営業開始しているファーストフード店で朝食をとりつつ、尚冴(しょうご)は一時間ほど暇を潰した。7時になれば、なじみのゲームセンターが開店するからである。

 そうして、開店直後にやってきた尚冴は迷う事無く一つの筐体の前に座ると、すでにポケットに複数枚用意していた百円玉を投入。ゲームを開始した。

 そのゲームは巨大な鎧を操縦して戦う 二対二の対戦型アクションゲームで、アニメが原作のものだ。対人戦だけではなく、十三ステージからなる原作の追体験ができたり、原作のif、オリジナルなど、いくつかのコースが用意されているアーケードモードがある。

 時間を潰すことが目的の尚冴は対人戦ではなく、アーケードモードを選択する。何度も見たムービーや演出をスキップすることなく、ゆるゆるとプレイしていった。

 あと1回アーケードモードをクリアすれば、いつもゲームを購入している店が開く時間となる。最後になるであろう百円を投入して使用する鎧とプレイするコースを選択して制限時間が切れるまで放置する尚冴。

 合間で買ってきていたペットボトルのお茶を飲みつつ、ブリーフィング画面を眺めていると、不意に声をかけられた。

「協力プレイしてもいいかな?」

 視線を向けると一人の少女がにこやかに微笑んでいた。艶やかな長い髪がさらりと揺れる。ブラウスの胸元が開けられており、大きな胸の谷間がばっちりと見える。

「ど、どうぞ」

 声の主が美少女かつ露出が高めだったため、動揺する尚冴はどうにか一言だけ返すことができた。

「ありがと♪」

 チェック柄のミニスカートをひらひらとさせつつ、隣の筺体に少女は座った。

「これ、終ったらどっか行かない?」

 100円を投入した少女が鎧を選択しつつ、尚冴に問いかけた。

「えっと、申し訳ないのですが、予定がありますので」

「え?でも、尚冴は制服着てないよね?学校に行くわけじゃないでしょ」

「ゲームを買うつもりで、店が開くまでの暇つぶしでここにいたんで・・・あれ?なんで俺の名前、知ってるの?」

 警戒する尚冴に少女はにっこりと笑い、

「なんか犬?みたいなのにそう呼ばれていたでしょ」

「え・・・」

 絶句する尚冴は思う。

(認識阻害とは一体。まぁ、マサムネの奥義と思えば納得もいくか)

「その辺の事も含めてお話したいなぁって♪」

「え、えっと・・・」

「じゃあ、決定ね。これが終ったら、二人きりになれる場所にいきましょ」

「その前に、ゲームを買ってからでもいいですか?」

 ブリーフィングが終了していよいよ第一ステージが開始される。

「げーむ?ふふっ、いいよいいよ。まずはお買い物からだね!デートっぽくていいね♪」

 上機嫌で笑う少女を横目に、尚冴は迫り来る鎧の攻撃を避けて反撃するのであった。



「ようやく二人きりになれたね」

 ゲーム購入後、尚冴は少女と密室で二人きりの状態になっていた。

「早速いれちゃう?それともお話してからにする?」

 にっこりと微笑みかけてくる少女に、尚冴はおずおずと口を開く。

「その前に、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「そういえば、まだ名乗ってなかったね。あたしは風薫(ふうか)菫崎(すみれざき) 風薫(ふうか)よ。よろしくね、(まとい) 尚冴(しょうご)くん♪」

「よろしくです」

「それで?どうするの?あたしが先にいれちゃってもいいかな?」

 部屋の隅に置かれているタブレットを手にとった風薫が選曲を始めた。そう、今、尚冴たちがいるのはカラオケ屋の一室。先ほどから大きなテレビ画面には宣伝などが延々と流れている状態だった。

「色々と気になって仕方がないから、話が先でよろしいですかね?」

「しょうがないにゃ~。そんなに慌てなくてもいいのに」

 タブレットから顔を上げた風薫が少しむくれてみせる。

「あの喋る犬はなんなのかな?」

「犬は喋らないと思うな」

「マサムネだったよね、あの犬の名前。一人称が吾で、語尾がなのだ、喋ってたよね?」

 風薫は尚冴の隣に座りなおすと、顔を覗き込んできた。

「返答いたしかねます」

「む~、そういうこと言うんだ。じゃあさ、いつからあの犬を飼ってるの?」

「記憶にございません」

「これくらいは答えてくれてもいいじゃん」

 尚冴の腕をぐいぐいと引っ張って抗議する風薫。何度か繰り返していると風薫の動きが一瞬止まった。話してもらえるかなと思った尚冴は、自分の腕に柔らかな感触のものが押し付けられるのを感じた。

「ねぇねぇ、教えて♪」

 風薫が尚冴の耳元で囁いた。

「何をでしょうか?」

「喋る犬、マサムネちゃんにつ・い・て。それから――――」

[うな~!事件なのだ!]

 風薫の言葉を遮ったのはマサムネの声だった。より正確に言うのであれば、マサムネからの着信用に設定されていたマサムネの音声である。これは尚冴が設定したわけではなく、ゲームを夢中になってプレイしている尚冴に確認を取ったマサムネが設定したものだ。

 故に、尚冴はひどく驚いた。

「これ、マサムネちゃんの声だよね?」

 風薫の質問で我に返った尚冴はやんわりと彼女の腕から逃れた。

「急用ができたから俺はこれで失礼するよ」

 風薫の返答を待たずに尚冴は部屋を出る。外に移動しつつ、マサムネからのメッセージに目を通すのであった。




「まさか学校をサボっているとは思わなかったのだ」

 尚冴(しょうご)を乗せたマサムネは呆れ半分、怒り半分といった具合に呟いた。

「まぁ、学校に行くよりは近かったからまだいいけど」

「だろう。なんとなくそんな気がしていたんだよ」

「吾が龍魂(どらたま)捜索している間に遊んでいたことに対する怒りはまだ収まっていないのだ」

「そんなことよりもだ」

「いや、そんなことよりもって・・・」

 まさかの反論にうろたえているマサムネに尚冴がずばりと言い放つ。

「お前が喋ってるの見てた人がいたぞ、認識阻害できてるのか?」

 その言葉にマサムネがぽかんと口をあけて呆ける。しばしの時間が経過して、ようやく内容を租借して理解したらしく、大きな声を上げる。

「そんなばかな!我輩の認識阻害は完璧!完璧?だぶん・・おそらく・・・きっと、大丈夫なはずなのだ!」

「グレードが随分と落ちたな、おい」

「そ、それは後で確認するのだ。それよりもあれなのだ!」

 ふらふらとうろつく化物を指差しつつ、マサムネが地上へと降りる。着地と同時に尚冴がその背中から飛び降りた。

「あれは何のモンスターなんだ?半魚人?」

 全身が鱗で覆われており、頭部は魚と人間を足して二で割ったような顔をしている。二足歩行でゆっくりと移動しており、手足には水かきと思われるものが付いていた。

「半魚人で正解だと思うのだ」

「ふらふらと歩いているみたいだけど、何してるの、あれ?」

 二人の背後からそっと近づいてきた風薫(ふうか)が尋ねた。

「よくわからないのだ」

 反射的に答えたマサムネは思った。おや?誰の声なのだ?、と。尚冴とは似ても似つかない可愛らしい声の主に視線を向けた。

「え、誰なのだ?」

 風薫は戸惑うマサムネを抱き上げる。

「かわいい♪ねぇ、尚冴?やっぱり喋るじゃない、マサムネちゃん」

「尚冴!?」

 この人、誰なのだ?と目線で問いかけてくるマサムネに、尚冴はため息混じりに答えた。

菫崎(すみれざき) 風薫(ふうか)と名乗る女性で、お前が喋っているのを見た人がいるってさっき話したのがこの方だ」

「なんと・・・」

「菫崎さん、どうやってここに?つけられた覚えはないんだけどな」

「堅苦しい!堅苦しいよ、尚冴。密室で二人きりで過ごした仲じゃない。風薫でいいよ♪」

「え!密室で二人きりって・・・どきどき」

「一緒にカラオケに行っただけだ。どんな想像をしとるんだ、お前は」

 煽るマサムネの頭頂部に尚冴は軽くチョップを叩き込んだ。

「で?風薫はどうやってここまで来たんだ?」

「あれ、追わなくていいの?気付かれちゃったみたいよ」

「え!」

 ちょいちょいと風薫が指差す方を見ると、半魚人がわたわたとその場から逃げるように走り出していた。

「尚冴!追いかけるのだ!」

「わかってる!」

 急いで半魚人を追いかけていくと、大きな川が流れる河川敷へと辿りついた。半魚人はその川に架かる橋の中央あたりまで進んでいる。追いついてきた尚冴達に一瞬だけ視線を向けた後に、橋からぴょーんと飛び降りた。

「どうやら水辺を探していたようなのだ」

「まぁ、半魚人だしな。考えてみれば、当然か」

 ちょうど半魚人が飛び降りた辺りまでやってきた尚冴達は川を覗き込んだ。いつもならば変身して追いかけるところであるが、風薫のの前で変身してもいいものかと悩んでいると、

「変身しないの?」

「あ、それも知ってたんだ」

 風薫の言葉にがっくりと脱力する尚冴。

「なんかもう全部バレているようなのだ。こうなったらもう気にせずにちゃっちゃと倒すのだ!」

 マサムネは青龍魂(あおどらたま)をぽ~んと尚冴に向かって放る。

「わかったよ。変身!」

[ソウルリンク:ブルードラゴン][フォーム:ウォーターアーマー]

 青い粒子のドラゴンが尚冴の身体を包み込み、青をベースとした流線型の鎧に姿を変えた。

「これで水中戦ができるってことでいいんだよな?」

「いいのだbふぁいと、お~!なのだ」

「尚冴、ふぁいと、お~♪」

 マサムネと風薫の声援を浴びつつ、尚冴は橋から飛び降りた。

「見つけた!」

 水中を悠々と泳いでいる半魚人を発見した尚冴。同時に半魚人も尚冴に気が付いた。先ほどまではなかった槍を持って半魚人が突撃する。

「キェェェェェェッ!」

 するどい一突きではあったが、尚冴はそれをさらりとかわしてみせた。

「確か、こっちも同じ武器だったな」

[ウェポンリンク:ブルードラゴン][ランス]

 尚冴が腕輪を操作して武器を呼び出すと、一振りの槍が出現した。それを握り締めて、お返しとばかりに半魚人に突きを繰り出す。反応しきれずにかわし損ねた半魚人の銅を穂先が掠める。

「コノッ!」

 かすかなダメージに顔をしかめた半魚人が、今度は槍で横薙ぎにする。しかし、尚冴を捉えることはできず、逆に大きく隙を晒すこととなった。

 尚冴は槍の絵で半魚人の胴体を二度、三度と打ちつける。怯んだところに槍の穂先で一突き。今度は見事に命中して、右肩を貫いた。

 苦悶を浮かべる半魚人めがけて槍を横なぎに振るい、バットでボールを打つ要領でそのまま振りぬいた。結果、半魚人は川の上空まで打ち上げらてしまった。

 空中の半魚人を追いかけて尚冴が浮上する。そして、大きくジャンプをして半魚人と同じ高度に到達したところで蹴った。川岸に向かって、飛び蹴りの要領で半魚人を蹴り飛ばした。

 川岸に叩きつけられた半魚人は、その衝撃でごろごろと転がった。すぐには動けず、のろのろと立ち上がろうとしていた。その間に尚冴は水面に着地すると、まるで地面の上にいるかのごとく、水を蹴って川岸まで跳躍した。

「尚冴!これで決めるのだ!」

 半魚人が陸に打ち上げられるのを見ていたマサムネは橋から降りていた。川から戻ってきた尚冴に黄色の龍魂を投げた。

「わかった!」

 右手で黄龍魂(きどらたま)をキャッチした尚冴が魔力を流し込む。

[ソウルリンク:イエロードラゴン]

 腕輪から音声の後に待機音が鳴り、黄龍魂を握りつぶす。

[チェンジ:サンダーアーマー]

 黄色い粒子のドラゴンが出現して、尚冴の鎧に変化する。黄色をベースとした尖った印象を受ける鎧だ。

[ウェポンリンク:イエロードラゴン][アックス]

 出現した両手持ちの巨大な斧を握り締め、ようやく立ち上がった半魚人に向かって尚冴はそれを振るった。

「グガァァァッ!」

 かわす素振りすらみせずに半魚人はまともに喰らって吹き飛ぶ。

[フィニッシュリンク:イエロードラゴン]

 追撃の手を止める事無く、半魚人との間合いを詰めつつ、尚冴は必殺技を発動させた。

[ドラゴニック・サンダー]

 振り上げた斧に雷光が宿る。それを為すすべなく見上げる半魚人に向かって振り下ろす。半魚人は爆散して黒い煙を撒き散らした。それが霧散した後には一人の男性が無傷で倒れていた。

「救急車は呼んだのだ。早く立ち去るのだ」

「おう・・・あ」

 風薫の存在を思い出して尚冴が橋を見上げる。

「またね♪」

 声は届かなかったが、口の動きで風薫がそう言ったであろうことはわかった。尚冴が理解してくれたことを察した彼女は、小さく手を振ってから去っていく。

 それを見送りつつ変身を解除した尚冴はマサムネの背中に乗った。

「おい、マサムネ、認識阻害大丈夫なんだろうな?」

「大丈夫なのだ、あの娘が特殊なせいだと思うのだ」

「特殊?」

「まだはっきりとはいえないけど、なんか普通の人間と違うような、違わないような」

「責任転嫁しようとしてる訳じゃないよな?」

「・・・違うのだ」

「なんだ、今の間は?」

 あーだこーだと言い合いながら一人と一匹は家に帰るのであった。

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