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警視庁の特別な事情〜JKカエ優雅な日常を取り戻せ〜  作者: 綾乃 蕾夢
次までのあと1歩

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37。彼女が交番を訪れた記録

 ジュニアのこの笑顔は確信がある時の顔だな。


「イチの記憶いい線いってるよ。

 そもそも今回の誘拐事件はちょっと特殊だったんだ」

 人差し指を1本立てたジュニアの指先に自然と視線が行く。


「リカコをはじめ3人の女性の誘拐、誘拐未遂。

 カエを狙っている足エロおねーさん一味。

 この2件は同一人物、同一の車種の目撃があることから、同じグループの犯行の可能性が高い。


 でもね。新城さんの件はこれに該当しなかった」


 うん。犯人は分からないけど、車はシルバーの軽自動車だったし後ろ姿もクリアしてなかったもんね。


「リカコはあの陸橋で不審者にったあと、あの陸橋を1人で渡ることに抵抗があったんでしょ?」

 インカムの中に話しかけたジュニアの声に、リカコさんの小さく吐いた息の音が耳に触れる。


『すごく嫌だった。

 カイリがしばらく護衛してくれていたし、できる限り1人にならない時間帯を選んで登下校したけれど、それでもやっぱりしばらくは陸橋を渡る度にふるえや動悸どうきひどかったわ』

 顔が見えない分、耳に触れる声のトーンにリカコさんの心情が見えるような気がした。

 そんなことになってたなんて知らなかった。

 見回した視線がイチの心配そうな視線とからむ。


「たぶんそれが普通の反応なんだよね。

 ひどいと、外に出ることも出来なくなる人もいるみたいだし。

 僕達はつくづくそういうことにうとくなっているんだなって。リカコに言われて初めて気がついたよ」

 そっか。ジュニアの声をあたしもしっかりと心に止めて置こう。

 そう言えば、深雪も他校の生徒にからまれたことが原因で一時期病院に通う羽目になってたことがあったもんね。

 これから先も被害にう「誰か」を少しでも分かってあげられたらいいな。


一先ひとまず新城さんの件からカタをつけようか」

 チラリとイチを見たジュニアは軽く瞳を伏せると、インカムの位置を調整するように手を触れた。


「この件の始まりは陸橋での誘拐未遂だ。

 シルバーの軽自動車、マスク姿の男、現場で新城さんの口からなんて聞いたか覚えてる?」

 ジュニアの視線に答えるように、イチが口を開く。


「『助けて』だ」


「うん。僕もそう聞こえた。

 で、そこから『新城さんのイチくんラブラブ大作戦』が開始されるんだけど」

 いつも通りの楽しそうな顔がにぱっと笑う。


「ラブラブねー」

 ちょっと意地悪したくなったあたしの声と視線にイチのイヤそうな顔が帰ってくる。


「彼女をかばうギリもないからぶっちゃけるけど……僕、イチとカエを別れさせる手助けをしろって誘われたんだよね」


「……え?」

 一瞬意味が理解できなくて聞き返したあたしに、肩をすくめるジュニアが話を続けた。


「2人が別れたら、イチが自分と付き合わない理由わけがないんだってさ。

 その時に言ってた一言が妙に引っかかった。


『人を使えばどうとでもなる』だったかな。

 自分は手をくださないってことは、誰かにヤらせるってことだ。

 共謀きょうぼうは持ちかけられたけど僕はヤらない。特別目立つ取り巻きがいる訳じゃない。

 じゃあ誰のことなのか?」

 ジュニアちょっと怒ったような視線がイチからあたしへと移動する。


「そしておかしいと感じたのは映画館の1件だ。

 あんな目にあった場所を通ってノコノコ出かけていくとは考えにくい。

 多少場馴れしていたはずのリカコでさえこんな状態だったのに、随分ずいぶんはがねメンタルだなって」

 そうだ。映画館帰りのファミレスでジュニアと話した時にも気にしてた一件。

 あたしが思い出したことに気がついたのか、こちらを見たジュニアの瞳が小さく笑う。


「でもでもそんなことないよ。

 映画の後のフードコートで話した時は、怖いからイチに送って欲しいって言ってたもん」

 悲しそうな顔してたもん。

「それは残念ながら、イチに送らせるための方便ほうべんだと思うよ」

 イチを見たジュニアの視線にムスッとしたイチが首を縦に振る。


「帰るつもりはないような発言もあったな。

 強制的に送ったけど」

「そうなの?

 あたしがだまされた系?」


「見事に引っかかったってことかもね。

 で、カエがそのことを話してくれたことと、新城さん自身が誘拐未遂にったことをれ回っていたこと。そこでもう1つ疑問が出た。

『この人は本当に誘拐未遂に遭ったのか』」


 思わずあたしの目が丸くなる。

「え。根本的過ぎな指摘」

「でしょ。

 だから調べたよ。新城さんが誘拐未遂に遭った日の駅前交番の調書」

「新城さんを連れていった交番か」

 イチも少し混乱したような声で問いかける。


「うん。

 連れていっただけ。

 前にも話したけど、パニクっているなら調書の作成に付き合おうかと思ったけど、彼女に拒否られた。あの件。

 交番のパソコンと、森稜署しんりょうしょのパソコンにもアクセス(バッキング)したんだけど、


 彼女が交番を訪れた記録は一切見つからなかった」


「ええ? どういうこと」

 眉をひそめるイチを見ても答えは出ない。


『つまり調査の結果、彼女は交番を訪れられない理由があった。

 新城しんじょう杏果ももかの誘拐は狂言きょうげん誘拐だったと思われるわ』

 インカムを通すリカコさんの声がズバリと切り込んできた。

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i518214    ★お読みいただきありがとうございます★
― 新着の感想 ―
[良い点] 4月6日21時33分現在の最新話まで読ませて頂きました。 カエ、イチ、リカコ、ジュニア、カイリそして学校の面々など癖のあるキャラたちが沢山出てくる面白い作品でしたね。なにより、キャラの発言…
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