46。敵意と警戒
寮のリビングには、リカコさんを除くあたしたち4人が顔を揃えている。
ジュニアが当面の住まいに探してくれたのは寮の入っているマンション内の別の部屋。
オートロック付きだから移動もあんまり制限されないし。
巽さん的に手痛い出費だったんだろうけど、楽でいいな。ここ。
「さてと。そろそろ時間かな」
仕事用のリバーシブルの黒いツナギも、今はひっくり返してカラフルな色をみせている。
青いツナギを着たカイリが室内の壁掛け時計に目を向けた。
時間は午後10時を過ぎたところ。
紫色のツナギを着たイチ、緑色のツナギを着たジュニアは伸縮性の警棒やそれぞれの装備を再度確認。
ジュニアの背負う大きなデイパックは、相変わらず何が入っているのかよくわからない。
「今日の内偵が終わったらとりあえずひと段落だよね」
ソファの上にあぐらをかいて、みんなを見上げるあたしに視線が集中する。
「ああ。そうだ、この前言ってた気分上げるぞ大作戦。暇なら作戦Cくらいまでは考えておいてくれよ」
ぽすっ。っとイチの手があたしの頭に触れていく。
「ん。Fくらいまで考えとく」
「選別がめんどくさいよ」
苦笑いのジュニアにカイリがあたしたちを見回した。
「あれ。なんか企んでるな。俺だけ仲間連れか?」
あたしたちの視線がパパッと絡む。
『内緒』
「リカコさんにも言っちゃダメだよ」
にこっと笑うあたしにカイリはやれやれと言った顔を見せる。
「カエも部屋に戻るだろう? 一緒に出よう」
そう言ってカイリはスッと拳を突き出す。
「最近ゴタゴタ続きだからな、リカコが報告書に無駄な記載をしなくて済むように気合い入れて行くぞ」
4つの拳がコンッと合わさった。
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夜の闇が、黒いツナギを着て屋根の上を走り抜けていく2人の姿を隠してくれる。
消え去りそうな細い月とまばらな星が、かろうじて足元を照らす。
倉庫街の街灯は、入り口を照らし出しても屋根の上には無頓着だ。
びっしりと建ち並ぶ倉庫の屋根を伝ってきたが、そろそろ終点らしい。
屋根の上から見下ろすと、少し離れた駐車スペースに、大型のトラックやトレーラーとともに真っ黒なバンが一台停まっている。
車を確認し、2人は顔を見合わせて小さくうなづいた。
「ジュニア。車両確認、回収頼む」
インカムにカイリの声が入る。
『あいあい。お帰り。今日はまっすぐおうちに帰れそうで良かったよ』
ジュニアの安堵を含んだ声を聞きながら、イチは小さな鉤手の付いたロープを取り出した。
屋根の縁へ掛けるとそのままロープを下へ投げ下ろし、足をかけ降りる体勢に入る。
「イチ」
抑えたカイリの声に敵意と警戒を感じて、その姿勢のまま表をあげた。
同じような容姿に、黒い服。
月明かりの照らすその顔にイチの口から苦々しく声が漏れる。
「キバ、アギト!」




