あとは野となれ何とやら
投稿予定日をかなりすぎました。ごめんなさい!
今話の辻褄を合わせのために第92話
これはしばらく~この話し方に後程、一門の龍族に好印象を与えることとなる。
を削除しました。
前回まで
ミノル無事にドナクレア等に戻ってきて今までの経緯を説明。
「俺魔王になる」宣言にブチ切れるリュセフーヌ。
「お前は勝てない」の言葉にキレるミノル。
――ミノル視点――
リューから濃密かつ膨大な魔素の流れと魔力の放出を感じる。
時空魔法と防御系、と俺は彼女が発動する前に読んでいた。
うん、龍族特有の能力である"先読み"はしっかりできているし、"身体強化"は一瞬で全身に浸透する。
俺が負ける?
能力も種族としてもランク下の"魔龍種"に?
リューは何を言っているんだ?
きちんと魔素の制御や体術の鍛錬も怠らずにやってるのに?
お前やアディ、セレさん、パーパド殿下達や様々な人と手合わせや魔法の訓練は欠かさずやってきていたんだ。
ひけらかすつもりもないが、皆、俺の努力を認めてくれているじゃないか。
頑張った結果が実を結んで、バラバラだった古龍が纏まって来た状況になっているじゃないか!?
あいつらがやった越境門だって、頑張って転移門の設置まで漕ぎ着ける事だって出来たじゃないか!?
ああ、だんだん腹が立ってきた。
なめるなよ!
弱いだと?ああ、確かにリューよりは弱いだろうよ! それは俺だって自覚しているし、古龍は生きとし生けるものの最強種である事を念頭に驕らず、怠らずに今まで頑張って来たんだ!
「これはすごい…ドラゴニュート種の様なパワーと人龍種のような関節の可動域を持つ魔導これは素晴らしいですよ、ミノル殿!」
ほら見ろ!
シャムロックさんだって俺が開発した魔導式を褒めてくれてる!
出来得る限りの事をやってきた。貢献もして来たんだ!
そう思ってリューを見たが、彼女はそれがどうしたとばかりの顔をしていて腕を組んで俺を見ていた。
この時俺はドヤ顔をしていたと思う。
「そしてヌシには勝てぬ」
この一言と彼女の態度に落胆してしまったのか表情筋が脱力して行くのを感じる。
絶望したかのような顔をしていたのだろうか?それとも冷めた顔でもしていたのだろうか?
ここに鏡でもあれば、自分の今の表情を見てみたいと、ふと思ってしまう。
「俺が増長しているとでも言うのか?」
この言葉を発したと同時に腹の奥底から怒りが更にこみあげてくる。
人間から龍になってしまった状況に驚きもしたし、地球での扱いに「なぜ俺が」という思いも正直あった。
――仕方がない。
それより前を向いて頑張って行くしかないと思っていた。
起きてしまった事を悔み、恨んでも始まらないし、素直に受け入れて前を進もうと思っていた。
それが俺の矜持であり、それの生き様だと今も思っている。
リュセフーヌ――お前は何様だ?
誰のせいで俺が苦労しているんだ!?
誰がこの体にした!?
誰がここへと連れてきた!!!
こいつを一発でも殴らなければ俺の気が収まらん!
そう思うと拳に力が入り、自然と体が臨戦態勢へと移っていく。
「さて、のう。空間拡張で1km×1kmの拡張空間の上、妾の結界魔導で囲っておるから、互いに全力で戦うがよい―――それでは始めっ!」
リューの掛け声とともに、俺は腰を落とし半身に構え、後ろに引いた右足に力を込める。
シャムロックは飛び出し、まるで瞬間移動でもしたかのように、俺の目の前におり、既に右腕が俺の顔面を捉えようと振り下ろされていた。
ぞくりと背中からくる寒気を覚えながらも、更に身を屈め地面を蹴り、シャムロックの左脇を擦り抜ける。
俺が跳んだ先はリュー。
アニメのように地面スレスレを飛び、リューの目の前で身を翻し、そのまま左足は顔面、右足は腹部を捉え手応えではなく、脚応えを感じると、膝を曲げシャムロックに向かって跳び出そうと足に力を籠める。
「な!ひめさ―――」
脇を擦り抜けた俺を追おうとしたシャムロックが声を上げる。
リューを踏み台に水平三角跳びをすると、その体勢のまま肘打ちの姿勢をとると彼は俺に気付き両腕をクロスし防御態勢をとると跳び込みエルボーを受ける。
そのまま3~4m程地を擦りながら後退し、俺とシャムロックは間合をとるため離れる。
俺とシャムロックは、牽制しつつも蹴り飛ばされたリューの方向へ軽く視線を向ける。
リューは俺から渾身の蹴りで20m位の軌跡を残した先にうつ伏せで倒れていた。
蹴られた勢いは凄まじかったらしく、地面は抉れ、途中でバウンドしたのか転々とした軌跡を残していた。
「きっ、貴様!姫様に何ということを!私と貴様との試合のはずだ!なぜ姫様へ攻撃を加えた!」
俺は構えを解き首をコキコキと鳴らしながら答える。
「ああ゛??ムカついたからに決まってるだろうが」
シャムロックに先程までと雰囲気が変わり、殺気が籠ったオーラを放っていた。
その殺気に俺は構え直したが、既に視線の先には姿はなく、側頭部に衝撃を感じる。
「がっ!」
「死ね、下郎」
俺はよろめきながらも、攻撃の手を緩めようとはしないシャムロックを視認すると、防御の構えをとった。
シャムロックは続け様にハイキックからの回し蹴り、拳からの連打を繰り出してくる。
俺もピーカーブースタイルで彼からの攻撃を凌ぐが、衝撃がなぜか体を突き抜けダメージが勢いよく蓄積されていく。
このままでは――と距離をとろうとした瞬間、腕をとられそのまま地面に叩きつけられ、その衝撃によって肺の空気が吐き出されてしまう。
「かはっ!この!」
腕を取られたままグラウンドにに持ち込まれると、ばきりという音と共に左腕に鋭い痛みと視界に稲妻のようなものが走る。
「があああああ!」
俺は、あまりの痛みに叫んでしまうが、次の瞬間左足に右腕と同じような衝撃が走る。
「――っ!――っ!!―――!!!!」
俺は声にならない叫びを発しながらも、痛みの元を辿ろうと顔を上げたが、シャムロックは大の字に寝転がる俺の上に、マウントポジションを取っており、左を振り下ろそうとしていた。
「――っ!いつのまにっ!!ごふ!」
このままではタコ殴りにされると思い、防御を取ろうとしたがシャムロックはマウントポジションを取った時に、俺の両腕を防御姿勢を取れないように、両足でホールドしていた。
容赦なく顔面へと降り注ぐ拳に段々と意識が朦朧として行く中、何故強靭な肉体と強固な防御力を誇る鱗を貫通して衝撃が肉体の芯にまで届くのか考える。
ああ、八卦か気功みたいなものか、と――
しかし、本能と云うべきなのだろうか?
身体に"治癒"の魔導が巡ってきて、俺は意識を取り戻す。
「っ!このくそったれがあああああああああ!」
俺は叫びながら身体から無属性の魔力を爆発させ、強引にシャムロックを押し剥がした。
この時シャムロックが咄嗟に俺の右腕を掴んだのか、吹き飛んだシャムロックの左手には引き千切れた俺の腕があったのを見たが、怒りからの脳内麻薬が効いているせいか、痛みはさほどない、あと何か視界が変だ。
視界を確かめてみると、左側が見えない。
血が目に入った事で遮られているのではなく、完全に潰れているようだ。
よく見ると地面に眼球が転がっているのが見えた。
立ち上がろうとするが左足で踏ん張る事が出来ない。
おおう、大腿骨が飛び出ているではないか。
普通は関節じゃね?どうやったら寝技で大腿骨が複雑骨折するするのやら――
俺は"治癒"が左足を治してくれるまで、シャムロックが再び飛び掛かって来るのを警戒する。
ああ、左目と右腕は欠損だから"再生"を展開しないと駄目か。
"再生"は展開に魔法陣展開しないとできないから隙ができるな。
仕方がない、痛くはないのでそのまま戦うとしよう。
そう思ってシャムロックを見ていると、俺の腕を見ると少し驚いていたようだが、後ろに投げ捨て再び飛び掛かろうと構え直す。
おいおい、俺の腕をぞんざいに扱うんじゃない!
どうやら俺も冷静になってきたようだ。
先程より視野も広くなっていたので、冷静になったのかと思ったが、腹の中のムカムカは収まるどころかまだ足りないとばかりに、どす黒い感情へと変わりながら全身を駆け巡ろうとしている。
「姫様のいる御前試合で何たる愚行。貴様は許さん!たかが人族あがりの分際で――いや、人族だからこその愚かさであるな!」
そう言って更なる殺気をシャムロックは俺に向けてくる。
「おう、ついに出たな本音が。だがな、俺は自ら望んで古龍になったんじゃねえ!たかが人族だと?人間なめるなよ!」
事情も知らない癖に何言ってやがると思っていると突然、全身のうろこが逆立ちしそうな位の殺気が周囲に湧き上がる。
殺気の出所を確かめると、蹴り飛ばされてた入れていたリューがゆっくりと起き上がって俺を見ていた。
リューは額を切ったのか血を流していて、鼻血も出ているようだ。
あまりの殺気にシャムロックはリューを見ながら固まっているようだな。
「ミノルゥ!いい度胸じゃ!覚悟はできておろうな!」
おお、怒ってる怒ってる。
「覚悟もなにもねえな!俺は努力をした。いかにこの戦況を打破しようかと頑張ってきてこの扱いか!ああっ!どうせ俺は紛い物だろうさ!お前達の勝手に付き合わされ!何千、何万の死体を見て気がおかしくなりそうになってもお前や仲間たちが支えてくれていると思っていたからこそ、歯を食いしばってここまでこれたんだ!それで戦えだ?勝てないだ?うまく行き過ぎた?ふざけんな!」
「ミノル?おヌシ何を言っておるのじゃ?」
ああ、自分でも何言っているのか支離滅裂だな。
――もういいや。
そう思った途端に身体に駆け巡る黒い感情がさらに増大し、体の中をグルグルと勢いよく廻り始める。
俺はその感情――破壊衝動に身を任せると身体が魔素を使ってソレを増幅させる。
「もう何も心ようシナイ!ナカマナンテイラナイ!!」
「――っ!いかんミノル!その衝動に身を任せてはならん!そのままでは"狂化"してしまう!」
リューが何を言っているのか聞こえない。
俺はそのまま体が黒い靄に包まれながら、体中から力が溢れ出し視界が赤くなっていくのを感じたのだった。
初めは「俺TUEEEEEE!どんなもんだ!」という設定で行こうと思いましたが、なんかツマンネと思い書き直し。
次に「ふう。何とか勝てた。でもなんか周囲が俺を認めていない雰囲気…でも次いってみよ~」を書いたがこれもなんかしっくりこない。
散々書き直した挙句、今の雰囲気に持っていきました。ちょっと前々話までトントン拍子だった事に、「ちょっと主人公図に乗ってね?」って思って決定とさせていただきました。
とりあえず、最後まで読んでくれてありがとうございます。
次回投稿は10/18昼までに投稿します!!




