宣戦布告
お待たせしました。
前回まで―――
ミノルと仲間たちがフィーグルに来ました。
メーフェから転移門の設置の協力を貰っていざドナクレア島へ。
ミノルの無事を知ったリュセフィーヌは大喜び。
そしてリュセフィーヌはミノルと再会したのだった。
ドナクレア城会議室でミノルは困惑している。
見た感じ、他種族仕様にできている会議場は一席が大人4人分はあろうかという席が30席あった。
中央に3席、それを囲むように扇形の席が並んでおり、ちょっとした市議会の会場を思わせる形状となっている。
その中央席の真ん中にリュセフィーヌ、右隣にエレーナ、左隣にレダ。
中央席向かって右側には未菜やオースティンと言った地球転移組が座り、左側にはアリステリアとディーフェリア、ほか何人かの鎧を着た獣人族や龍人族と言ったいかにも脳筋じみた武官と軍務官ローブみたいな服を着た華奢な龍人とウサギの耳を持った兎人族など文官や政務官が座っていた。
ミノルはというと中央席目の前に石でできた座布団の様な物体に正座させられ、鉄製のやたらゴツい首輪とリュセフィーヌの手まで伸びている鎖。
身体は手は前に出ているのだが、強制的に正座を余儀なくされるような見た事のない縛り方で縄で縛られていた。左側では何やらひそひそとミノルを見ながら話をしており、右側では未菜が「ミノルおじさん」と悲壮な表情をしていた。
リュセフィーヌは半目の座った眼でミノルを見ており、何も声を発することはなくただ見ていた。
―――なぜこうなった!?―――
ミノルとリュセフィーヌの熱い抱擁の後、ミノルはレダに捕縛されこの会議室へと連行される。
「あの…リュセフィーヌさま?」
「…なんじゃ?」
「なぜ私は縛られているのでしょう?」
「…逃げないためじゃ」
「oh……」
「この首輪は何でしょうか?」
「あっちこっちとふらふら歩き回らないためじゃ」
「ええ~~~……」
ミノルは心の中で「だって今まであちこち行っても文句言わなかったじゃん!?」と言いそうになったが藪を突くと何が出るのかわからないので、出かかっていた言葉を飲み込む。
「でもほら…このサイズだとドラゴニュートモードだと、きゅっと締まるし、龍化はぶちっと首が…ね?」
「……考えておこう」
「外す気あります?」
「………」
「沈黙っスか…」
何故か重苦しい空気に包まれながらも、リュセフィーヌは話を始めようとしていた。
「心配したのじゃぞ?何処をほっつき歩いておったのじゃ?」
「ほっつき歩いたって…んじゃ、護符の配布が終わってアドラ王都を急襲した所からでいいかな?それじゃあ―――」
ミノルはヘラズグア家へ護符の作成方法と配布が終わったことを確認したのち、越境門の軌道を遅らせるか、うまくいけば破壊ができれば、と思い行動へ移した事を話し始める。
勇者の事、地球の事、メルディアの事、そして転移門建設の事、ムンチャイ、オースティン夫妻、未菜の事を話していく。
話していく途中で区切りをつけ、質疑応答をしながらオースティンやエリザベスのフォローもあり順調に話が進んでいく。
時系列の最後に近づいた頃には、今後予想されるフィーグル、地球との間で起こりうる全面戦争の事を交えつつ話を進めていった。
最初の頃はふむふむと言った感じであったが、話が進むにつれて表情が段々と険しくなり、全面戦争という言葉からは誰一人言葉を発する事が無くなった。
「―――というわけで、本日この場所に至るんですけど、何かご質問はありますか?」
『頼む!終わってくださいまし!この縛りって股間にモロ食い込んじゃって痛いんだすのよ!?ああ!リュセフィーヌさま!』
ミノルはモジモジしつつも、じっと我慢の子を貫く。
「ミノル殿よろしいですか?もし、もしもですよ?地球の神々が崇める者の獲得の為であれば、戦争は回避できるのですか?」
「それは不可能でしょう。アドラ聖教、すなわち3女神の恩恵はスキル・ステータスシステムを使用している利点です。それを無視して「私の宗教に入れ」なんて言ってもシステムの恩恵を持たない神は誰も祈る事はないでしょう。そしてフィーグルの民も同じです。フィーグルでは土地を豊かにしてくれる、瘴気を浄化してくれる先祖の霊への祈り。そして信仰対象はフィーグルの守り手である我々龍族、古龍である事。目に見える恩恵がある現在、単なる心の安寧をもたらす拠り所としての地球の神々とでは祈りや信仰するべき相手はどちらかと言えば、目に見える利益があるということで前者ですよね?それらを踏まえても経緯は違いますが、地球でも存在する宗教と宗教が対立しあった戦争はあります。形は違えども宗教戦争という括りで争いは起こると思います」
「そんなあ……」
「まあ、今までの話を消去法で行けば、地球上の戦火を広げて信仰心を煽る。と言った推察のほうが正しいのではないかと思っております。地球の管理者メルディア様も、それを確信しているからこそ、私に地球の神々の討伐を依頼したと思っております」
リザード種の文官の質問に答えると戦争は不可避である結論に肩を落とす。
リュセフィーヌがレダに目配せすると彼女は指をパチンと鳴らすと、ミノルの捕縛が解ける。
捕縛が解けた事により、ホッとするミノルだが、首輪が取れていない事を目で訴えると「それはまだじゃ!」という視線が返ってきたので、おとなしく従う。
「それで、アドラの状況はどうなっておるのじゃ?」
「はい、やはり大規模魔法の影響でトーグレ、ヘラズグア、プルニード、当家を除く古龍12家領域にて大規模な住民消滅が確認されております。それにより神魔大戦以降に結ばれた"盟約"の不履行という名目の元に、魔大陸の皇魔族を旗印として参加。人種生存圏全域に宣戦布告がなされました。また、神族に対しても長老会5家が盟約の破棄及び保障、新たな要項を加えた"新盟約"を提案しておりますが、紛糾してます」
「魔皇帝が動いたか、再び神魔大戦が始まろうとしているかの?我らはどうなっておるのじゃ?」
「先日、アーデルハイド様よりドナクレア島の解放状況が伝えられましたが、冬時期に入るため進行はこれまでとなるでしょう。よって冬時期の間は解放直後の復興と治安回復が主体となります。解放作戦の再開は冬季が明けてからになりますので、領域解放は早くても来年の夏季から秋季となる見込みです」
リュセフィーヌの質問に左側に座る政務官や武官が次々と回答していく。
「ふむ、今回鹵獲したアドラの現代兵器とやらは随分種類が多いのう。研究は進んだのかや?」
「先日、魔大陸ローグイン王国よりヤーノ殿を派遣してもらい、兵器の用途及び破壊力を調べていただきました。こちらをご覧ください」
軍官が水晶をかざすと、壁面に画像が移りだされる。プロジェクターのような者かなと思い画像を見ていると、現代兵器が大量に導入されている事実を知り驚きを隠せなかった。
越境門開通前にかなりの量を転移させていた事にミノルは腹を立てているのだった。
「ショートソードくらいの大きさでアサルトライフルと呼ばれる兵器は―――」
軍務官から話される内容で次々と明るみになる現代兵器だが、やはり連射能力がネックとなっているらしく、面制圧に最適だし、狙撃中に関しても遠い位置からのピンポイント射撃が厄介で騎兵、歩兵以上重装歩兵以下には有効。
次にスナイパーライフル、重機関銃といった類は飛竜(騎乗竜)までが有効。
機関砲や榴弾砲と言った類は竜族(下位)に有効。
対戦車ロケット弾までが龍族(中位)に有効。
現時点では―――という条件付きであるが、やはり現代兵器は侮れないという感想をミノルは感じていた。
しかし、武官から答えられた話では、獣人族や人族以外は魔法が使えるので"対物理障壁"や上位の"対物理結界"を展開できる為、予想される被害は少ないとの事で、実際にドナクレア島解放戦線においてアサルトライフルに関しては"対物理障壁"でほとんどが無効化できたとの事だったが、やはり連射されると被害が出てしまうとの事だった。
「まあ、アドラ、ジグ大陸、コーグ大陸の人族は他の古龍家が出ているので、ドナクレアまでは来れんじゃろう。ただ東側じゃな」
「魔大陸南のモース大陸――ペライスト王国連合は魔人、皇魔族の魔大陸連合軍とトーグレ家は受け持つことになるでしょう。ですので我々が注意しなければならないのは―――」
「シッペ島の都市国家連合じゃな?あの腹黒蝙蝠連中め。どうせ「我々は人族とは言え敵対しません」と言っておきながら、防御が薄くなった時期に攻め入ってくるんじゃろ?」
リュセフィーヌの予測に軍務官が頷く。
「よし!人族の治める国や都市、そしてそれに与するフィーグルの民に宣戦布告の宣言書を届けよ!当面は牽制などの膠着状態が続くが、ドナクレア島解放後は打って出るぞ!」
「「「「は!」」」」
こうして軍議は終了し、文官や武漢などは次々と会議室を後にするが、一部の軍務官と政務官が残っているのを確認したリュセフィーヌがオースティン達の方へと向き直す。
ミノルは正座から解放されると思い痺れる足を延ばした途端、リュセフィーヌがミノルの首輪につながった鎖を手繰り寄せる。
「ちょちょちょちょ!リュセフィーヌさん?なになになに?」
「ミノルはここにいるのじゃ」
リュセフィーヌは後ろにある控用のスツールをぽむぽむと叩く。
「あたしゃ忠犬ハチ公かい…」
ミノルは逆らわずに黙ってスツールに座る。
「それでは改めて、久しいのオースティン殿、ムンチャイ殿」
「日本での再開以来ですね」
「そうですね。ああ、ミノルさんから聞きました。まさかアーデルハイドさんが眷族となったとは私も驚きでしたよ」
オースティンとムンチャイがそれぞれ挨拶し、勇者としての勘を取り戻し、地球での戦いに備えるという事、ちょっとしたトラブルがある事も聞いていく。
「了解じゃ。ムンチャイはミノルの眷属となってもらうとしよう。オースティン殿は時間もある事じゃ。しばらく考えてみたほうが良いの」
「すまんな。どうも歳を取ると踏ん切りもつかんし人間としての生に拘ってしまってな」
「まあ、その時はその時じゃ。とりあえず、地球人として魔法が使えるかどうか色々試して見るのもよかろう。気分転換にどうじゃ?妖狐族の里を尋ねてみぬか?おぬしを知る者達が生きておるぞ?」
「そうですか!それはありがたい。お言葉に甘えて尋ねてみるとしよう」
「ムンチャイ殿と御夫婦には部屋を用意してある。まずは旅の疲れを落とされよ」
そう言ってムンチャイとオースティン夫婦は侍従の案内で会議室を出て行った。
「さて、ミナよ久しぶりじゃ。そして済まなんだ。妾達があの魔法陣の起動を阻止出来なかった為に両親の命を散らせてしまった。このとおりじゃ」
リュセフィーヌはミナに向かって頭を下げる。
「「リュー!?」」
「エレーナ、レダ、ミナの御両親はな、地球にはない異形の姿をした妾とミノルを快く歓迎してくれた。すき焼きとやらもうまかった。家族とも言ってくれたのじゃ。あのような気持ちのいい夫婦は初めてじゃ。地球へ再びいけたら、また会いたいと思っていた御仁じゃ。もう会えないと思うと残念なのは本心じゃ。とにかく、今日はゆっくりと休むがよい」
「ありがとうございますリュセフィーヌさん。両親を思ってくれるお気持ちだけで大丈夫です。父や母の事を覚えていてくださり私もうれしいです」
リュセフィーヌの謝罪にエレーナとレダは驚いて止めさせようとしたが、彼女はそれを制止させ言葉を続けた。
ミナもその言葉に感謝し、両親を思い出したのか涙が流れていた。
また詳しい話は後にしようとミナを侍従に部屋へと案内させるのであった。
「そして次は、エリザベス殿、遠路はるばるフィーグルへようこそじゃ。エンシェント種とはまたフィーグルでは絶滅してしまった種族じゃ妾も初めて見た。転移門の事よろしく頼むぞ。詳しい話の前にミノル―――」
「イエスマム!」
突然呼ばれたミノルはスツールから勢いよく立ち、気を付けをする。
「おヌシ何を考えておる?妾の目は誤魔化せられぬぞ?妻に隠し事かや?」
「いえいえ!滅相もない!この後正直に言うつもりだったし!」
「では話してたも。ミノルと妾の間に隠し事は無しじゃ」
リュセフィーヌはミノルを諭すように話し、それに応えるように頷くと、咳払いを一つして言葉を紡ぐ。
「リュー。俺、魔王になろうと思っているんだ―――」
まだまだ波乱が巻き起こりそうな1日の始まりだった。
―用語―
眷「族」(読み:ケンゾク)
術者と同じ種族になる事。同族を増やしたい時、婚姻相手、のいない龍族がよく使う秘法で一生に一度しか使えない。
被術者は同じ種族になっても術者よりも弱い。裏切りは絶対に許されない。
眷「属」(読み:ケンゾク)
術者を守るための部下を作る秘術。新月と星の位置、被術者のバイオリズムが最高潮の3つが揃えば何度でもできる。被術者は自由意志を持ち、袂を分かつ時もしばしばある。
今回は勇者と同じ力を→メーフェが難色→古龍の部下でやっちゃえ!
実用例:ヴァンパイアが血を吸ってレッサーヴァンパイアを作る
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