「フィーグルだよ!」全員集合!①
おはようございます。
ー前回までー
越境門からミノルが地球へ。
地球でオースティンを始め知り合いの肉親が越境門に取り込まれた。
それを帰還した勇者どもがミノルのせいにした。
激おこぷんぷん丸のミノルは神戸にある越境門へと攻撃を仕掛けたのち天界へと行く。
天界で2年半後に別の地球へとつなげる門と拠点を作ってもらう約束をして仲間と一緒にフィーグルへと転移にするのだった。
アドラ公国が越境門を開いてから4か月が過ぎようとしていた。トントントントン
ドナクレア島到着と同時にバーミスタを解放した。トントントントン
翌々日には我がドナクレア城も取り戻した。妾が城に到着した頃は陥落寸前で、初めの頃は何とか守って来れたらしいが、突如アドラ軍が強力な武器を使用して来てからは、追い返すのがやっとであったらしい。
後2日も妾が来るのが遅れていれば、完全に陥落という事であったらしく、妾の力で撃退後は家臣一同、涙を流して勝利を噛みしめておった。
トントントントン
領土解放も着々と進み西地区はバーミスタを起点にすべてが解放される事となったのじゃ。
そうする内にアディも帰ってきて解放戦線へと参加、さすがに古龍が戦線へ参加すると戦力的にも、士気的にも良く、東地区への侵攻速度が上がった事はうれしい限りじゃ。
トントントントントントン
アリステリアとディーフェリアもトーグレ家領域から帰ってきたが、さすがに「私達をぜひミノル様の側室へ」と言われた時には焦ったものじゃ。
分家のないドナクレア一族としても妾とアディだけでは増やしきれんからのう。しかも古龍は排卵周期がどの龍族よりも長く、その上孕みづらい。
「ミノルと相談してから」という事で一応保留にしておいてるが、妾としては子袋が一人でも多いほうが願ったり叶ったりなのじゃがの。
トントントントントントントン
じゃがその途中で失敗してしまったのじゃ!
城内に入り、そのまま結界制御部屋へと移動して防御魔法陣から皆で夜なべをして作り上げた魔法防御陣へと書き換え手から魔力を充填。
充填を確認してから起動させ、島全体を覆う防御陣が張られる事になったのじゃ。
そこまでは良かった!良かったんじゃ!!
トントントントントントントントン
妾が島全体へ張った反撃型対魔法防御陣、そして魔法防御力の弱いものから優先して同じ対魔法防御を付与した護符。
魔法防御力が高いものは護符の配布を後回しになっていても島の結界が守ってくれていると高を括ってしまったのじゃが、いざアドラの大規模魔法の起動波が島の結界へと衝突した時に、威力はかなり弱まってはいたが、結界をすり抜けて来おった。
そのまま島の住民へと降り注ぎ護符を持っていた者は難を逃れる事が出来たが、魔法防御力が高い護符を貰いきれなかった一部の者が越境門の人柱として取り込まれてしまった。
何という事だ――――
妾の驕った精神がこのような事態を招いてしまった。
あの時、一度目の体を失った時にその精神を捨て去ったはずなのに―――また繰り返してしまうとは、なんという無様。
761名の命を救うことが出来なかった自分を呪い殺してやろうと思ったほどじゃ。
トントントントントントントントントントントントントントントントントントン
残された家族には充分な見舞金と、食うに困る事が無い様に今後の仕事も斡旋しておいたから仕方がないとはいえ後味が悪かったのう。
トントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントント―――――
ミノルが居たから、出会ってしまったから再び生き返る事が出来たというのに―――ミノル?……そうじゃミノル!!
「ミノル!何処じゃ!ミノルは何処にいるのじゃ!!」
◇◆
リュセフィーヌはミノルの名前を叫び、机をバンッと叩きながら椅子から飛び跳ねるように立ち上がる。
「姫様うるさいです!何にイラついているのか机をトントントントントントンと…しかも突然席を立ったと思えば大声で叫んで!今は軍議中ですよ!?静かになさいませ!」
横に座っていた教育係兼副官のエレーナは眉を引き攣らせながら彼女へと厳しく注意する。
リュセフィーヌは、はたと正気を取り戻し周囲を見渡すと会議に出席していた者達が、驚いた表情をしており、椅子から転げ落ちている者もいた。
「あ、あの…その……すまなんだ。許してたも……」
肩を落とし小さくなりながら謝罪をし、静かに席に着く。
「それで今後の領土開放計画として―――はぁ~…。姫様今までの軍議聞いておりませんでしたね?」
「す……すまぬ」
「ミノルという輩がどんな方かは存じ上げませんが、リュセフーヌ様は今やドナクレア家のただ一人の生き残り。況してやドナクレア島解放に向けて領域奪還作戦の最中です。気を引き締めてくださいませ」
軍議の内容をほとんど聞いていない様子を察したエレーナは眉間の皺を揉み解しながらリュセフーヌを窘める。
苦笑する参加者を見たエレーナは一旦軍議を中断し、午後から再開する事とし解散させた。
リュセフーヌの後ろにエレナ、レダと続き執務室へと入っていく。
「悪かったのじゃ。ドナクレア島解放が順調すぎだったが為に、一向に進まぬ別件に苛ついてしまっておった」
ドナクレア領域奪還作戦は、島だけではなく島周辺の諸島群、領海、領空と広大な領域を持ち4か月ではあるが、ドナクレア本島を除くそれらは既に解放済みであった。
「リュー、先ほども言ったように貴女はドナクレア家の一令嬢ではなく、当主なのです。今までのように思うがままに動くと我ら一門はたちまち瓦解してしまいます。
アドラ軍からリューの首を掲げられた時、それを見た私達はいっそのことドナクレア島ごと消滅してしまおうかという議論が大半を占めた頃もありました。
そういう絶望の淵に居ながらも、士気が落ち戦線を押し返せないふがいなさがあってもドナクレア島に住む住民を守らなければ!ドイン様が御存命であった頃に戻そうと、龍族の誇りを失ってはならない。
そして姫様がヘティスハークでフェリエで戦果を挙げられたとの情報が流れてきた時は、ドナクレアにお戻りになると歯を食いしばり頑張ってこれたのです。
ドナクレア島に御戻りになった時の喜びもひとしおなのです。
暁霜の聖女アーデルハイド様を古龍の秘術で同族として迎え入れ、ようやくドナクレア家領域を取り戻す目前なのです。
ですから――――」
「エレーナ様どうどう。軍議を蔑ろにした訳ではないのですから。こうして反省もしていますし、そのミノル氏について何の手掛かりも得られていない事にいら立ちを殺せなかったのですよねリュー様?」
エレーナの説教がまだまだ続きそうな事に、このままでは軍議再開まで続きそうだと思ったレダは、リュセフーヌとエレーナに茶を差し出すと話を止める。
「むう、レダはそうやってリューを甘やかす。…まあいいです。それで?彼の御仁――ミノルといったかしら?肉体を失ったリューを再生させたという事は"貝の絆"という事でしょうか…。リュー自身が死の寸前まで身を置いた事にも問い質したい所ですが、よくもその時点で巡り合ったものです。
奇跡としか言いようがありません。
しかし、リューがこれほど思いを寄せる御仁とはいったいどんな人なのでしょうか?恋だの愛だのを知らず生きてきたリューがただの初恋の熱に侵されているだけと思いますけど……」
「エレーナ?」
頬に手を当て憂鬱な表情をするエレーナに何やら酷い言われようではないかとリュセフィーヌは彼女を見る。
「それはさておいて」
「レダもか!?」
2人にお茶請けを出そうと、さらにクッキーを盛り付けながら言うレダに突っ込まずにはいられないと彼女へ視線を変えるが、気にも留めていないようにそのままレダは話し出す。
「3か月前に来たアドラ王都を襲撃しているとの情報からぷっつりと消息が途絶えております。リューの感知能力を以てしても未だ何もなし―――。
フィーグル最大の情報網を持つトーグレ家でもその消息が掴めず、ドナクレア島解放戦線に参加していたアリステリアとディーフェリアを使ってさえアドラ神聖公国の王都を始め何処にも姿なく、かの魔法展開後を機に一切の存在が消えた。
リューの展開した反撃型対魔法防御陣をもすり抜けた強力な魔力波動に負けて越境門に取り込まれたか、それとも越境門の向こう側である地球に戻ってしまっている。
前者ならば、人から龍になった弊害があって取り込まれた。
後者ならば、王都を強襲、越境門を鹵獲し地球へ行き、ミノル氏の捜索にあたる。と言った所でしょうか」
「王都を強襲とあれば、王都へ入る為には"神の庇護"そして王都内からは"神々の刻印"が厄介ですね」
レダの言葉にエレーナは難色を示す。
が、その時、ドナクレア城内にけたたましいほどのサイレンが鳴り響く―――
『ゴラス大陸北西部に巨大な力場を感知。詳細位置は不明、魔力波長は不明。繰り返します――――』
軍議再開の前に何か厄介事が来たなと思いつながら執務室を出たリュセフーヌであった。
◆◇
ヘティスハーク王都内にあるこじんまりとした教会。
もとはアドラ聖教の教会であったが、アドラ公国侵攻とその戦火の拡大と供に閉鎖され一時は廃墟となっていたが、忘れ去られた女神の存在であるメーフェが現人神として降臨し、3女神に対抗するべく立て替えられ、メーフェの教会と名付けられ孤児院と病院を併設した救済施設として再建させられた。
今では飢えと寂しさから解放された子供達の元気な笑い声と、どの医療施設よりも格安で引き受ける病棟に感謝の声が聞こえる場所となっていた。
「さあ、大地の芳情に魂を捧げた先達の英霊達、正気を浄化してくれる妖魔達、そして妖魔達を浄化してくれる冒険者達。フィーグル世界の守護者たる古龍様に感謝を!そしてアドラ聖教の頂たる3女神の目を覚まさせましょう!」
メーフェが教会で行っている事はいわゆる3女神への離反を起こさせ、神力を削ぐことが目的である。
実際、太古より続く戦争にうんざりしている人族も多く、スキルシステムを受け入れていない人族が増えつつあった。
政治や利権が複雑に絡むそんな宗教を信仰するより、その日の糧、その日の安寧が一般の人には必要であり、選民思考に塗れて自身の生活が困窮し、命の危険にまで晒されるとあってはたまったもんじゃないのが現実である。
メーフェの教会は御布施の教養もなく、ただ皆仲良く、自分達があるのは御先祖様があってこその世の中なのだからそれに感謝しましょう、祈りましょうというだけの場所である。
だからこの教会には経典がない。御先祖様や自然の恵みに「ありがたや~ありがたや~」とする場所なだけで御布施と言われる物も金銭も偶にはあるが、農産物だったり、狩りの成果の一部であったり、たまには「飴ちゃん食べる?」というのもある。
そして教会の代表であるメーフェは一日一回正午の鐘が鳴る時にこのセリフを聖堂で言うだけであり、あとは孤児の世話や治療院の治療師として働くだけであった。
ただこの女神、女神3姉妹から除け者にされた時から最近までだらけ切った生活を送っていた為"怠け癖"がついていた。
手が空いた隙を見ては転移陣を使ってフェリエ王国の各支部や魔大陸のローグイン王国の各支部へと赴いては酒場へ足を進めて酒を飲み、どんちゃん騒ぎをしては支部長や本部長を悩ませるのであった。
今日も今日とておなじみのセリフを吐き、内心では「あ~お酒飲みたい。あ!今日はあの小説の発売日だ!早速行かねば!」などと心の中で呟くのであった。
そうした正午の鐘がなり終わったと思ったとたん、目の前に蒼く光る円形の膜が現れる。
「何?何あれ?何????」
メーフェや数十名の参拝者は聖堂の中であたふたとしている中、光の膜から数名の人物が現れる。
光の膜が消えると、そこにいるのは8名の男女でその仲に知っている顔が一名おり、メーフェは教壇の上で呆然とするのであった。
「あ、あれ?あれれ?もしかしてミノルさん?お久しぶりですね?」
「そこで何故疑問形なのかは不明なんだけど、久しぶりだねメーフェ様」
そういってミノルは微笑みながらメーフェに近づくと、上着の内ポケットから一通の封筒を手渡す。
封筒を受け取ったメーフェは封筒の封印個所に淡く光る紋章を見るなり「げ!」と顰めた表情をするのであった。
人物
レダ・クレール 水龍種(属性龍)の血を引く初代ドナクレア家に代々仕えている眷属。
ドナクレア家侍女頭でリュセフーヌが頭の上がらない人物の一人。
妹にシアン・クレール情報(諜報)部長。
エレーナ・バーンシュタイン 炎龍種(属性龍)でレダと同じく眷属。
現ドナクレア軍総司令官ゴラウシスの妻であり家令。
リュセフーヌが頭の上がらない人物の一人。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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次回も楽しみにしていただければ幸いです。




