料理でもなんでも下拵えって必要です
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拙い文章ではございますが、どうか楽しんでいただければ幸いです。
地球側の転移門をくぐるとそこは依然来たことがある草原。
「ふむ?確かここは地球側の天界…だよな?」
「天界?え?…うそ!?私たち神様の世界に来ちゃったの!?ジーザスとかケルトの神々もいるのかしら!?」
ミノルの言葉にヴィオラが反応し、バッグからカメラを取り出すとパシャパシャと撮影をしていく。
「ヴィオラさん…草原ばかり撮ってもしょうがないような…」
「ヴィオラ。フィーグル行ってからもっと撮る所あるからメモリーとバッテリーを無駄にするんじゃない…」
「まあ、いいじゃないですか。ミノルさん、ここはなんか安心感がある場所ですね。難加工、魂が洗われるような…」
美菜の言うとおりで、視界の届く範囲では草原と樹木が散見される程度でそのような景色は地球の何処でも撮影しても変わらない景色だった。
ミノルはヴィオラ達のそんなやり取りを見てクスリと笑いながら龍化して装着したゴンドラに3人を乗せて飛び立つ。
周囲を索敵すると20km先に依然感じたメルディアとエンシェント種のエリザベスの気配を感知した。
「こっちだな…」
呟きながら気配を感じた先へと進むと、依然見た屋敷が見えてくる。
ミノルが天界へ来た事を察知していたのか、既に玄関先ではメイド達とメルディアがミノルに視線を向けていた。
「以前は龍人の身体だったからなぁ」
改めて上空から見るメルディアの屋敷は3階建ての荘厳な建物を中心に左右に渡り廊下で繋がった2倍ほどの大きな建物。
その背後には何十haあるのだろうか…広大な農地が広がり、きちんと区画整理がなされているのか、四角い黄金色をした穂を携えた米?それとも麦?の地帯が所々で、あとは緑と土色のコントラストが何とも美しく感じる農地を見ながら30mの巨体が着地しても、十分な余地がある玄関前に着地すると、ゴンドラから3人を降ろしているミノルへと笑みを浮かべながらメルディアが近づいて来る。
「いらっしゃいミノルさん。ミノルさんの事は観ておりました。ですがオースティンさん、ヴィオラさん、ムンチャイさん、未菜さん申し訳ございません。私が手助け出来れば良かったのですが……」
笑みを浮かべていたのは一瞬で、すぐに真顔になり3人に向かって頭を下げながら謝罪を始めた。
「メルディア様、初めまして。オースティンの妻ヴィオラ・レトバルトです。どうか頭をお上げください」
「初めてお目にかかる。オースティン・レトバルトです。製造責任…なんていう言葉もありますが、私は問い質すべきは、それらを行った本人達に責任があるものと思っておりますぞ」
「初めまして。ムンチャイ・マッカラーンと申します。私もオースティンさんと同じ意見ですし、粛清されるのは貴女ではありません。どうか頭をお上げください」
「初めまして。石井未菜です。え~と…以下同文で!」
メルディアは「ありがとう」と一言感謝を述べ、頭を上げるとミノル達を屋敷へと招き入れる。
「それで?私達は越境門を通り過ぎる場合、ここに立ち寄るのはデフォルトという事になるのですかね?」
案内された屋敷の談話室でそれぞれ寛ぎながらこの世界の事、管理者と地球の神と呼ばれる者達との違い、もはやフィーグルだけ、地球だけの問題ではなく2つの世界を股にかけての問題解決に挑まなければならない事をメルディアとセバスチャンがミノル以外の4人に説明していく。
フィーグルを知る2人は「やはりか」と溜息をつき苦悶の表情をし、未菜は頭の上にハテナマークが幾つも浮かんでいるようだ。
ヴィオラさんは元々地球に存在した種族というセバスチャンやエリザベス、談話室に来る途中もエルフ族や獣人族を「むっはー!」という気勢を上げながら写真へと収めていき、今も話は聞いているが、少々興奮気味である。
そんな中、話も一区切りついた所でミノルは越境門をくぐった直後の天界への移動に、ふと思った事を尋ねてみる。
「いえ、今回は彼の者達が作った越境門では術式構造が違う事と、私の力が及ばない創りになっていますのでそのわずかなスキを使ってフィーグルと地球との行き来をしてもらっているので、どうしても此処を経由しているのです。ですが、そろそろあの3姉妹が私が利用している事に気付いて対処はしてくるでしょう。多分、これが越境の最後になるかもしれません」
ミノル達は最後という言葉に驚き、もう地球へは戻れないのかという不安から顔を青ざめさせる。
「ああ!安心してください!越境門を利用しての事ですから。そしてこれからの事についても目途がつきましたので、その報告も兼ねて、談話室に来ていただいているだけですから」
メルディアはその空気を察したのか言葉をつなぐ。
そして後ろに控えていたエリザベスが数枚のB0位の大きな紙をテーブルに広げると、説明を始める。
「転移門」と新たに名付けられた門は、神々が持つ"権能"を遥かに凌ぐミノルの"理の司"をリンクさせる事によって、人柱を必要としない新たな理をもって創造が可能になった事。
ミノル達の地球用の拠点として新たな大地の創造をして活動してもらうという事が盛り込まれていた。
あまりのスケールの大きさにミノルは溜息をつき「はは…」と乾いた笑いをしてしまう。
『俺の持つ"理"って世界のルールってやつを自分勝手に変更する事が出来るって訳だ。トんでもないもん持っているんだな』
ミノルは心の中でそう呟き、自身の持つ力に恐れを抱いてしまう。
尤も、ミノルの"理"には世界のルールを変えてしまうほどの力はなく、世界のルールというの大綱は変わらないが、刻一刻と最適化をしており、その最適化の中に少しだけ潜り込ませる力であり、PCで言えばVer0.1
の中のほんの一部のプログラムという括りである―――と、後日リュセフィーヌからの説明にホッとするミノルであった。
「拠点についてはどこかの国を奪うという事はせずに、創造とは言いましたが、人類有史以前より遥か昔に存在した陸地の再利用となります」
「再利用?」
「現代では伝説などにある「浮遊大陸」と呼ばれるものです」
「「「「「!?」」」」」」
メルディアからの言葉に一同は言葉を失う。
「ああああああの!も、もしかして"アトランティス"とか"パシフィス"とか"ムー"とか!!!」
ファンタジー考古学のヴィオラさんは興味を抑えられないのか、興奮してメルディアに問いかける。
「ええ、地球上にある俗説ではそう言われていますね。ですが、最も近い伝説は「箱舟」ですね。そしてここにいるエリザベスの故郷でもあります」
そう言いながらエリザベスが語り始める。
本来地球上にはフィーグルと同じく他種族が仲良く暮らす土地であったが、繁殖力が旺盛な人類が段々と数を増し、セバスチャンを始め多くの種族は狩猟対象となり生活圏を狭めて、ついには絶滅の危機にまで直面していくこととなる。
そこで当時の者達は未だ誰もが踏み入れた事のない未開の「名も無き地」を目指し、人類以外はそこへと安生の地として住むこととなる。
しかし、いずれは自分達と同じく船で渡り、再び蹂躙される恐れがあるという意見から、当時の魔素を使う技術を結集して今住む陸地を浮遊させることに成功し、もはや人類の目に届かない場所での生活を営むこととなる。
およそ数千年の時をその地で過ごす事となるが、人類は船を造り海へと進出をし始めた頃、再び起こる懸念は後の歴史が的中させる事になるが、魔法は廃れたにもかかわらず、錬金術=科学技術を発展させる人類は近い将来、空への進出を果たすであろうとの見解が起こり始める。
そこで当時の長であるエリザベスの御先祖様がメルディアに助けを求めることとなり、地球上から一切の幻想種というものが消えた事となった。
「そういう経緯で、人類以外の種族は天界に住むこととなったのです。まあ、あの物語に当てはめるのであれば大洪水は人類。箱舟が浮遊する「名も無き地」となるわけで、歴史を経てアトランティスになったのは、私たちが魔素を基本とした魔導技術を使うので、魔法が使えない人類は優れた技術と伝えられたのでしょうね。そして先祖のとった行動をなぞらえて箱舟という神話を作り、神界に住む神々によって改竄などもされた訳なんですけどね。後からメルディア様へ伺ったときに教えてくださいました」
そういってエリザベスは肩をすくめながらフっと自嘲気味に笑う。
「いつの世でも真実は捻じ曲げられる……か」
ムンチャイがぽつりとつぶやく。
何とも世界観がひっくり返される事を聞いたもんだと、オースティンは額に手を当て上を向く。
「そうそう真実というかもう一つ判明した事をお知らせ致します。まあ、情報が足りなくて予測の域も含まれますが、話させていただきます」
セバスチャンがメルディアの方へ視線を向けると彼女が頷く。
本来、異世界間を繋ぐ事は世界のルールにギリギリセーフではあるが、かなり禁忌とされる事で、両世界間において弊害事象が発生する事は避けられない事と言っているが、もう起きてるじゃんとミノルは突っ込みたくなるが、言葉を飲み込みセバスチャンの話を聞く。
また異世界同士を繋ぐ為には、各世界の管理者による相互了承が必要とされるが、地球側はメルディアの了承を無視した形をとったことになり、これが問題となっている。
確かに一時的につなげての稀人、迷い人などの少数召喚の為に使うのはセーフらしい。
しかし越権行為甚だしい今回は、フィーグル側のミノルへとメルディアから討伐依頼が発生しており、後に解決するであろう。
そして地球側の神々が、そんな暴挙へと移った原因が現代社会における信仰心から物質主義へと移り変わった為による著しい低下。
これにより地球から生まれた世界3大宗教で信仰されている以外の神々は著しく神力を失ってきている。
もちろん世界3大宗教の神々も昨今の事情で力は衰える一方で、他の神々と結託し今回の越境門開通に向けて了承していたのである。
「ここからが推測となります。はじめはフィーグルの住民から信仰心を得て力を取り戻そうというつもりだったのかと思いましたが、開通時に彼等の力が増しておりました」
「越境門の開通によって何らかの神の力となる物が入り込んだ?」
セバスチャンの言葉に未菜が質問をする。
「それもあるかもしれません。ですが、地球に住む人類ではある事象が発生しております」
ミノル達はそのままセバスチャンの話を更に聞き入っていく。
「ドラゴンの出現、越境門の出現に伴う地球人類の人口減少、そして勇者の存在。これらは科学では証明できない異常な事態。まるで幻想物語ではないですか。科学では対抗しきれないのならば、自分達もそれに対抗した物で行こうと思うのは気のせいでしょうか?」
ミノルは「まさかな」と思っていたが、他の3人を見るとミノルと同じような不安気な表情をしていた。
「皆さんが思っている事"ラグナロク"や"オリュンポスの神々"日本では"日本武尊と八岐大蛇"でしたね。そう、非科学的な存在である神への祈りを捧げその力を奮って貰う事により、事態の把握が出来るのではないかと思うようになってきております」
「つまりは越境門が発端となり、過去の第1次、第2次世界大戦の様に数か国のみの戦いではなく、文字通り全世界を巻き込んだ戦いになると予測し、自分達への信仰をより深いものとする事が目的?」
「あくまで推測の域ではあります」
ヴィオラが考えるに至った質問に答えるセバスチャンは、推測の域という言葉で締めた。
「ダメじゃん!?そんなことの為に多くの犠牲が出たっていうの!?」
「フィーグルでは3女神がアドラ聖教を利用。それに呼応したアドラ公国、ペンタハーケン帝国、さーとれ、ジャニスといった各王国への現代兵器の導入で軍備の増強で人種の勢力圏を広げることで古龍やフィーグルの民を駆逐し、確固たる女神の地位を図るつもりか」
未菜が机をバンッと叩き席を立ってしまい、それを諭しながらオースティンがフィーグルの女神たちの思惑を予想する。
「もしそれが事実ならシャレになんねぇ………」
ミノルはソファーに深く腰掛け上を向きながら呟く。
「と、とにかく!その為にも地球での拠点が必要となりますし、私達も戦いの勘を取り戻さなければならないですよね」
「そうですね、ムンチャイさんの言う通りですが、拠点の復活と転移門については、まだ時間が掛かってしまうのが現状です」
ムンチャイの言葉にセバスチャンが答える。
「少なくても2年年半から3年はみていただかないと。拠点はゼロから作るより元々あったものを再利用ですから、そんなに時間はかかりません。ですが転移門についてはミノルさんとのパスを繋げてからの調整に一番時間がとられるかと思います。何分、初めての試みですのでその時になってみないと解らない事がありますから」
テーブルに広げた図面を見ながらエリザベスが答えていく。
「たぶんフィーグルの入り口はドナクレア島に設置すると思う。メルディアさん、メーフェも呼んだほうがいいですか?」
「はい、たぶんあの子の力も借りなければいけなくなります。そして地球側としてエリザベスを私との通信パスを繋げておきますので連絡代わりに使ってください」
「えと?よろしいんですか?」
「ええもちろんです。元々同じエンシェント種の彼女が産休から復帰も決まっておりますからね。エリザベスは彼女の後輩で副侍従長なんですよ。彼女の産休の代役としていただけですから」
「わかりました。ありがとうございます」
こうしてミノルとメルディアの話が終わり、エリザベスのフィーグルへ向けての準備があるという事で、その間、気分を切り替えてメルディアと4人の会話を楽しむ。
メルディアとヴィオラ、未菜は女性同士テラスへと出て庭へと向かい、色とりどりに咲く珍しい花やメルディアが来ているドレスに花を咲かせている。
特にヴィオラとオースティンとの馴れ初めについては話が弾んでいるようだ。
ミノルを含めた男3人衆はテラス席に座り、ミノルの前職での出来事や下世話な話にも盛り上がっていた。
フィーグルでの武器事情になるとセバスチャンや侍従の獣人数名が加わり、さらに盛り上がる。
セバスチャンはさすがにドワーフというべきか、オースティンとムンチャイが話す魔鋼を使った武具、凍土杉を使った武具に目を輝かせ、身を乗り出さんばかりに聞き入っているのであった。
エリザベスと2名のエルフ技師の準備が整い、いよいよフィーグルへと出発する事となった。
「メルディアさんありがとうございます。そしてよろしくお願いします」
「こちらこそ、ミノルさんを始めフィーグルへ負担を掛けてしまい申し訳なく思っております」
「それではメルディア様、行って参ります」
ミノルを含め5名とエリザベス含め互いに礼を交わすと、メルディアがミノルと額を合わせながら、出口の先をイメージするように言われた。
ミノルはヘティスハーク王国のメーフェの教会を思い浮かべると、それを感知したメルディアが右側にスッと手をかざすと、蒼く光る直径3mほどの円形の膜が浮かび上がる。
「それでは皆さん、また逢う日までお元気で」
ミノル達はメルディアに手を振りながら、フィーグルへとつながっている光の膜へと歩を進めたのであった。
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次回は10/07です。お楽しみに^^




