アーデルハイドとセレスティア②~アーデルハイド編~
すいません投稿日時間違っておりました。
フェリエ会議上で議論がなされている頃、アーデルハイドはプルニード家領域内を飛行し、あと少しという所にいた。
――ヘラズグア分家であるプルニード家はフェリエ北方に広がる永久凍土と氷河が広がる領域で、氷河と凍土の境目に領都がある。元々ヘラズグアから分家した理由としては、初代当主ロイン・ヘラズグア(現当主)が、ヘラズグア当主マスケイル・ヘラズグア(エルザ・ヘラズグアの婿)が当主決定後にチートと言ってもおかしくない位の才覚を発揮した為、ヘラズグア前当主が未開領域を(本人はこれを狙っていたとの噂あり)
ヘラズグア領域全体が氷河であるのとは違い、領域の40%が凍土に覆われている。
また、特産品では、この地域―凍土―にのみ自生する「凍土杉」が特産品として流通しており、木材にもかかわらず、魔力伝導率が高く、魔力を通すと鉄よりも固い鋼並みの高度となり、しかも木材ならではの軽さと粘り、しなやかさを持つ。
木工技術のみで武具作成が出来、「鍛冶屋泣かせ」と言われるほど冒険者には重宝されていた。
アーデルハイドがその凍土杉の森上空を過ぎた時に、突如森の中より2匹の龍が飛び出し、アーデルハイドを追跡しだした。
2匹の龍はアーデルハイドよりも一回り小さい20mほどではあるが、銀色の鎧を纏っており、龍騎士という言葉がもっともらしい出で立ちであった。
「そこの龍族!今すぐ地上へ降りて、地に伏せよ!」
「も~あと少しなのに~!急いでいるから止まんない~!」
「くっ!速い!貴様ぁ!止まれと言っている!止まらねば攻撃するぞ!」
龍騎士達の鎧の間からは蒼い鱗が見えており、たぶん属性龍なのであろうか、アーデルハイドを追いながら騎士達が発動する魔法が青く光っている。
アーデルハイドもそれを確認すると「も~!」と言いながら火属性の迎撃魔導を展開する。
普通であれば振り切れるはずであったのだが、彼女自身も「目的地はすぐそこ」という事もあり、減速していた為、相手の攻撃を許してしまう事態になっていた。
「貴様!あくまで逆らうのか!ならば容赦はせんぞ!!」
騎士達は数十発にも及ぶ氷槍を打ち出し、アーデルハイドは、フレアカーテンを展開する。
「フレアカーテンでは我らの魔道式は打ち破れんぞ!」
しかし、打ち出された氷槍は悉く薄い炎の膜で防がれてしまい、騎士達は「何だと!」と驚愕の声を上げる。
属性龍の"魔道"と古龍の"魔導"――これだけでも"魔導"のほうが威力は高いのだが、フレアカーテン1枚如きでは数十発にも及ぶ氷槍を防ぎきる事が出来ない。
しかし、アーデルハイドの持つ"概念"に影響されていた。
彼女が"聖女"としてアドラ公国に在籍していた頃は、第2次世界大戦当時の鍛冶屋で見る赤く熱せられた鉄(800~1000℃)程度の温度しか知らなかったが、強制送還後の化学が発展した世界において数千度という温度を知ってしまったが為に、フレアカーテンは鉄の沸点である2800℃以上の温度で展開しており、いくら魔力を帯びた氷の槍であろうと、ひとたまりもないのが現状である。
「じゃ~ね~」
無用な争いを好まず、先を急ぐアーデルハイドは仕方がないとばかりに、驚く騎士を尻目に再び加速をして振り切るのであったが、ミノルと同じく、氷壁へと突撃して強制着陸したのは言うまでもなかった。
◇◆
「う~足がジンジンする~」
幸いにも氷河の氷壁は領都から少しばかり離れていたこともあり、氷壁へとドロップキックをくらわし、爆発したような崩壊をさせていた。
領都には被害は及びはしなかったが、大きな振動と轟音に領都内はちょっとしたパニックになっていた。
肉体強化と障壁によって防いではいたが、足が痺れている事もあってかフラフラと領都内へと入り、大きな城を見つけると正門らしき箇所へと着地をする。
門の前には大勢のドラゴニュートや竜人らしき衛兵が大勢武器を構えていたが、それを全く気にせず「ふ~」と溜息をつきながら、話し始めた。
「こんにちわ~。ドナクレア家が古龍の一人、アーデルハイド・ガビです~。大至急の用事があってきました~。あ~そうそう~リューちゃ……当主であるリュセフィーヌの親書を持ってきました~。プルニード家当主との会談をお願いします~」
そういいながらアーデルハイドは龍人へと変化して、挟んでいた胸から出した親書をピラピラと振るのであった。
◆◇
「そうそう~顔料に混ぜている魔力石の粉は均一になるようにしてね~。あ~あ~滲にじんじゃうと文字とか陣がはっきりしなくなっちゃう~。それもだめ~薄すぎて魔法陣の線がかすれちゃってる~。疲れているのはみんな一緒~。仕事はぞんざいにしないでね~。あらあらあらあら~護符の紙はこんな斑模様まだらもように染み込ませちゃダメ~均一にね~」
門前でも多少?の擦った揉んだがありはしたが、途中でプルニード家長男の乱入で事なきを得て、無事にプルニード家当主との面談に漕ぎ着ける事が出来た。
アーデルハイドの言葉とリュセフィーヌの親書を読んだ当主はその事態に驚き、憤慨しながらも即座に行動開始、たちまち蜂の巣をつついたような騒ぎとなり、対応に合われることとなった。
高速移動による魔力の連続使用と徹夜作業において、いくら古龍となった身体でも疲労はピークに達しようとしている中「救える命は少しでも多く」と言う元聖女だった頃の覚悟であろうか?目の下に隈を作りながらも踏ん張っていた。
また、護符の製造においても一切の妥協を許さず、きっちりとした品質を保持しようと出来具合にチェックを怠らない所は元ドイツ人ならではと言う所であろう。
「や~ん!お肌が荒れる~!」と愚痴をこぼしながらも手を休めることはなかった。
そしてその傍らで「妾の姉妹となったアーデルハイドにもしもの事があったらタダではおかぬぞ?」の親書を受け取っていたプルニード家当主はいくら休めといっても休まないアーデルハイドを見ながら「ドナクレア家の怒りを買うと何をされるか分からない」と云う恐怖から侍女衆と共にハラハラして何とかアーデルハイドに休んでもらおうとオロオロするのであった。
それから8日後、幸いにもプルニード家領域内の住民への護符配布がほぼ完了するのだが、やはりここでも非定住部族に手間をとられていたが、何とか届きそうとの連絡によりほっと胸をなでおろす当主であった。
これもプルニード家が定住民の把握、非定住(狩猟)民をある程度把握をしていた事、本家ヘラズグア家よりも人口が少なかった事も要因ではあったが、アーデルハイドがそれを確認した直後、倒れるようにその場で爆睡。
これを見ていた当主が悲鳴を上げながら寝室へ運ばせ、彼女が目覚める2日後のその時まで何かに祈るようだったと言う。
当時を語るプルニード家当主は「生きた心地がしなかった」と妻や子供たちに語ったという。
◇◆
残念ながら魔大陸での配布率は30%に満たなかった。
これには理由があり、魔大陸全土の広さ、魔大陸を統べるのは魔帝ではあるが、ファンタジー世界でもおなじみの「魔族」と同様に一枚岩でなく各王国間=種族毎のプライドが高く、緊急事態であるにもかかわらず伝達が遅れに遅れてしまった。
――種族間に於いて伝達経路が複雑であった為との帝室報告書に記されている。
しかし、魔大陸に於いて住民のほとんどが魔法に対する抵抗能力が高く、被害者数は軽微であったとの報告の追記もされていた――
こうして遂に大規模魔法陣の発動と越境門の開通がなされることとなるのであった。
ただただ欲望の為に大勢の人命が人柱として輪廻の輪に加わることなく、フィーグル=地球の接続の為のエネルギーへと変換されたのであった。
◆◇
大規模魔法が展開された瞬間、各地に散らばる古龍達はその異状に気付いて、執務中、視察中にもかかわらず手を止めて背中からくる悪寒にぶるりと身を震わせる。
――何だこの異常な魔素の流れは!――
数十分ほど続く異状が収まると同時に彼ら、彼女らの胸に大きな消失感が生まれる。
それから数日後、自身達が治める領域内において多数の失踪者が出たことが報告に上がってきており、その原因調査に乗り出すとアドラ公国において時空転移孔が確認されることとなる。
そしてその原因がヘラズグア、プルニード、トーグレ、ドナクレアから各領域守護者へと送られてきた親書を読む手が震えており、執務室に濃密な殺気が充満する。
おそらく何も知らずこの部屋へと入った者(格下種族)はその圧力に負け、その場で心臓が止まっていたであろうと、パールグア家に留学に来ているヘラズグア家次男トリニウト・ヘラズグアは語っていた。
幸いにもミノルたちが制作した護符は機能を発揮し、携帯しているものは難を逃れ、魔法抵抗力が高いものも幾分か生き残る事が出来た。
しかし、魔法抵抗力が高くても魂だけ吸われてしまった者や抵抗力も無く体ごと持っていかれた者も少なくはなかった。
それに対して申し訳なかったと、謝罪の一文を見る各領域守護者達は、仕方がなかったと諦めつつも、もう少し早めに気付いてほしかったとの妬ましさも持つのであった。
この後、女神率いる親族との会談が行われ、古龍との間での話し合いが紛糾することとなるが、この事件により古龍を始めとする龍族、そしてフィーグルの民は人類との全面戦争へ向けての足音が聞こえてくるのであった。
―――フィーグルと地球間における神と龍、そして種族間戦争における歴史が記された書物より抜粋―――
――――中略――――ここに記しておかなければならない事がある。
アドラ公国が領土拡大に乗り出してから400年が経った頃、他の大陸も人類圏拡大に乗り出し、世界規模の戦争が起きた時に「人族」は女神から「警告」とされるべきステータスの一部を使えなくなっていた。
これには諸説あり、太古の時代に龍族と神々が結んだ盟約がある為、神々が欺瞞の為に行ったとされる説もあれば、数柱の従属神が保身から自身への盟約の履行がされない為に行った等、議論が絶えない。
だが事実として「越境門」の開通と共に「神族人種」から「人族」へと変わってしまった事は事実として捉えられなければならない。
これだけの大虐殺(盟約破り)が行われたにもかかわらず、神族の霊格が落ちていなかったこともあり、「神族人種」から「人族」に霊格が下がった事を我々人族は数年間誰も知る由もなかった。
霊格が落ちた事が判明するきっかけとして初めに起こったのが、当時は「越境門」のことは知らされておらず「ある日、大気中の魔素が尋常では済まないくらいの消費が行われた」時を同じくして「隣人やパーティーメンバー、町や村から人がその場から突然消えた」これが始まりであった。
大気中の魔素からの魔力変換が格段に落ちてしまい、無詠唱の行使は従来の20分の1(詠唱ですら3分の1)、威力、持続力の低下が発生。
「魔方陣を用いる」「精霊からの助力を受ける」など、人族以外の第3者を介してでなければ従来の威力を持った「呪術、魔術、魔法、魔道、魔導」の行使は不可能になってしまった。
冒険者ギルド本部より登録者からの魔法行使の異常が各地で見受けられ、人類圏のアドラ公国をはじめ、ジグ大陸、コーグ大陸の帝国や各王国の魔術研究機関が乗り出すこととなったが「越境門」を知っていた者たちはこれを隠蔽し、結果として報告されたのは「古龍達が人類抹殺の為に大規模な時空転移魔法を実行した為、これによる空気中の魔素の減少によるもので、時が経てば従来通りの魔素の濃度に戻る」と報告されていた。
しかし「人族」の魔法行使能力の低下は戻る事がなかった。
国家機関の発表に疑問を持った民間の魔術研究所の報告によると「空気中の魔素の濃度は過去20年の濃度と照らし合わせても、件の集団消失事件の時期以外は例年(通常)通りを保っており、原因は別の要因とされる」という報告がある。
そして「神族人種」から「人族」へと霊格が落ちた決定的な理由が「フィーグルと地球を結ぶ「越境門」の作成の為にフィーグルに住む生きとし生ける者を人柱とした」事実が発覚する。
一つは神殿において、聖女がもたらす「神の言葉」が、今までは神との会話を可能としていたにもかかわらず、声を聴くだけの一方通行の現在における「啓示」となった事、また神の声を聴くと「我らが眷属たる子らよ」から「我らを崇拝する者たちよ」と言う言い回しになった事。
もう一つはある冒険者が、ヘティスハーク王国へ依頼の為に訪れた時に見たことのない協会があり、そこに忘れられた神「* * * * *」(塗りつぶされている)が地上へ降臨し、現人神として生活を送っており「* * * * *」から事の顛末を知る事となった事が挙げられる。
――――中略――――
古龍と女神たちとの間に交わされた盟約――
古より定められたこの契約を我々人類は忘れ、事実を捻じ曲げ、そして大罪を犯してしまったが為に、我々はどの種族よりも脆弱で愚かな種族として贖罪を背負って生きなければならないという事を伝えなければならない―――。
「ただいまっと…さて、89話執筆仕上げるか」
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「ん~と、あれ?88話は???更新されていない????」
「なぜだ?(検索中)………(; ゜Д゜)やべえ!10/6の7時に設定してるよ」
大至急投稿しました。
大変失礼しました。
次回89話は10/09間違えなく7時に投稿します。




