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アーデルハイドとセレスティア①~セレスティア編~

長々とお休みしまして申し訳ございませんでした。


投稿を再開いたしますのでよろしくお願いします。

 フェリエ王国内上空をⅤ字型に隊列を組み雲一つない穏やかな空を悠々と飛んでいる。


 「隊長~昼食後の哨戒任務って眠くなっちゃいますね~」


 「こら、フラフラと飛ぶな!ちゃんと隊列を組まないと地上から見ている国民に示しがつかんだろうが!」


 「は~い」


 鳥人族を先頭とした、グリフォン族、ハーピー種で編成されている一個中隊がフェリエ王国上空を哨戒中である。

 ハーピー種種の隊員が間の抜けた話を始めたが、隊長がそれを(たしな)める。

 昼食後の温かい気温、風のない快晴の陽気、ヘティスハークとフェリエが隣接するこの空域は平和そのもの。しかも両国を分断する山には野生のワイバーン等の竜族は存在しない、よほどのことがない限り非常事態など発生しない地域である。

 そんな会話を聞く他の隊員も、その会話のやり取りに思わず微笑んでしまうのであった。


 「さあ!このまま王都へ向かうルートをとれ!」


 『了解!』


 「副長!周囲の警戒は怠らずに頼む――――ん?何だ?」


 隊長が、ふと右方向からの違和感を覚えると、その場に留まるよう指示を出す。

 鷲種はどの鳥人族よりも優れた視力を持ち、視界が良好であれば3km先まで見通すことが出来るほか、龍族の持つ直感力よりも劣るが同様の能力を持ち合わせている。


 「隊長!ヘティスハーク方面から大きな魔力が近づいてきます!」

 

 同じく隊長の気づいた違和感を察したのか、広範囲の気配察知能力を持つグリフォン種の副長が索敵を始めると反応があった為、隊長へと報告する。


 ―――通常グリフォン族はフェンリル族と同じく霊獣に属するのだが、少数部族での組織能力しか持たず、大規模な組織経営に向いていない。よって同列ではあるが大規模な組織(王国のような)運用能力を持つフェンリル族の中に属する形をとっている。

 副長である若年のグリフォンは昨今、少数部族では収まり切れないほど増えた同族を纏めるべく目下、氏族長直系の次男で時期族長の補佐である鷲種隊長の下で組織や部隊運営について勉強中である。 


 「中隊!警戒態勢!」


 隊長は長槍を構え、グリフォン種は手足の鋭い爪を出し、ハーピー種は足に装備している鉤爪の動きを確認していた。

 中隊の空気が緊張に包まれる中、視界の向こうに小さな点(存在)を確認し、槍を握る手に力を籠める。


 「………ぶ……い……いて…」


 ふと、念話で中隊全員に誰かの声が頭の中に響く。


 「お…が……ぶない…ら~……けて~」


 「隊長…これは、女性の声?あまり敵対の感情が含まれていませんね」


 「……だな。総員!声に惑わされずに構えを解くな!」


 他の隊員も声が聞こえたのか隊長が見据える先を見ながら困惑の表情をしていた。

 段々と先に見えてきた物体?(生物?)がこちらに近づいてくる。それに従って念話がはっきりと聞こえてくる。

 

 隊長の視力ではっきりと見えたその姿は龍族であり、その体長はかなり大きいということが分かった。


 「あれは…龍族?―――っ!この気配は!龍族だ!突っ込んでくるぞ!総員、対物理防御を展開しつつ地上へ緊急降下だ急げ!衝撃波に巻き込まれるぞ!」


 「お願い~!危ないからよけて~!」 


 飛んで来る龍族は回避行動をとることなく、想像を絶した速度で中隊へと突っ込んできており、そのままでは質量的には肉片へと早変わり。

 もしも衝突しなくてもその後に発生するであろう凄まじい乱気流によって、自分達は為す術なく地上へ叩きつけられるであろうと、空を飛ぶ種族である隊長は予測した。

 隊長の号令のもとに隊員達は地上へと急降下を始め、地上を通り立つとそのまま地面に伏せるのであった。


 間一髪衝突を避けた中隊の上を凄まじい速度で通り過ぎた龍族はそのまま上を「迷惑かけて御免なさいい~~~~~!」と念話を送りながら過ぎ去っていくのであった。


 「あれは…古龍様か?今の声とあの姿は…アーデルハイド様?」


 「もう一つ、セレスティア様の反応もありました…ね…」


 隊長と副長は通り過ぎる瞬間と後姿を見ながら起き上がると、ぽつりと呟き過ぎ去った先を呆然と見ているのであった。

 

 後日「あの速度で方向転換しろって無茶すぎる。空気抵抗で体がバラバラになる」とアーデルハイドはミノルの突っ込みに反論するのであった。


 ◆◇


 ミノルと別れた後にフェリエ共和国改めフェリエ王国へと勢いよく到着、突風による王都のパニックを尻目に王城(旧代表館)に近接する練兵場へと着地。この時練習していた第6師団は上空から迫りくる大質量物体に驚き、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑ったのも言うまでもなし。

 アーデルハイドとセレスティアは周囲に謝罪しつつ王城へ向かい、その日のうちに初代国王にして女王であるフェンリル族のパディ女王と補佐のレスタへ謁見を果たす。


 「―――というわけで、ミノル殿の故郷であるチキュウとフィーグルを繋げるべく門を作っているとの情報を捕虜(ゆうしゃ)から入手したわ。しかもその門を起動させるには、フィーグル全体を巻き込むような大規模な魔法陣を使うらしく、それには数十億人規模の人柱が必要となり、フィーグル世界のおおよそ5分の1以上が犠牲になるとの計算が古龍リュセフーヌ様とローグイン王国魔道研究所との協力の元の算出されたのよ」


 「セレ姉様!それは本当なのですか!?」


 「……間違いないわ。アドラ公国が3年前から徐々に領土拡張の速度が緩やかになってきたのと、ここ1年ばかりスタンピード(魔獣暴走)、ヘティスハークやフェリエ王国(我々)の巻き返しをがあったとはいえ報復行動がなされなかった事など色々あるだろうけど、それらを顧みると「なるほど、そういう計画があったのね」と当てはまる要項が多すぎるもの」


 セレスティアの報告を聞くパディ女王が、驚愕の表情を露にしていた。


 「アドラ軍から~鹵獲した連絡文書からだと~今から~17日後に~起動するみたいよ~」


 「とにかく議会を直ちに開くわ。セレスティア、アーデルハイド様、もしかして対処方法があるのですか?もし方法があるのならば、私達にも教えていただきますか?」


 「はいこれ~」


 アーデルハイドの話を聞く補佐役のレスタ(2人の母)が問いかけると彼女(アディ)が見本となる護符数枚と製造方法を記載した羊皮紙を手渡す。


 「アーデルハイド様ありがとうございます。パディ、セレ、私は直ぐにでも製造に取り掛かるわ。後は分かっているわね?」


 「母様」「お母さん」


 レスタの言葉にパディとセレスティアが頷く。

 こうしてフェリエ王国が大規模魔法陣の対処方法へと行動を開始した。

 

 ◇◆


 フェリエ王国が建国したばかりだというのに各部署、各氏族の動きは速かった。

 元々共和国時代と組織等が変わらない事、ただ緊急時の決定権が議会を開いてからではなく、王に一任されたことが功を奏した事が要因の一つになっているのは言うまでもない。

 補佐役のレスタが、国営の魔術工房だけでなく、王都中の連勤工房も巻き込み夜を徹しての護符作成が行われることとなった。


 事態から2日後、各獣人の氏族代表や招集に間に合わなかった代表補佐も集まって開かれた緊急議会にセレスティアが事の次第を説明。

 女王の権限を持って現在急ピッチで護符を作成していることを説明した。

 

 印刷方法は凹版印刷方式を用いて作成。王都に配る護符を作成しながら第2第3の凹版を作成し、フェリエ王国が誇る最速機動であるフェンリル族が完成した印刷道具と凹版印刷技師1名を乗せて各主要都市や市街に向けて出発。

 フェンリル族の足を以てすれば、王都から一番遠い地区までで馬車で1週間かかる所が1日で届くからだ。


 既に先行している連絡文書と製造方法を記載した写しを携えた式神便の文書を受け取っている都市代官は、魔道具工房及び資材を揃えておき、魔道具と技師が到着次第作成に取り掛かる。

 完成次第その場に残ったフェンリルが式神を展開、都市、市街からも式神と早馬を持って周辺の町や村、小規模集落へと配布することとした。


 それを確認したアーデルハイドはそのままパディやセレスティアと別れの挨拶をし、北のヘラズグア分家のプルニード家の領域へと飛び立っていく。


 事態から5日目(アーデルハイドが飛び立った翌日)の本日、王都周辺への護符がほぼ完了し、遅れている地域や王都周辺への残り配布分を印刷しており、各地より伝えられる式神便の情報が届く中、再び議会が開かれる事となった。 

 議会では現在の王国全土における進捗状況や、この先起こるであろう混乱する王国国民へ向けての鎮静化、奇しくも取り込まれてしまった国民への補償等が話し込まれていた。


 「セレスティア様この度は情報と対策ありがとうございます。あと6~8日もあれば、殆どの地域に配布がなされるとの連絡も来ております。しかし、森に暮らす獣族の氏族は小規模で点在しており、南地区の羊人種の遊牧民達も定住しておらず、難儀している所でして、果たして届くかどうか問題となっております。もし届かない場合はアドラ公国が起動する魔法陣に取り込まれる可能性があります。魔獣や瘴気落ちの妖魔族はともかく、家畜や森の生き物(有益生物)の影響があるのかどうか…それも懸念材料ではあります」

 

 議会場に集まっている各氏族及びパディ女王、補佐のレスタ前々代表が集まる中、同席しているセレスティアに向かって感謝の言葉を述べ、現状報告をすると、文官の兎人種の男性が耳をしゅんと垂れさせ、俯いてしまう。


 「確かにのう、我々獣人族はヘティスハークのエルフ、魔大陸の獣魔人族、そして竜人族と比べても魔法抵抗能力が弱いからのう。国全体、いやフィーグル全土の生態系にどんな影響をもたらすのか…ある程度の覚悟は必要となるかも…じゃな」

 

 「確かに…全国民を助ける事が出来れば()れに越した事はないが、時間があまりに少なすぎる。最悪の事態も視野に入れて対策も考えておくべきじゃのう」


 長い顎髭を撫でつつも渋い顔をする山羊種と老年の蜥蜴種(リザードマン)の氏族代表が呟く。


 「申し訳ございません!我ら隠密衆が情報を掴めなかった為に、このような国をも揺るがす事態に陥らせた事―――」

 「いやいや、汝ら犬人種はフィーグルでも屈指の隠密、諜報能力に長けた者達からの隠蔽に奴ら(アドラ)に敬意を評したいくらいだ。だが、望みを捨てずに一刻も早く一人でも多く救う事を考えようではないか」


 議会(氏族達)に向かって机に顔面をぶつけんばかりに何度も頭を下げる犬人種氏族に、まあまあと手を振り猫人種氏族代表がフォローしていると、他の氏族もまた頷くのであった。

 

 「大量製造の中、ランダムでの抜き取り検査の起動試験の結果は良好との連絡も受けてます。後は国民に行き渡る事を祈るほかありません」

 

 「起動が始まるまで予断は許しませんが、皆不眠不休の中、各氏族の代表、御苦労様でした。これにて閉会!」


 これから起こるであろう苦難に重い空気のまま本日の議会が終了したのだった。




ようやく投稿再開します。

次話投稿を待っていた方々、本当にすいませんでした。


次回更新は10/05の7時予定です。

 


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