ドナクレア島開放への道①
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拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
古龍の力は圧倒的であった。
出し惜しみをせず、己の持つ力を存分に発揮し、遊撃の岩狼だけではなく、蜘蛛型の捕縛用ゴーレムは尻から魔力を精製した糸でぐるぐる巻きにして捕縛し、制空用のガーゴイルはアサルトライフルの銃弾を巧みに飛行し、躱しながら近づくと自重で押し潰して行く、そして面制圧用の重装歩兵型2体を盾役とし、その背後から軽装歩兵3体が槍で突き、剣で切り裂いて行く2足歩行ゴーレムで組織されたパーティーを、惜しみなく数百の部隊を投入。
ゴーレムの一体一体が、まるで生き物の様に自分の意思で行動し、連携を組み、そして生き物と寸分違わぬ素早い動きをしていた総数約2万にも及ぶゴーレムにより、アドラ軍は1日と持たずに壊滅へと至るのであった。
もちろんブレスや殲滅魔導も併用すれば、1時間もあれば制圧可能であるが、アドラ兵や天使族のみ捕縛または抹殺に限定した事。
極力破壊はせずに、敵装備や兵器を鹵獲、生き残った住民による復興用労働力として捕縛する必要もあったからである。
一度の魔導展開で最大で200万体にも及ぶ、疲れを知らぬ並の兵よりも強固な防御力と攻撃力を持つゴーレム軍団をほぼ無限に作り続けることが可能―――。これこそが古龍を敵に回せない理由の一つである。
古龍が一体で飛来し、その場で1国が保持する軍隊にも等しい軍勢を目の前で作り上げ、そのまま蹂躙、支配を実行できてしまう。
出鱈目とも言えるその力は、1000年以上も使われることがなく、使われたのは神魔大戦初期にごく一部で使われただけで、人族に体験者は皆無で、古文書に少しだけの記載があるのみであった。
よって人族の学者や歴史家の間には「古龍を恐れるあまりに作り上げたでっちあげ」眉唾物と思う者は少なくない為、一般には知れ渡る事はなく「強力な力を持つ生物」として捉えられていた。
己の領域に閉じ籠り、唯我独尊を行く古龍であった為に真の実力は年月と共に風化し、忘れ去られ、近代兵器と現代兵器によって増長し、勇者が討ち取ることができる生物と侮っていた人族にとっては、寝耳に水であったに違いない。
こうしてバーミスタは本気を出した古龍によっていとも簡単に解放、自治都市執政館を奪還し、緊急放送網を使って解放宣言が成され、港湾都市は喜びに沸き立っていく。
リュセフィーヌの本心は一人一人念入りに幾千にも刻み、焼き尽くすつもりであったが、それでは一時的な住民の恨みを晴らすだけで、これからの復興の労働力に必要と考え、非生産的と判断した為であった。
「住民達よ。3年半にもわたる苦汁を舐めさせ、辛く、悲しかったであろう。なぜ古龍達は助けないのかと恨んだであろう。同じ竜族として、いや、ドナクレアの守護一族として謝罪する。3年半も主らを苦しめてしまい、すまない」
「頭をお上げくださいリュセフーヌ様!あなた様が避難転送の後すぐに、この島へと戻り、解放の為に島内を東奔西走しておられた事は皆知っております。勇者達の騙し討ちに遭い、幾つもの呪いと猛毒に侵されながらも戦い、死んでいった者達に涙し、もはや古龍としての力もなくなっていても、それでも尚私達の為にその牙をアドラへと振るっていた事は知っております!」
龍人モードへと変身し、集まる住民達に向かって謝罪するリュセフーヌに、頭を上げさせる住民。
ドナクレア家の面々は言動などは尊大に振舞うが、実際には住民の目線に立ち、インフラ整備や医療、学問等に私財を投入して住民の生活向上に努め、戦役があれば率先して前に立ち、「民あってこその支配者」を体現した人であると知っているからこその、住民の声だった。
本当ならば悔しいのであろう、「なぜもっと早く助けに来なかった」「他の古龍はどうして!」と叫びたいであろう。
その言葉を押し殺し、拳を握り、唇を噛み、涙を浮かべながら俯く者もいる。
それでも謝罪は不要という住民言葉に、リュセフーヌも頭を下げるのをやめても謝罪と、もうこれ以上の苦しみは与えまいと覚悟し、心から感謝していた。
油断がなかった、侮る事は無かったと言えば嘘になる。
何者にも屈せず、神族の天敵とうたわれる程の絶大な力。
その手の一振りで幾百の敵を屠り、一声で恐怖に敵は打ち震え、命さえも奪い、幾千幾万の攻撃をも跳ね返す強固な体、魔道に長けた者でさえ、最速でも100年でその片鱗に届くのがやっとという魔導を、いとも簡単に操る事が出来る魔導適正。
食物連鎖の頂点である龍族のトップに君臨する古龍であり、フィーグルの守護者であり領域支配者でもある。
幼い頃から学んだ「他人を見下し見下ろす事無く、同じ目線、同じ姿形となって共に話し合い、喜怒哀楽を共有する」という曾祖父ドインの教えを守っていたが、心のどこかに「自身に勝てる者は無い、自分は強いんだ」という驕りと高ぶりがあったからこその慢心からなる油断があったと実感していた。
ミノルから教えてもらった"獅子は兎を狩るのにも全力を尽くす"と言う諺を聞き、自分より弱いと思われる立場の相手でも、手加減する事無く、全力を以て相手を倒すのが礼儀であると意味に目から鱗が落ちる思いをした事は言うまでもない。
「ミノルの言葉は心に突き刺さった。妾は油断する事無くフィーグルの民を守ることを誓おう!……じゃがの?妾も民もここまで痛めつけられたのじゃ。多少の意地悪くらいは許してたも」
上目遣いに、恐る恐るミノルに話すリュセフーヌ。
「まあ、俺達も感情ある者達だしな。それ位はいいんじゃないかな?」
と苦笑するミノルとの会話を思い出しクスリと笑うリュセフーヌをドナクレアの住民達は不思議そうに見るのであった。
バーミスタの解放宣言後、リュセフーヌは矢継ぎ早に話を進め、行動に移していく。
まず手始めに、エリア魔法による港湾都市バーミスタ全住民の隷属紋の解除と、アドラ軍捕虜への移植を実施する。
「すまぬのう。ドナクレア城に戻れば島全体に施術できるのじゃが、今は優先事項があるからの」
リュセフィーヌの実家に戻れば、島全体に魔法を行き渡らせることは可能だが、それを実施してしまうと、数日は施術室に籠らなければならず、それから各都市や街、村の解放となれば効率が悪いと判断。
防御魔法展開も優先事項にあり、隷属紋解除を先にしてしまうと、防御魔法への転換に再び島全体への魔力浸透と展開に時間を要することも原因の一つであった。
ならば、バーミスタ住民を解放、軍事拠点として、自分が防御魔法展開中に軍備、周辺都市への解放戦を展開したほうが早いと解放された住民から提案があったからだ。
2日後に、他大陸へと避難していた住民の一部が、飛空船5隻による船隊を組んでドナクレア島に戻ってくるので、その受け入れ準備。
斥候役として編成された部隊要員と、森に避難している住民への解放の報を伝える伝令役達は、アドラ軍から鹵獲した魔力回復薬や、ポーションを優先して使い次々と都市から出発していく。
同じく医師や回復師も優先して傷を癒し、奴隷解放された者達を治療していく。
奴隷解放された者は領域者の恵を受けても体力低下、病気による衰弱などが著しく、死亡寸前から一歩手前までに変わっただけで、予断を許さない人々が多くいた為、急遽、上級治癒魔導の《回復》を広範囲展開をする事となる。
ここでリュセフィーヌは、ドナクレア島に使う防御魔方陣用の魔力を残し、住民へ復興作業を引継ぐと、執政館へ向かうのであった。
時間は既に深夜を回っていたが、執政部の議場には生き残った文官や評議員、そして開放のほうを受けたゲリラ軍――ドナクレア家直轄軍司令と各将軍が立ち並んでおり、議会場に入ってきたリュセフィーヌの姿を見るや、歓喜の声が挙がる。
「お゛お゛お゛お゛!リュセフーヌ様!お嬢様~!よくぞご無事で!」
その中で身長が3m、全身をミスリルと魔鋼を鋳合(合金化)わせた重厚な鎧を纏い、腕や顔にはいくつもの傷があり、失明はしていないが右目に大きな縦の傷が特徴であるかの如く、赤き鱗の龍人が涙を流しながら
ゆっくりとリュセフィーヌに近づき、彼女の名を呼ぶのであった。
「ゴラウシス久しいな。島の留守を貴様に預けっぱなしですまなんだ――わぷっ!これ!離さぬか」
ゴラウシスは人目も憚らず、リュセフィーヌに抱き着き、そのまま持ち上げてその場でクルクルと回るのであった。
「何をおっしゃいます!憎きアドラめが姫の首を持って来た時は肝が冷えましたぞ!しかし地の英霊となった兆しが無かった為、もしや魂魄まで取り上げられたかと絶望もしておりました!!しかし、こうしてお姿を拝見できれば喜ぶのは当たり前ですぞ!娘のシアンも妻のファルスも心配しておりましたのですぞ!」
ゴラウシスはリュセフィーヌの教育係で、妻が彼女の乳母を務めており、娘同然の扱いであったため喜びもひとしおであり、もはやドナクレア家再興は絶望的と思っていた時に再会すれば喜ぶのは当たり前であった。
「そうか、心配をかけたの。じゃがもう安心じゃ!妾が戻ってきたからには――っと、そうではなかったの。実はな―――」
ゴラウシスから解放され、アドラ公国が大規模魔法陣によって人柱となるドナクレア島に住むフィーグルの民を守る為に、実家にある防御魔導をカウンター魔法に切り替える事を伝えると、議場内は騒然とする。
しかし、ゴラウシスの一喝により再び場内は鎮まると、リュセフィーヌは言葉を続ける。
「妾はこれからフィールド展開の準備に入る。おそらく1週間は動けなくなってしまうからの。皆は傷を癒し、東部を開放してくりゃれ。その後西部へと攻め入り、コロポクルと主変都市群及び街や村を開放じゃ。その最中にカウンター魔法も展開されるから安心して戦ってくれ」
翌朝にはドナクレア城へ向かうリュセフィーヌであったが、さすがの強行軍に疲労が出て来ていた為、ささやかな酒宴の後、酒の入ったゴブレットを飲み切る前に持ったまま眠ってしまい、ゴラウシスにそっと寝所に運ばれるのであった。
翌朝、ベットで眠るリュセフィーヌは、カーテンから差し込む光で目を覚ます―――。
眠い目を擦りながらカーテンを開け、外の様子を見るリュセフィーヌは太陽が中天に差し掛かろうとしていることに気が付き、寝過ごしたとばかりに急いで寝所を出て議場へと足早に向かう。
「すまぬ!寝過ごしてしもうたの」
議場には大きなドナクレア島の全体地図が広げられており、その地図を眺めていた評議員やゴラウシスを筆頭としたドナクレア軍の大隊長クラスの面々が入り口に立つリュセフィーヌに注目する。
「姫様、おはようございます。まだゆっくりなされても大丈夫でしたのに、そんなに急がずとも良いのですよ?まずは湯に入り、旅の垢でも落としてから朝食を召し上がってください。その頃にはおおよその開放作戦が決まっていますので、御一緒に朝食を摂りながら話すとしましょう。だれかある!姫様を湯殿へあないせよ」
ドナクレア軍副官のシアン・クレールは息を切らしながら現れたリュセフィーヌを見てにっこりと笑い、侍女を呼び彼女に風呂へと連れて行くように指示を出す。
「こっこれシアン!そんなに邪険にしなくとも―――」
「だめですよ姫様。女たるもの身なりは清潔にしておかねばなりません。それも淑女の嗜みですよ」
シアンはドナクレア城の侍女頭レダ・クレールの双子の妹で、水龍種の血を引く初代ドナクレア家に代々仕えている眷属である。
リュセフィーヌより400年早く生まれて、リュセフィーヌからは姉のように慕われており、剣の師にゴラウシス、智(戦略)の師にシアンとして育っており、主従を超えた絆で結ばれているため、あまり逆らえないのであった。
「まったく……戦となると風呂に入ることもせず、戦場に立つことばかり考えるんだから。女としての振る舞いも同じように考えてほしいものだわ。そうでないと私が姉様に怒られてしまうもの」
「確かに……レダと我が妻エレーナは特に淑女として~と躾は厳しいからな。妹姫のセリナ様は淑女としては完璧だったからな。誰に似たのやら………」
「……何ですか?私を睨まないでください。ゴラウシス様だってリュセフーヌ様を幼い頃より嬉々として戦場へ連れ立っていたではないですか」
「むう……それを言われるとだな……」
「私も同罪ですね……」
風呂より軍議が~!と叫びながら侍女たちに引きずられながら議場を後にするリュセフィーヌを見ながら溜息をつく2人であった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。
ようやく次話投稿できました!シャレにならないくらい忙しいです。
それでも頑張りますので、よろしくお願いいたします。
次回は年度明けまで不定期になりますが必ず投稿します。




