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フィーグルへの帰還

お忙しい中、通勤中、休日真っ最中の中、クリック&タップ誠にありがとうございます


お待たせしました。


拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。

 西暦20××年〇×月△□日未明―――。

 ニューヨーク国連本部では長い議論が飛び交いながらも、最終的にアドラ公国連合と共闘し、フィーグル世界の魔龍及び魔王率いる亜人達に、軍事的な報復措置を実施する事が決定した。

 代表会議にてアドラ神聖公国の第1公女エリザベータ・ラドリエと連合国が訴えて、人族が窮地に立たされ助けてほしいと―――

 そして卑劣にも地球人類を巻き込んで、数十億人の命を弄んだ亜人達への報復をと涙を流しながら叫び、そして懇願する。

 第1公女は見目麗しく、か弱さを演出、演技をする姿は人々の庇護欲を掻き立て、この中継が放送されると瞬く間に世界の人々は共感を覚え、フィーグルの人族へ救いの手を差し伸べよと世論も動く。

 国連会議場でも、後ろに控えていて、国連に同行していた勇者米谷遼子のユニークスキル"篭絡「極」"によって「フィーグルの人族を守れ!亜人達は滅ぼせ!」という空気に包まれていった。

 

 その結果、得票率は賛成97%、反対3%、棄権0%と圧倒的多数であった。


 これは日本、アメリカが中心となり、EU加盟国がこぞって支持、情報操作による国民の復讐心をあおり、フィーグルでの資源利権を匂わせた結果であり、これによりフィーグルへの派兵が始まることとなった。

 後年、地球にある歴史書の中では″第3次世界大戦″として記録が残ることになる。

 とある歴史家の見解の中に、日本、アメリカ、EU加盟国が中心となって行った陰謀説も飛び交っていたが、大戦の真の理由は徹底的に情報を隠蔽された為に、憶測ばかりが飛び交うこととなったのは言うまでもない。


 一方、反対した国々は不思議な違和感を感じていた。

 勇者、魔法、ドラゴン、魔王、亜人、そして異世界と突拍子もない話題ではあったが、現実にドラゴンによる東京襲撃、神戸に現れた越界門、そして門の向こうから来た人類による演説、門から発生した大規模魔法。

 非現実的だが信じるほかないと思ったのだが、あまりにも流れがスムーズで、門が現れてから議決までわずか3か月しか経っていない。


 しかもこの議題が行われた初日、神戸にある門へ突入してきたドラゴンと数名の男女は、門の警備にあたっていた兵士以外には被害を与えておらず、そのまま門の向こうへと消えた―――と、イギリスのエージェントによって報告が上がっていた。


 民意も「亜人反対!」「ドラゴンは敵だ!」「家族を返せ!」「フィーグルへ鉄槌を!」と声高々にデモ行進が起こり、戦争反対論者も戦争賛成へと方向転換していた。ごく少数であるが戦争反対を訴える人々もいるが、真の戦争反対ではなく、某野党のようにただ反対だけをする"お花畑"であるのはここだけにしておこう。


 そして反対をした国はしくも、イギリスが中心となり、アイスランド、ノルウェー、アイルランド、ニュージーランドであった。


 ◇◆

時は少しだけ戻る―――


「ひゃっほーい!速い速い!音速ってこんなに景色が流れるのね!」


「そうなんだが…。ヴィオラ、あまり体を乗り出さんでくれ」


 ミノルの頭の上で、はしゃぐヴィオラを窘めるオースティンをくすくすと笑う未菜にムンチャイはようやく笑顔が戻ったなと安堵する。

 同じ家族を目の前で失ったムンチャイも、未菜の悲しみは痛い程理解できており、同じく肉親を失ったオースティン夫妻の明るく振舞う姿に癒されたのは言うまでもなく、夫妻に感謝するのであった。


「見えてきた。みんなゴンドラに隠れておいてくれ。これから障壁を張るから大丈夫だけど、万が一、奴らの攻撃で炎や破片が飛んで来ると危ないからね」


 ミノルの言葉で、先程まで和んでいた空気が一変して緊張に包まれていく。

 4人は進行方向に視線を向けると、確かに山の中腹に住宅とは違う建造物が見えている。

 門というからもっと金銀ちりばめた様式をもったものと思ったが、意外にシンプルで上部の飾りがなく、半分の大きさになった凱旋門といった物であった。


「攻撃が来る!伏せてて!」


 越界門の真上に来たところで、学校のグラウンドなどを使用していたのだろうか、武装ヘリが8機上空に飛び上がってくると、ミノル目がけてミサイルが射出され、バルカン砲での攻撃も開始される。


「馬鹿かあいつら!近くに住宅があるのにミサイルぶち込んできやがった!」


 オースティンの叫びの通り、摩耶山のすぐ下には住宅が密集しており、門の周囲が林に囲まれているとはいえ、爆風や破片といったものが、いつ住宅を襲うかわからない危険な状況もおかまいなしに、ミノルへの攻撃は増すばかりで、地上からも地対空兵器や、戦車と思われる車両からの攻撃も始まっていた。


「一般市民に被害が及ぶ!4人とも気をしっかり持ってください。これから周囲に"咆哮"を放ちます」


「「「「わかった!」」」」


 ミノルは4人の返事を聞くと、息を吸い、腹の底に溜まった怒りを乗せて叫ぶ。


 ―――殺してやる。死ね―――

「グラアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」


 全力全開の殺気と威圧、怒りを魔力に織り交ぜた叫びは周囲5㎞、最重要警戒区域全体に届くと、ミノルへの攻撃は止み、攻撃ヘリも墜落、炎上してしまった。

 魔力の抵抗力もなく、咆哮をまともに受けてしまった地球人は、軽微でもPTSD、普通でも通常生活が出来ない程の精神汚染を患って戦闘不能となり、最悪ではそのまま心臓停止していまうショック死の兵隊も多数出たのであった。


 ミノルはゆっくりと門の前に着地すると、地面に伏せてゴンドラを外す。

 美菜やオースティン達もゴンドラから出て、ミノルがドラゴニュートモードへと変化していたので周囲の警戒をしていた。


「おい、こそこそ隠れてないで出て来い。気づかないと思ったのか?」


 ムンチャイは門の周囲に作られた土嚢のバリケードに向き直ると、視線の方向へと声をかける。

 ミノルは変身中だったので振り向くことはできなかったが、気配に気づいており、ムンチャイとオースティンに任せていた。

 変身が終わり、ムンチャイの視線へと顔を向けると、その者達はこちらへとゆっくり歩いてきていた。

 新庄英雄、木村美結、吉田佳央莉、吉村由紀、そして本条毅と5人の勇者の姿を目にしたミノルは、(たてがみ)を逆立て、飛び掛かろうと腰を下ろす。

 しかし、ミノルの肩に手を置くオースティンが「落ち着け」と制するのであった。


「オースティンさん。それは無理だ、こいつらくびり殺したい」


「駄目だ…。フィーグルに戻るのが先だ」


「貴方だって!………痛つうっ!!!」


 ミノルの肩を掴む手が、徐々に強くなっていくのを感じると、彼の心情を察したミノルは構えを解き、深呼吸をして自分を落ち着かせる。


 そうなんだ、ムンチャイもオースティンもヴィオラも美菜もかたきを討ちたい気持ちは十分にあるのだ。

 自分だけが苦しい思いをしているだけではない。


 よく見るとムンチャイも拳が白くなるほど握り、ヴィオラと美菜に至っては唇を噛み、怒りに肩を震わせていた。

 ミノルは「ありがとう」とオースティンに礼を言い、勇者達を再び睨むのだった。

 ヒデオはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ、3人の女勇者も不敵な笑みを浮かべていた。

 ただ一人、タケシは憎悪の表情でミノル達を睨み剣を強く握っていた。

 よほどの怒りなのか、剣がカタカタと震えていたが、よく見ると以前の戦いの時とは違う黄金のオーラを纏った剣で、新しい聖剣を賜っているらしかった。


「……今ここで戦いたいが、俺等はフィーグルに帰還が優先でね。これで失礼させてもらうよ」


 極めて冷静に、そして単調とも思える口調で勇者達に向かってミノルは話しながら、分析をしていた。

 こちらも感覚を取り戻していないオースティンとムンチャイ、戦いに力を持たないヴィオラと美菜もいるので、多分戦ったところで、ヒデオの瞬間移動によって苦戦を強いられるのは必至と判断する。


「ククク…行かせないと言ったら?」


 ミノルの言葉に勝ち誇ったかのように、嘲笑交じりにヒデオは言い放つ。


「やれるもんならやってみろ。おまえ馬鹿だから教えてやる。ここは女神の加護がない地球だ。アドラの敷地ではない。それが理解できるならクズのお前でも分かるはずだ」


「…………」


 踵を返し、ゴンドラを肩に担いで門へと歩き出すミノルに代わって、ムンチャイの冷徹な答えにヒデオ達は口をつぐんでいた。

 この時のヒデオ達はムンチャイの言う通りおバカで愚かであり、女神の加護のことをすっかり忘れていてアドラでの戦いは自分達の実力であったと錯覚していたのだ。

 そしてムンチャイの言葉によって思いだした彼等は引き攣った笑いをする事しか出来ず、背中には冷や汗が流れていたのであった。


『おまえの敵対理由は何だ?』


 ミノルは勇者達に背を向けて、門に向かって歩きながらも、念話で勇者タケシに向かって話し出す。


『おまえが助けてくれなかったせいで、義弟とその長男が消えた!妻はショックで寝込み、義父と義母は悲しみに暮れている!地球でも弟が消えていた!お前は俺の家族の敵だ!!!』


 ミノルに向けて殺気を乗せた念を送ってきたが、ミノルは鼻で笑う。


『フィーグルでは軟禁捕虜のお前が裏切ったからだ。そして地球の出来事はお前ら公国と地球の各国の政府の仕業だ。責任転嫁もいい加減にしろ。あほうが……』


 タケシに念話で言いながら、オースティン達が先行して門の向こうへ行ったことを確認すると、ミノルも門の向こうへ歩いていく。


「戦いもしないで門へと逃げる臆病者の弱者め!!」


「そうそう、お前らの持ち物全部貰ったから。慰謝料の手付だ」


 ヒデオの後ろに控えていた勇者カオリの声を無視して、ミノルは一言残し、門の向こうへと消えて行く。


「くそ!トカゲ野郎め!いい気になるなよ!」


 ミノル達が消えてから、負け犬の遠吠えよろしくヒデオが言い放った時であった。

 突如上空に巨大な火の玉が発生すると、間髪入れずに勇者たちへと襲い掛かってきた。

 発生から着弾まで僅か1秒にも満たない刹那の時間であったが、ヒデオは瞬間移動を行使して逃げる事が出来た。

 しかし、瞬間移動が僅かに遅く5人は全身皮膚の70%を火傷してしまう。

 移動先にいた治癒術師とエクストラポーションによって一命はとりとめたが、治癒されるまでの間に体力を削られ、長い時間にわたってミノルから浴びせられた殺気による精神汚染がひどく、昼夜を問わぬ治療で回復まで6か月を要する事になった。

 

 ようやく回復した勇者達は空間収納内に保管していたアイテムが根こそぎ無くなっている事に愕然としていた。

 

 ―――そうそう、お前らの持ち物全部貰ったから。慰謝料の手付だ―――


 ミノルの言葉を思い出した彼等は、スキミング魔法(22話「さようなら地球。来れたらまた来ます」参照)によって、5人の持ち物全部奪われてしまっていた。

 スキミング魔法の事は知っていたが、あまりに便利な空間収納にすっかり忘れており、ミノルへの届かぬ怨嗟の叫びが、病室内でむなしく響くだけだった。


 そしてもう一つ、去り際直前に放ったミノルの魔導〈陽炎槍〉により、最高温度6000℃にもなる炎に焼き尽くされ門を中心に半径600mがマグマの海と化していた。

 古龍の放たれた力は凄まじく、マグマの海は水をいくらかけてもなかなか冷める気配はなく、ようやくマグマの温度も下がり、門へと足を踏み入る事が出来たのは実に3か月後となっていた事も別の話であった。




最後までお読みいただきありがとうございました。


次回も楽しみにしていただければ幸いです。


よろしくお願いいたします。


次回は近日中に投稿します。

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