現代の手法に翻弄される
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お待たせしました。
本日2話目投稿です。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
ミノルは石井夫妻が消える直前まで身に着けていた衣服を見ながら呆然としていた。
抱き着く未菜、立ち尽くすミノルにこのままでは…と、オースティンが未菜に話し、石井家へと案内をされて、全員がリビングにいた。
「実は…私達も身内が消失してしまって、原因はコーベに表れた門と、勇者達による仕業であるとミノル君から聞いたのです」
呆然自失となったミノルから話すことが不可能と見たヴィオラは、ミノルから聞いた話を未菜に伝えていく。
そして、オースティンとムンチャイからフィーグルという世界、そしてこの事件を引き起こした最大の元凶であるアドラ神聖公国の事、人族や天使族、そして周辺の国々と対立する他種族の事を話して行き、古龍となったミノルの立場や地球へ帰還した経緯をミノルから聞いたそのままに未菜に伝える。
「それじゃあ、お父さんとお母さんは戻ることがないんですか?」
「残念だけど、人柱に使われた人々は肉体や魂魄まで材料として使用されてしまうんだ。復活させる事も、生まれ変わる事も出来ないんだ………」
「そんな!」
未菜の質問にムンチャイが答えると絶望の表情を浮かべながら未菜は再び涙を流す。
ミノルは思い出していた。
リストラにあって無職だと明るく笑いながらも、家族を守るために働きたいと強いまなざしでミノルに向かって話した事。
新規の受注をもらったと2人で喜び、居酒屋で飲みつぶれて翌日にはヨシコさんからお叱りを受けた事。
出張の時はいつも笑って、旦那の分だけでなく自分の分まで移動途中のご飯にと、弁当を作ってくれたヨシコさん。
経営が苦しくなっても明るく前を向けと励まして、叱咤激励してくれた石井夫妻。
交通孤児として生きてきたミノルを実の息子のように接してくれて「ウチの未菜と結婚すれば親子になるわね」と笑いながら言うヨシコさんに「娘は…」と渋い顔をするケンゾウさん。
――家族のいない私にとっては「弟」のようにも思っていたんだよ――
微笑みながら最後に言ってくれたケンゾウさんの言葉を思い出し、オースティンとムンチャイの時には我慢していた涙が、溢れてしまい、遂には頬を伝って床にいくつも落ちてしまっていた。
石井家の人達の笑い声や笑顔、未菜の上の兄姉から歓迎された笑顔も思い出す。
家族を知らず、中年のおっさんの心に温かさをくれた掛け替えのない人々。
古龍となっても受け入れてくれ、また会おうと約束したのに……
なぜ大切な人々が、なぜ心優しき人々が、フィーグルの人々も同じだ…こんな理不尽があってたまるか!
前勇者としてミノルを助けてくれた人達の家族を道具として扱った者たちへの憎悪がミノルの心を支配しつつあった。
「殺してやる――」
ポツリと呟くミノルを未菜達は顔を向ける。
次の瞬間、ミノルは人の姿から龍人モードになると羽を広げ、チキチキと角がぶつかり合って音を立て、黒いオーラが体を包むと同時に、一気に殺気を撒き散らす。
「ころしてやる…。ころしてやる。殺してやる!殺してやる!!殺す。殺す。殺す。殺す殺す!コロスコロスコロスコロス!殺して生き返らせて殺して!何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!何度も!何度も!何度でも!!叫ぼうが、泣こうが、喚こうが!容赦なく無慈悲に残酷に!!!奴らに与する者は誰だって滅ぼしてやる!!!最後には苦悶の牢獄に閉じ込めて未来永劫苦しませてやる!!!!!!」
「いかん!ムンチャイ!!!ミノル君!それ以上はだめだ!」
「ミノル君!それ以上はだめだ!自我を保てなくなるぞ!!私の家族を思ってくれる気持ちはうれしい!でも落ち着くんだ!!」
ミノルの雰囲気に未菜とヴィオラは腰を抜かしてしまうが、ミノルの状態を危うんだオースティンとムンチャイはミノルの暴走を止めにかかる。
「はなせ!離してくれ!未菜の家族が!オースティンさんの家族が!ムンチャイさんの家族が!俺の大切な仲間の家族が犠牲になったんだ!奴らは今ものうのうと生きてやがるんだ!酒を片手にニヤニヤしてやがるんだ!許してたまるかあああ!!!」
ムンチャイに羽交い絞めにされるミノルは怨嗟の言葉を吐き、暴れて羽交い絞めを弾くと、仁王立ちに立ち、首都方面に体を向け、今にも殺さんばかりの表情であった。
だがその時、ヴィオラと未菜がミノルを両側から抱きしめる。
「ミノル君、ありがとうね。孫の事をそこまで思ってくれるだけで嬉しいわ。復讐するなとは言わないし、私も止めない。とにかく落ち着いて。怒りに任せればできるものも出来なくなってしまうわ」
「おじさん落ち着いて!お父さんとお母さんが犠牲になってしまったのは悲しいし、アドラの人達が憎い!やるなら徹底的に懲らしめるのに協力する!だから落ち着いて!」
それでもミノルは怨嗟の声をあげながら暴れていたが、4人の説得によって落ち着きを取り戻すのであったが、その場に膝から崩れ落ち、涙を流しながら、守り切れずに済まないと何度も謝罪するのであった。
石井家の中は悲しみに包まれていたが、数時間するとようやくミノルも落ち着きを取り戻し、オースティンとヴィオラ、ムンチャイと未菜は安堵の溜息をついていた。
「とりあえず、兄や姉が今ここに向かっています。その時にもう一度説明していただきますか?」
オースティンとヴィオラ、ムンチャイは未菜に向かって快く返事をするが、ミノルはまだショックを隠し切れずに、石井夫妻の写真を抱き、衣服を眺めていた。
その間に未菜から日本で起きていた経緯を説明されていく。
一か月半前になるが、突然神戸の摩耶山頂に巨大な西洋風の門が出現。
2日ほど門が沈黙を保っている間に自衛隊や警察、そして米軍の協力もあり、門を中心に5㎞を最重要警戒区域、10㎞を特別警戒区域、20㎞を警戒区域として最重要警戒区域には一般人やマスコミも立ち入り禁止となり、騒然となっていた。
3日目になると門が開き何か動きがあった様子であったが、詳細は不明のまま4日目にはEUを中心とした国連軍が派遣され、周囲は一気に騒がしくなる。
7日目、開いた門の向こうから行方不明になっていた学園の生徒と教師達が現れたとの報で、マスコミが騒ぎ、8日目に大々的に発表される。
生徒たちの健康診断も済み、12日目にクラス担任の木村亮介、副担任の米谷遼子、当時教育実習生であった野村雄二、そして生徒の新庄英雄、木村美結、吉村由紀、小田みのり、結城恵一、牟田正、本条毅、三村清美、根本倉雄の計12名が地球へ帰って来た事が報道される。
門出現から20日経過すると、彼らの記者会見が開かれ、フィーグルという世界に召喚されアドラ神聖公国の協力の下、人族と天使族を殲滅せんとする亜人族との戦いに挑むこととなる。
亜人にはエルフやドワーフといった種族、そして魔王も存在するし、最大最凶の人類の敵は魔龍と呼ばれるドラゴンで殺戮と戦いを好み、フィーグルという世界を手中に収めようとしている。
そして女神メロル、テリシュ、オーフェリアの3柱の女神と大地の神ガレルア、生命の神パルフィ、魔法の神ホイスト、武の神デルペドス、錬金の神コンベック、商業の神シュセンディ、技能の神ツチトノミの7柱の眷属神の助けによって人類を守るために救世主として、亜人達への最終兵器として戦って生き残ってきた。
この会見により、初めの頃は信憑性を疑われたが、30日目にアドラ神聖公国の第1公女エリザベータ・ラドリエ、サトーレ王国とジャニス王国、ペンタハーケン帝国の使節団が門の向こうから登場する。
日本でも、ファンタジーが現実となったとか、剣と魔法の時代登場などと、はやし立てた41日目になろうとした深夜、突如として門が輝き十数分後には光が収まる。
そして全世界において大量の人々が消失する事件が起こる。
これにより現時点試算によると16億人が被害として出ていた。特に中国とインドがそして中東系が大きく、おおよそ1/3は消失したと思われるという。
オースティンとヴィオラは、未菜のPCからYO〇T〇B〇の過去会見の動画をじっと見ていた。
しかし、拳は強く握られて白くなっており、怒っているのは目に見えて理解できた。
ムンチャイも「でっち上げだ!」と声を荒げるが、マスコミを巧く操って民意をフィーグルへ敵対行動を起こし易くする為の情報操作であることが明らかであった。
しかし、本当の事情を知らない民意は報道で流される情報に流されてしまい、「フィーグルに鉄槌を!」「野蛮な民族は打ち払え」と動いていた。
しかし、一方で平和的な解決をと、話し合いを持って解決する動きもあり、騒動は浅間理想になかった。
2時間後、石井家全員が集まり、ミノルは挨拶をするが、ミノルの9歳児の姿に驚いていた。
「ミノル君なのかい?その姿は一体………そしてあなた方は何者なのですか?」
ここで、オースティン達の自己紹介が始まる。
長男はじめ、石井家一同はソファーに座りミノルはみんなの前に正座する。そして後ろにはオースティンとヴィオラ、ムンチャイと未菜が立っていた。
そしてもう一度、フィーグルという世界、アドラ神聖公国の事、人族や天使族、そして周辺の国々と対立する他種族の事を話して行き、自分が古龍である事や地球へ帰還した経緯をミノルは語ってゆく。
「―――俄かには信じがたい事ですが、つまりはあなたが原因で父や母が消えてしまったという事ですね?」
ミノルは俯きながら「申し訳ない」と謝罪する。
「そして貴方達が悪であるという事も―――」
「ちょっと!兄さんそれは違うと思う!ミノルさんは嘘は言っていない!それは私が保証する!」
石井家長男と次男、長女はミノル達を親の敵とばかりに睨み、敵だと断言し、それに未菜が反論する。
「黙りなさい未菜。先ほど緊急報道が流れていたのを見ていなかったのか?今もそれでニュースが持ちきりだ」
そう言って石井家次男がテレビのスイッチを入れると、まさに勇者達や、第1公女が机の前に座り、記者会見を行っている生中継放送や、先ほどまで話していたと思われるVTRも流されていた。
魔王率いる亜人や魔龍達がこの越境門を作り、地球へ攻め込もうと画策していた―――。
そして、この門には地球世界へ定着させるために大規模魔法が施されており、それが発動されると数十億人という人の命を以て定着する仕組みになっている。
我々はそれを阻止するべく、地球へと乗り込み、世界各国の協力の下に門の破壊を試みていたが、強力な呪詛は我々では破壊が出来なかった。
しかし、何とか被害を最小限に抑えるべく試みた結果、全世界の80%の消失するはずが20~30%に抑えることに成功した。
今フィーグル方面に、我々神の加護を持つ天使族と人族が、越境門を奪取し地球へ攻め込ませないように死守している。
そのために、今ここにいないクラスメイト達はフィーグルの原住民(亜人)に殺されてしまい、地球へ一緒に戻ることができなく非常に残念である。
しかし、相手が強力で魔法があるとはいえ、時代は中世そのままであり、現代兵器さえあれば野蛮な亜人達に太刀打ち可能であると声高らかに宣言していた。
「奴らは戦争を起こそうとしている。どうか地球の皆さん、一致団結してフィーグルの魔の手から地球を守りましょう!!」
ミノルは愕然としていた。
これにより地球はフィーグルを滅ぼすべく動くだろう。
大々的にフィーグルへの宣戦布告ができる土台ができてしまったのだ。
おそらく、国連でも緊急の会議が開かれフィーグルは大量虐殺犯として報復攻撃がなされるのは必至と思われる。
地球人類の1/4以上が殺されたことになる。
平和的解決など望めない。
「これでも私達に信じろというのでしょうか?」
「これはでっち上げだ!フィーグルの民は平和を望み互いを尊重しあう者達ばかりなんだ!」
長男の言葉にムンチャイは反論する。
「今報道で流されている事を話半分といたしましょう。しかし世間の大半あなた達を敵として見ます。これは我が家にとって問題であり、ここに居られると困ります。話半分といいますが。、その半分私はあなたに敵意を抱いております。そして、親の敵と思っています」
長男は言葉をつづけ、ミノルの事を睨んでいた。
「即刻出て行ってください。そして二度と私達の前に姿を現さないでください。見ているだけで反吐が出ます。同じ空気を吸っているだけで怖気が走ります」
「兄さん!!!!!!!!」
未菜は長男を非難するように叫ぶが、ただ無言でミノル達を睨むばかりで、次男と長女、嫁や婿達は「人殺し」「鬼畜」「悪魔」とひそひそと長男の後ろで反しているのであった
「…………分かりました。信じてもらえないのが残念です」
「「「ミノル君!」」」
席を立ち、立ち去ろうとするミノルにオースティン達は声を掛けるが、もはやこれまでと、ミノルは首を振るのであった。
「兄さん達は、ミノルさんの事信じられないんだ…あれだけ仲良くしていたはずなのに。お父さんがリストラにあって苦しんでいたのに無視して、それをミノルさんは助けてくれたんだよ?こんな薄情なことってあるの?みんな子供の教育費が足りない、家族サービスで旅行に連れていきたい、あれもしたいこれもしたいってお金ばかりせびってばかりいた。そのお金もミノルさんがいたからなんだよ……?もういい…もういい!!私も出ていく!このお家も好きにすればいい!兄さん賃貸だもんね?私出ていくから好きにすればいい!でもお父さんたちの遺品は全部持っていくから!ミノルさんを家族と思っていたお父さんの意思は私が継ぐ!こんな兄弟なんて私いらないから!!」
未菜は2階に走って上がり、トランクケースにどんどんと荷物を詰めていく。
「未菜ちゃん、荷物の整理を後にするならこれが早いわよ」
未菜が後ろを振り向くと、ヴィオラがいて左肩に手を置き魔法袋を差し出してウィンクをする。
「これは?」
「これは魔法袋といってね。最低でも家一軒分の荷物が入るの。未菜ちゃんは…魔力がないわね。私の魔力使っていいから全部積めちゃいましょ。どれを詰めるのかな?」
そう言ってヴィオラが部屋を見渡し、未菜が指示をしていく。
ヴィオラが指で触るだけで、袋の中へと荷物が消えてゆくのに驚いていたが、その光景に慣れてくると、タンスや机、ベットに至るまで照明器具と床を残して部屋の中は何もなくなっていく。
「未菜!何をしている!勝手なことは許さん!」
「そうよ!お父さんの財産とか、お母さんが残した宝石があるんだから持って行かないで頂戴!」
「そうだ!父さんの財産は僕達に権利があるんだ!家を出ていくみなには権利はない!」
石井家3兄妹は各々抗議するが、未菜とヴィオラはお構いなしに、どんどんと魔法袋へと収納していく。
「整理して権利書でもなんでも後で送ってやるわよ!でも形見と思われるものは絶対に渡さない!血も涙もない奴なんて絶対に許さないんだから!あ、ヴィオラさんそれもお願いします」
2階にあるものを全て納めると、1回に行くとデスクやラックといったミノルの部屋から受け継いだ事務用品、などは全部収まり、20分で家の中全部が魔法袋に収納するのであった。
未菜を除く石井家全員は、次々と小さな巾着袋に収まっていく光景を呆然としながら見ており、最後には引越ししたように照明器具以外、何もなくなってしまった。
「ミノル君!未菜を止めてくれ!君なら止められるだろ!」
長男は、正座したまま動かないミノルを揺さぶり、未菜の行動を止めさせるよう叫ぶが、下を向いたまま動くことはなかった。
次にガレージへと移動した未菜は、ムンチャイにお願いして、車から何から何まで魔法袋へと収納してもらうのであった。
「これで最後っと!あ~すっきりした!」
まるで先程まで悲観に暮れていた表情はなく、すっきりとした顔の未菜がそこにいた。
「未菜!勝手なことをして!訴えてやるからな!!!」
「私達の物よ!勝手に持って行くなんて!あんたなんか兄妹でもなんでもないわ!覚悟しなさい!」
「警察がもうすぐ来るぞ!通報したからな!不思議なことしやがって!」
未だに兄妹は未菜の事を非難するが、彼女は知らんぷりをして、兄弟の言葉を無視するのであった。
「ミノルさん!さあ、行こ!」
「しかし……」
未菜の意外な言葉と行動にミノルは躊躇してしまう。
「ミノル君、いいのよ」
「さあ、行こうか」
「そうですね」
ヴィオラやオースティン、ムンチャイも未菜の行動に賛成しており、ミノルは石井家の面々に御辞儀をすると、そのまま転送を展開し石井家を後にしたのだった。
石井家兄弟が目の前から消えるミノル達の驚き、呆然とする中、遠くから警察のサイレンが近づくが、時既に遅く、警官も蛻の殻となった石井家にオロオロするばかりであった。。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
次回は近日中に投稿します。




